A様用)節税対策で、税理士報酬を1年分前払いしても短期前払費用にはならない根拠は?

問題の所在

ふと、「顧問料を1年間前払いすれば、短期前払費用で全額損金に計上できるなら、節税対策になるのでは?」と思ったが、念のためググったところ、

原則OKと原則不可の両方があってビックリ:

 

・短期前払費用 原則としてOK説

① 最終更新日:2025/6/18 節税対策Vol.13 お金は出ていくが将来につながる投資型節税「短期前払費用」

https://vs-group.jp/startup/avoidance/1893.html#:~:text=%E3%81%BE%E3%81%9A%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%8D%E7%AF%80%E7%A8%8E,%E3%81%AB%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

(以下、一部抜粋)

まず検討すべき節税は「経費の1年分前払いによる節税」です。
家賃や保険料、サーバー代、リース料、税理士の顧問料など毎月支払いが
継続することが契約書で決まっている経費は、期末に翌1年分を前払いする
ことで全額を経費にできます。
つまりその事業年度は2年分を経費にできるということです。
この節税の優れた点は事前準備が不要で、思い立ったときからすぐ実行に
移しても間に合うということです。
つまり利益が出そうなことが期末ギリギリにわかっても、その段階から対応
できる数少ない節税なのです。
ただし注意すべき点が2つあります。
まずは実際にお金を支払わなければいけないということです。
これは当然のことのようですが、しっかりと意識しなければいけません。
1年分の経費を前払いするのですから大きな資金の流出になります。
節税に有効だという側面ばかりを意識していると、逆に思わぬ資金繰りの
悪化に陥る可能性があるのです。

もう1点は1年分前払いを毎年継続しなければいけないということです。
つまり翌年は利益が出ていなかったり資金繰りが苦しかったりしても、
同じ時期に1年分を前払いしないといけないのです。
もし今年1年だけの利益ということがわかっているのであれば、十分に
検討しないと翌年に苦しむことになります。こういったデメリットはありますが、
どうせ支払わなければいけない経費を先に払うだけで節税になるという点で、
ムダのない優れた節税と言えるでしょう。

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・短期前払費用 もう不可説

・【税理士監修】短期前払費用を徹底解明 | 正しい会計処理と節税対策

【税理士監修】短期前払費用を徹底解明 | 正しい会計処理と節税対策

(以下、一部抜粋)

【短期前払費用として認められないサービスの例】

  • 弁護士や税理士の顧問料
  • 雑誌の年間購読料
  • リスティング広告
  • 資産を増やす目的の借入金利息

サブスクサービスの多様化などにより、短期前払費用に該当する取引が増えています。年払いのサービス利用が多い場合、短期前払費用を適切に管理することが正しい会計処理につながります。どの取引が短期前払費用に該当するのか、特例が適用できるのか否かを適切に見極めて、処理をすることが大切です。

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結論

改めて、原則として不可。

 

理由

以下の記事がベスト:

2016.11.01 税理士の顧問料は短期前払費用に該当するのか?

税理士の顧問料は短期前払費用に該当するのか?

(以下、一部抜粋)

 

なぜ、税理士の顧問料は短期前払い費用に該当しないのでしょうか?「TKC税務Q&A」に下記事例が掲載されています。

【質問】

法人税基本通達2-2-14に短期の前払費用について規定されていますが、本通達に定める前払費用と前払金(前渡金)、繰延資産との相違について具体的な例によって説明してください(以下、略)。

【回答】

1 前払費用の意義については、法基通2-2-14通達において

明らかにされていますが、更に具体的に述べますと、次のようになります。

(1)一定の契約に従って継続的に提供を受けること、要するに等質等量のサービスがその契約期間中継続的に提供されること。

(2)役務の提供の対価であること。

(3)翌期以降において時の経過に応じて費用化されるものであること。

(4)現実にその対価として支払ったものであること。

以上の要件のすべてを満たす費用が本通達における前払費用に該当することとなりますので、一定の時期に特定のサービスを受けるためにあらかじめ支払った対価(例えば、前払い給料、前払い顧問料、翌期に放映されるテレビCM料等)、あるいは物の購入とか生産に対する対価の前払いは前払金(又は前渡金、手付金)であって前払費用に該当しません。

また、ノーハウの提供を受けるための頭金等既に提供を受けたサービスの効果が将来に及ぶためにその対価を繰り延べるいわゆる繰延資産も前払費用とは性質を異にします。

以上のことから、前払費用に該当する費用としては、土地建物等の賃借料、保険料、工業所有権等の使用料、信用保証料、手形割引料、借入金利子、ロイヤリティ(繰延資産に該当するものを除きます。)等になります(以下、略)。

ここで「前払い顧問料は前払金であり、そもそも前払費用に該当しない」という旨が記載されていますので、2-2-14の適用はあり得ないことになります。

また、上記(1)で「等質等量」ということが述べられていますが、これは過去の判決などでも示されている考え方です。

〇 東京地裁(平成19年6月29日)

本件通達は、企業としては、前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するもの)はその支出をする時の費用に計上する経理処理を行っていることが多く、これらについて厳密な期間計算を行って税務上別個の計算を行う実益を捨ててもさして弊害がないと思われることから、企業におけるこれら期間損益の処理を特例的に是認する取扱いであると解されるところ、その役務が等量等質のものではない場合には、時の経過に応じて収益と対応させる必要があることから、本件通達による特例的取扱いは認められないものと解すべきである。

〇 国税不服審判所裁決(平成16年3月24日)

所得税基本通達37―30の2で述べた前払費用とは、〔1〕一定の契約に従って継続的に提供を受けること、すなわち、等質等量のサービスがその契約期間中継続的に提供されること、〔2〕役務の提供の対価であること、〔3〕翌年以降において時の経過に応じて費用化されるものであること、〔4〕現実にその対価として支払ったものであることの4つの要件のすべてを満たす費用と解するのが相当である。

そもそも前払い顧問料は前払金なのですが、顧問料は等質等量にもなり得ないものです。当然ですが、毎月、税理士に相談等する内容が等質等量になることはあり得ません。

「記帳代行料はどうでしょうか?」と聞かれたこともありますが、これも上記と同様の考え方となります。

自分の顧問料を前払いさせ、これが否認されていては、税理士として、非常に恥ずかしい思いをすることになります。税理士や弁護士などの顧問料は短期前払費用の対象にはなりません。

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補足

まあ、誰でも一度は思いますよね。。。。(^o^)