事前確定届出給与を適用した場合の社会保険についての概要は?

問題の所在

法人の役員報酬について、事前確定届出給与を適用して、年に2、3回、通常月よりも比較的多額の金額をgetするメリットは、以下の1)と2)の2点。

1)賞与っぽくもらえる ★大前提で賞与ではない。金額の上限は事前に確定している。

2)社会保険を節約できる。

→ 特に2)について、理解を確認した際の備忘メモ。

 

結論

・当該2,3回の受領分の社会保険料の計算は、賞与扱いにはなる。

・だから、単月で比較すれば、社会保険料の支払いは割増にはなる。だけど通年で支払額を比較すれば、節約になる。

 

以下の記事が参考になる:

Q71【事前確定届出給与】役員賞与を経費にする方法・要件は?/社会保険も安くなる? 最終更新日:2022/01/31

Q71【事前確定届出給与】役員賞与を経費にする方法・要件は?/社会保険も安くなる?

(以下、一部抜粋)

 

6. 社会保険料との関係は?

(1)賞与の場合、社会保険は上限がある

社会保険上、「年3回までの支給」は、「賞与」と取り扱われ、「標準報酬月額」ではなく、「標準賞与額」が適用されるとともに、上限が設けられています(健康保険は年度累計額573万・厚生年金は1ヶ月当たり150万が上限)。

(2)事前確定届出給与により社会保険が安くなる?

例えば、「定期同額給与」を低くして、年3回までの「事前確定届出給与」を高くすると、金額によっては社会保険料(健康保険+厚生年金保険)が安くできる可能性はあります。

(3)留意事項~「届出額」通りに支給しなかった場合~

「事前確定届出給与」通りに役員給与を支給する場合は何の問題もありません。しかし、届け出額と異なる金額を支給した場合は、下記の「通達」にも留意が必要です。

●(年管管発0918第5号 要約)
「賞与」とすることで、社会保険の負担が少ないにもかかわらず、実際は、月給同様に給与を「分割支給」している場合は、賞与ではなく「給料」として社会保険を計算する。

例えば、事前確定届出給与の金額を無視して、毎月引き出す場合は、税法上「事前確定届出給与」自体が全額否認されるだけでなく、「社会保険上」も「給料」として社会保険料を徴収される可能性があるということになります。ご留意ください。

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上のリスクについて付言すると、

・事前確定届出給与の申請内容通りに各月に支給する限りは、社会保険料の側でそれを認めないということはない。その意味でのリスクはない。

 

理由

上の「賞与の扱いになる」の根拠は、年金事務所の疑義照会とその回答。それを紹介している事例が以下の2つ;

 

1)事前確定届出給与について

事前確定届出給与について

(以下、一部抜粋)

事前確定届出給与について事業所役員の役員報酬について、年間例月12回と、例月とは異なる金額の報酬を年2回支払う予定として、事前確定届出給与を税務署に届出している。役員報酬のうち、例月とは異なる金額の年2回の報酬は、賞与支払届にて届出すべきか、年間の年俸制と判断し標準報酬月額に算入すべきか。
定期に同額支払われる報酬のほかに、事前確定届出給与の支給がある場合は、その支払いが3月を超える期間ごとに支払われる報酬であれば、健康保険法第3条第6項及び厚生年金保険法第3条4項による賞与とし、厚生年金保険法第24条の3及び健康保険法第45条により標準賞与額の決定をすることになる。

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2)以下の書籍のp82から83。

補足

上の記事の前後の解説も大変参考になる。

 

また、上の、「年管管発0918第5号」は以下:

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1304&dataType=1&pageNo=1