【2023/4/16微修正】税理士用)非上場企業の税務会計で、月次決算で、毎月の給与を発生主義で未払給与(未払費用)a/cで計上するか?
問題の所在
発生主義を徹底すると、月末締めの翌月払いの会社の給与は、月末時点で、未払費用(未払給与a/c)で計上することになる。
以下のケースが考えられる。
・金額例として、当月給与が額面100、社会保険及び所得税等の給与控除計23、支給額76とする。
・支給額は便宜的に一括して預り金a/cで処理する。
・役員報酬についても、未払役員報酬a/cで計上するが、便宜上、給与a/c、未払給与a/c、に含める。
(なお役員報酬については、法的には債務性がない点を重視して、法人税上、未払費用a/cで計上しても損金と認められない少数説もあるが、法人税法上の役員報酬の定額支給の条件の方との整合性を重視して、未払費用a/cで計上して問題ないと解する)
第1法(月末に未払費用a/cで、人件費の仕訳を起票する)
当月末
(借)給与 100(貸)未払費用 76
(借)給与 100(貸)預り金 24
翌月支給日
(借)未払費用 76(貸)預金 76
第2法(当月末に未払費用a/cだけを起票する)
当月末
(借)給与 100(貸)未払費用 100
翌月支給日
(借)未払費用 100 (貸)預金 76
(借) (貸)預り金 24
第3法(当月末には仕訳を起票しない)
当月末
仕訳なし
翌月支給日
(借)給与 100(貸)預金 76
(借)給与 100(貸)預り金 23
結論
通常の顧問先様へは、第3法。
かつ、PL役員報酬、給与とも。
かつ、CR賃金手当も。
理由
第1法が△な点は以下の通り:
- 住民税の預り金a/cは、特例納付を採用していない場合には、
①当月支給日に預り金a/cが計上され、②それが翌月10日までに納付されて取り崩される、の①②が繰り返されるが、
第1法では、①と②の間に、翌月支給日の預り金a/cが計上されてしまい、消込が時系列にならないし、残高が事実と異なってしまう。
第2法が△な点は以下の通り:
- 第1法の弊害をクリアする点は〇
- 発生主義でもある、、、しかし、そもそも給与を発生主義で計上する必要があるのか否かが問題となる。
- 例えば、給与手当は、通常、(PL’の)SGAの区分に計上する。これは基本的に固定費である。変動費であれば売上に対応させるべきところ、その必要はない。
- そして固定費であれば、無理に発生主義で計上しなくても、現金主義によっても、12か月分が等しく帰属する。
- ただし、賃金給与については、未払賃金給与a/cで計上した方が、売上と売上原価の発生ベースでの対応が成立することにはなる。
- そうすると、、、賃金給与は、通常、C/Rに計上するが、これを、「変動費ではないから、PLに計上することが妥当ではないか?」と混乱するかもしれませんが、これはC/R計上でよい。なぜならば、発生ベースの売上に対して、事実として準変動費的に生じているためである。
- しかし、実務上の割切りをすれば、異なる属性を敢えて同じ土俵の上で比較する、すなわち、変動費的要素と固定費的要素を比較考量すれば、当然、固定費的要素が強いといえる。
- したがって、賃金給与も、(C/Rに計上し、かつ)現金主義で計上することは許容される。
- 戻って、役員報酬および給与も、PLのSGAに、現金主義で計上する。
- なお、当事務所のお客様にはないが、会社の中には、当月20日締めで当月末日払いという会社もある。上の理屈では、12か月分が当年度に帰属することにフォーカスすれば、この10日分を未払費用計上することは不要ということになる。ただし、上場会社で会計監査が入っていれば、その10日分は計上し、翌期首に洗い替えの振替仕訳を介在させることで、12か月の帰属を求められるであろう。
補足
節税対策で、当月分(翌月20日等払い)を、未払費用計上することがある。この場合、人件費が13か月計上されてしまっているので、経営分析上は当該未払費用計上分を控除した金額に依った方がよいであろう。
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