当事務所用)【2025/7/24時点】当事務所の法人のお客様への、いわゆる旅費規定、日当は?<ポータル>
問題の所在
中小企業での節税手法のひとつである、旅費規定、日当については、
後述の運用が難しいため、当事務所から積極的に提案することは控えてきたが、
最終利益が過大に見込まれるお客様には、節税のモチベーションがあるので、運用もきちんとすることを前提に、提案する。そのための整理。
結論と理由
以下の論点がある:
論点)法人税上、旅費交通費a/c(消費税上、課税仕入)、役員にとって所得税上、非課税か?
★その通り。
根拠は以下:
2020.10.09 日当が非課税とされる根拠とその意味
(以下、一部抜粋)
まず、日当が非課税になる法的根拠は下記です。
所得税法第9条第1項第四号
給与所得を有する者が勤務する場所を離れて
その職務を遂行するため旅行をし、若しくは
転任に伴う転居のための旅行をした場合又は
就職若しくは退職をした者若しくは死亡による
退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための
旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に
充てるため支給される金品で、その旅行について
通常必要であると認められるもの
ここに「旅行」とありますが、これは一般的な
意味合いでの「旅」ではなく、従業員が職務上
「よその土地に行くこと」を指します。
ですから、出張等にともなって支給する日当は、
この法律規定に当てはまる限り非課税となります。
この法律規定には下記の法令解釈通達があります。
所得税基本通達9-3
法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる
金品は、同号に規定する旅行をした者に対して
使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、
移転料等の支出に充てるものとして支給される
金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路
若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の
職務内容及び地位等からみて、その旅行に
通常必要とされる費用の支出に充てられると
認められる範囲内の金品をいうのであるが、
(以下、略)
ですから、日当が非課税となる理由としては、
「その旅行に通常必要とされる費用の支出に
充てられると認められる範囲内の金品をいう」
とあることから、出張等にともなって発生し、
従業員が負担する費用の【実費弁償】だから
非課税になる・している、という理解です。
出張等にともなって、電車・飛行機などの交通費、
また宿泊費などは実費精算するにしても、
必ずしも実費精算できない出張者が負担する
費用があり、それを日当として支給することで
実費弁償したことにする、という考え方です。
出張がなければ発生せず、出張があったからこそ
発生する費用のうち、実費精算できないような
費用をあえて挙げるとすると、
・食事代(自宅で食事ができないから)
・電話代(外出しているから電話連絡を要する)
・新聞代(自宅であれば定期購読で読めた)
などがこれに該当することになります。
裏を返すと、出張等に「通常必要とされる費用の
支出に充てられると認められる範囲の金額を超える」
場合については、非課税とならず、
経済的利益が発生しているとして給与所得など
課税されることになります(所基通9-4)。
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論点)日当を支給する基準は?
★(東京⇔大阪の出張に加えて)行程8km以上または5時間以上
根拠は以下:
2025.04.10 日当の規程フォーマットはなぜ8km・5時間基準なのか?
(以下、一部抜粋)
まず結論から明示すると、日当を支給する基準を
「公務員と合わせておけば税務調査で否認されない」ことから
【8km・5時間】という基準を採用しているということになります。
具体的には、「国家公務員等の旅費に関する法律」や
「国家公務員等の旅費支給規程」を読んでいただければ
理解できるのですが、面倒なので下記を参照してください。
「国家公務員等の旅費制度の改正(参考資料)2023年10月27日」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20231027/06.pdf
※日当に関しては6ページ、関連する法律規定に関しては
9~10ページとなります
この公務員に関する日当規程を読み違える方が多いので、
公務員=国税職員(調査官)として、特に近距離の外出
(宿泊をともなわない日帰り)におけるポイントを挙げます。
●勤務する税務署の管轄内(在勤地内)の外出であっても
日当は支給される(正確には税務署からの距離別に
日当額は細かく設定されています)
●税務署管轄内の外出(税務調査)については
【行程8km以上または5時間以上】が日当支給基準
●税務署管轄内の外出における日当額は
日当設定額の2分の1(以内)に設定されている
調査官の場合、税務調査で(往復の時間も含めて)
5時間未満の外出はほぼありませんので、税務署近隣
(8km未満)の調査先に出向く場合であっても
日当が支給されていることになります。
【行程8km以上または5時間以上】を基準とした
規程フォーマットが多いのは、このように公務員の規程を
基準としているからなのですが、勘違いしていただきたくないのは
8km未満であっても5時間以上の外出
(もしくは5時間未満でも8km以上の外出)であれば
日当が支給されているというポイントです。
よくある勘違いとして、営業職など終日外出しているが
勤務地=会社から数キロ圏内の場合、日当は支給できない
と思い込んでいるケースです。
さて、上記のとおり公務員(調査官)の場合は
かなり細かく(日帰り・外出)距離別の日当額を
設定しているのですが、中小企業において
これらをそのまま適用するのは煩雑ですから、
●日当額のベースを宿泊日数で設定する
(1泊2日の場合、日当額×1日分)
●外出(日帰り)の日当額を2分の1とする
●ただし、顧客・取引先を訪問するのに(往復を含め)
2~3時間程度の外出は日当の支給対象としない
(半日以上の外出の場合は日当の支給対象とする)
とした方が支給計算は簡易で、現実的でしょう。
外出が多い業種・業態の法人で、役員および従業員の
手取り額を増やしたい場合、給与を上げるよりも
日当の設定を工夫することで満足度が上がるケースが多いので、
ぜひ上記を参考に、顧問先に提案していただければと思います。
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論点)日当の単価は?
・東京⇔大阪を想定した、「遠方」「宿泊」の出張の日当を、@1万円
・【行程8km以上または5時間以上】を想定した、「外出」「日帰り」の出張の日当を、上の半額として、@5千円
(・それ以下は、@ゼロ円で非明文化か、ダミー的に「外出」の半額で明文化、程度)
根拠は、上の論点の日当の範囲から。また、以下の記事も:
2020.11.13 日当支給におけるその他注意点
(以下、一部抜粋)
前回のメルマガと総合して考えると、
社長への日当としては
日当10,000円 + 宿泊費15,000円
あたりが、税務調査で否認指摘されない程度の
妥当なラインだと考えます。
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(なお以下の書籍では、(東京⇔大阪の出張を例示しながら、近郊の出張でも@2万円を例示しているが、無理があると考える)
(また以下の記事では、以下の書籍を引用して「日当10,000 円~最大20,000 円程度、別に宿泊費15,000 円」を提案しているが、、、、以下の書籍の議論の前提は、東京⇔大阪的な出張を前提にしていると推察されるので、近郊の出張には無理があると考える)
【永久保存版】出張日当(出張旅費規程)の金額設定から税務調査まで
↓
論点)(手当分のみの他に)宿泊費、交通費も日当にするか?
★しない。
・社長の交通費精算は毎月のルーチンで処理されるので、日当の精算のためにそこから抜き出すのが煩雑。
↓
論点)出張旅費日当精算書のフォーマットは?
・上の「8km以上または5時間以上」か「1泊2日」かを明記。
・当面、社長について、上の「近郊が@5,000円、遠方が@10,000円」を明記して、金額を算出。
★以上で、毎月の計上と精算は開始できる。
論点)出張旅費日当規程は?
・上の書籍で「なるべく細分化されている方がよい」とあるので、収集したサンプルからそのようなものを選定する。
・上の各論点が整理されていれば、規程にはそのポイントが反映されていれば足りるので、汎用のサンプルベースで足りる。
・定期的に文言をリファインする。
(以下でプロ仕様の規程が販売されており、魅力的であるが当面パス)
https://kachiel.jp/lp/20240410_data/
補足
当事務所の運用としては、
・お客様ごとに、
・1つのフォルダに、規程、毎月の精算書、消込台帳を同梱
・その規程も不定期にリファインする。
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