定期同額給与なのに、役員報酬を支給せず、決算で未払金a/cに計上するのは許容?

問題の所在

法人税法上、役員報酬は、期首から3か月までは増減可能で、4か月目以降は増減すると、当該増減額が損金に計上できません(経済行為なので、払うのは勝手です。法人税の計算上、損金から除外される、という意味です)

では、役員報酬を期末前の数か月、支給せず、でも帳簿上だけ未払金a/c、未払費用a/cで計上するのは?

期末まで残ると、法人税等確定申告書の別添資料の「勘定科目内訳明細書」の未払金に記載することになり、その事実は税務署に知れるところになるため、悩むことが多い。

なお、「期末に、役員報酬の当月分&来月支払い、を、見越しで、未払費用a/cで計上できない(∵委任契約に基づく報酬であり、会社に対する確定債務ではないため)」の論点とは別の話である。

 

結論

一年程度であれば、未払処理のまま計上することも許容されると考える。

 

理由

まず、役員に対する給与について損金算入が認められるのは、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与のいずれかに該当する場合のみである(ただし不相応に高額なものや隠ぺい仮装経理により支給されるものについては損金算入が認められません)。(法人税法34(1))

未払金処理は、定期同額給与の類型に属するものと考えられるが、定期同額給与とは、「その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」と定義されている。そうすると一見、「支給額が同額」と規定されていることから、支給されていることが前提となっているように考えられる。

他方、実務上、資金繰りの関係から役員給与を未払い計上することは珍しいことではなく、未払計上が即「定期同額給与」に非該当となるという扱いも現実的でない。

そこで、実際には、個別の事例ごとに是々非々を検討することとなる。

私見では、未払いにより役員給与を計上しても、計上後、短期のうちに支給すれば税務上大きな弊害はないと考えられ、「定期同額給与」の範疇に収まると考えられますが、実際に支払う意思が確認できないようなケースにおける未払計上は否認リスクが高まると考えられる。

少なくとも年に1回は役員給与の額の改定のタイミング(事業年度開始から3カ月以内)があり(業績悪化も改定理由の一つとなりうるが)、その改定のタイミングで会社の体力に見合う役員給与の負担額に直して機会がある。したがって、改定のタイミングを超えて長期にわたり未払い計上すれば会社の真の意図として支給つもりはないと事実認定されることが想定され、「定期同額給与」として認められないことも考えられる。

また、やむなく未払い計上し、長期間、支払う体力が回復しない場合は、未払金を役員借入金などに振り替え、金利の収受もきちんと行うべきである。

 

補足

以上のようにナーバスに考えるのは、役員報酬の「未払金」の精算金額が”役員賞与”に該当するとした判例もあるためである:

役員報酬の一部を未払金として経理し、その未払金を一般の賞与支給時期に支払うなどしていた事例につき、当該未払金に相当する金額は、臨時的な給与と認められ、役員賞与に該当するとした事例

役員に支給された給与が報酬となるか、賞与となるかは、実際に支給された給与が定期的な給与か、臨時的な給与かという支給形態ないし外形によって判断すべきところ、[1]本件役員報酬について、あらかじめ定められた支給基準に基づいて定時にその全額を支払うことができないとする特段の事情もないこと、[2]毎月の役員報酬の一部を未払金とし、その額をおおむね盆、暮れの従業員に対する賞与の支給期に支払っていること、[3]賞与の支給期に支払った金額は、未払金残高を超える金額であることから、未払金勘定に赤字が生じているが、当該赤字の金額を各事業年度の期末においては、その残高がちょうど零円となるように、その後の当該役員報酬の未払金で補てんしていること等から判断すると、当該未払金は、当初から役員賞与として支給すべきものを形式的に定期の給与にしたものにすぎない。

出典:国税不服審判所「平成6年4月15日裁決」

なお、源泉徴収との関連では、役員(使用人についても同じですが)に毎月支払われる給与等が、未払となる場合、源泉徴収は給与等を実際に支払う際に行いますので、原則として支払われるまでは源泉徴収は行わない。