N様用)当社が投資事業有限責任組合の有限責任組合員で、当社分PLに未実現損失が計上されているときの仕訳 ②純額方式の場合は?
問題の所在
以下の記事では、中間方式の仕訳を検討したが、、、、
E様用)当社が投資事業有限責任組合の有限責任組合員で、当社分PLに未実現損失が計上されているときの仕訳 ①中間方式の場合は?
実は当初、純額方式の仕訳を検討していたので、その備忘メモ:
(円換算日レートは、151.05円/ドル)
結論と理由
当事例のスキームは、海外のファンドが主人公ではあるが、当社の投資の部分に着目すれば、基本的には国内のLPSと同様に扱うことで足りる。
すなわち、以下の記事の各論点をチェックリスト代わりに検討していけば足りると考える:
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論点1 法人税基本通達14-1-1(帰属自体)
知識のため、当記事では検討省略。
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論点2 法人税基本通達14-1-1の2(組合事業から受ける利益等の帰属の時期)
通常では、受取配当金の認識・計上は、配当の分配時(支払い後)。
この点に関し、当事例では、支払予定日が決算日よりも前になるので、この点を気にする必要はない。
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論点3 法人税基本通達14-1-2(組合事業から受ける利益等の計算)
以下の記事を参照:
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仕訳パターンは、以下の論点5の源泉所得税、論点7の仮払消費税等、も先取りで考慮して以下:
(借)仮受金 xx
(借)法人税等(ここでは源泉所得税相当を想定) xx
(借)仮払消費税等 xx
(貸)受取配当金 xx
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論点4 当社の受取配当金の金額
この事例では、PLに未実現損益(今回は、未実現損失 13,023ドル)が計上されているため、この扱いが問題となる。
この点に関し、
① 「業種別委員会実務指針第38号、投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い、最終改正 2024年6月13日、日本公認会計士協会」によれば、この未実現損失は、LPSが投資をしている場合の時価評価差額である。ゆえに法人税法上、当然に損金不算入、
② いわゆる総額方式のため、決算書から受取配当金を算出する。以下の記事参照:
(以下、一部抜粋)
自社の決算書等ではないため、PL項目の各仕訳の計上日は不明なため、換算が問題となる。
この点に関し、
・理論上は、期中平均レートを適用するのがベターかも知れないが、好運にも、基本通達上、(BSは規定しているが)PLは規定していないので、もう、決算日レートでやってしまってよいであろう、
・他方、合理的な見積もりの努力は見せる(?)都合、消費税計算書の円換算額が使える項目はそれに置き換える。
また、BSも、資本金a/c等については発生日レートを適用するのが理論的とは承知するが、これも好運なことに、基本通達上、明文の定めがないため(債権債務のみ明定)、全部、決算日レートを適用してしまう。
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仕訳については、
「基本通達の14-1-1の2のいわゆる総額方式で仕訳する、つまり当期純利益の金額をそのまま計上し(つまり、未実現損失は特段の扱いをせず)、税務上、確定申告で同額を加算する」
ことも可能ではあるが、実務上、加算調整を漏らしてしまうリスクがあるので、
税務会計的な仕訳、つまり「当該加算分をオンした仕訳(結論を先取りすると、基本通達14-1-1の2でいう中間方式っぽい仕訳)」
にするのがベターと考える。
そこで、先に、貸方の受取配当金の金額を、PL当期純利益の金額に、加算調整的に、未実現損失の金額をオンする」をして、
・ドルベースで、72,984ドル+13,023ドル=86,007ドル
・円ベースで、11,024,233円+1,967,124円=12,991,357円
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論点5 匿名組合等の利益の分配に係る、居住者又は国内法人に対する源泉徴収(要修正)
具体的には、配当金額に対し、復興税をオンした20.42%の源泉徴収を受ける。それを法人税も追認している(以下の論点7へ)
しかし、当事例では、期中に当期純利益相当額を、そのまま入金している。つまり源泉をしていない。そのため、
・ドルベースで、0ドル
・円ベースで、0円
★なお、日本の源泉所得税はないが、海外LPSのため、外国税額控除はある。
・ドルベースで、9,162ドル
・円ベースで、1,383,921円
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論点6 源泉所得税の月割り計算
当事例では、該当なし。
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論点7 仮払消費税の取り込み
知識であるため、この事例では検討省略し、結論としての計上金額は、当社の消費税等精算書の、
・ドルベースではもちろん不明で、円貨で、184,076円
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追加論点 未実現損失の科目と仕訳
上の「論点4 当社の受取配当金の金額」で貸方の受取配当金を増額した対応で、借方に追加計上する科目が問題となる。
未実現損失a/cは、LPSの決算書での投資勘定の評価損であるため、
① パス・スルー課税の考え方を徹底するならば、基本通達14-1-1の2でいう総額方式で、投資有価証券a/c
② 所得計算だけ調整するならば、基本通達14-1-1の2でいう中間方式で、法人税等a/c
のいずれかであろうが、オールドタイプ的には、②の方がベターと考える。
ゆえに仕訳は、
まずドルベースで以下:
(借)仮受金(期中分配金) 63,822
(借)法人税等(外国税額) 9,162
(借)法人税等(源泉所得税分) 0
(借)法人税等(未実現損失分) 13,023
(借)仮払消費税等 不明なためゼロ
(貸)受取配当金 86,007
(貸)受取配当金 不明なためゼロ
そして円ベースは以下:
(借)仮受金 9,640,313
(借)法人税等(外国税額) 1,383,920
(借)法人税等(未実現損失分) 1,967,124
(借)仮払消費税等 184,076
(貸)受取配当金 12,991,357
(貸)受取配当金 184,076
補足
上の仕訳の科目の、
(借)法人税等(未実現損失分) 1,967,124円 (貸)受取配当金 1,967,124円 は、
消費税の還付相当分を、(借)仮払消費税等 184,076円 (貸)受取配当金 184,076円 でオンするのと同じ考え方による。
なお、以上の調整仕訳は税法ベース(だから別途に申告調整は要しない)。会計監査が入っている場合には、監査法人からこのような仕訳ではなく、BS・PLをフルでオンすることを求められる気がするが、厳密な意味で間違いではないので、許容であろう(私見)。
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