法人で、本社移転に伴う、旧本社の原状回復費用の課否判定は?
問題の所在
会社で、旧賃貸物件から新賃貸物件へ引越し後に、旧本社での敷金の返済の際の仕訳の備忘メモ。
通常、原状回復費の控除後の残金が返金されるが、この原状回復費用の消費税の扱いに注意(留意程度)。
結論
以下の仕訳 ★原状回復費を、修繕費a/cで、課税取引で計上するのがポイント。
(借)普通預金 95 (貸)敷金(不課税) 100
@@@修繕費(課税) 5
理由
まず、国税庁のhpで、原状回復費用の消費税法上の扱いをピンポイントで説明説明している記事は以下:
建物賃貸借に係る保証金から差し引く原状回復工事費用
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/06.htm
(以下、一部抜粋)
建物の賃借人には、退去に際して原状に回復する義務があることから、賃借人に代わって賃貸人が原状回復工事を行うことは賃貸人の賃借人に対する役務の提供に該当します。
したがって、保証金から差し引く原状回復工事に要した費用相当額は課税の対象となります。
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次に、消費税上の扱いを丁寧に解説されている記事は以下:
Q164 賃借物件入居時の「敷金・敷引・礼金」/ 退去時の「原状回復費用・違約金」にかかる消費税の取扱い 最終更新日:2023/11/17
(以下、一部抜粋)
1. 入居時の敷金・敷引・礼金の消費税区分
(1) 敷金
入居時に支払う「敷金」は、将来退去の際に返金されますので、単なる「預け金」、対価性がありませんので「消費税不課税取引」となります。「敷金」についての消費税課税判断は、事業用、居住用共通となります。
(2) 敷引・礼金
入居時に支払う礼金・敷引は、「賃貸借契約を締結した」という「役務提供」に対して支払われるものと取り扱われます。
したがって、「対価性がある」ということになり、消費税の課税判断は、「家賃」と同様の判断となります。
事業用、居住用で消費税課税区分が異なります。以下の通りです。家賃の消費税判断については、Q136をご参照ください。
事業用 | 課税 |
---|---|
居住用 | 原則非課税 |
なお、法人税・所得税上は、税務上の繰延資産(自己が便益を受けるために支出する費用)として、原則5年で償却を行います(契約期間5年未満で更新時に権利金を支払う場合は、その賃借期間)。
2. 退去時の原状回復費用の消費税課税区分
(1) 原状回復費用の消費税区分
賃借人が退去する際に、保証金(敷金)の中から原状回復工事の費用相当額を支払う(相殺される)場合があります。
賃借人には「原状回復義務」がありますので、本来は賃借人が原状回復のうえ、返却する必要があります。
しかし、実務上は、賃貸人が原状回復工事を行ったうえで、工事代金等を賃借人に請求するケースが一般的です。
つまり、本来は賃借人が行うべき原状回復工事を、賃貸人が代わりに行うものですので、賃貸人⇒賃借人に対する「役務提供」の対価として「消費税課税対象」となります。
この「原状回復費用」は、「家賃」とは性格が異なりますので、たとえ居住用であっても、消費税非課税取引となる「住宅家賃」の取扱いはなく「課税取引」となります。
(2) 原状回復義務とは?
なお、「原状回復義務」とは、裁判例では、賃借人の故意・過失等による劣化部分をさし、通常の生活で生じた自然消耗等による劣化部分は「原状回復義務」には含まれません。
賃貸物件の原状回復義務とは…
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること(原状回復ガイドラインより、民法621条)
● 「故意・過失」による劣化部分・・上記の原状回復費用に含まれる(賃借人負担)
● 「通常の生活生じた自然損耗や、経年劣化」部分 ⇒上記の原状回復義務には含まれない(賃貸人負担)
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補足
上の記事の後半には、違約金が生じた場合についても解説されている (^^)
なお、原状回復費は修繕費a/c。ちょっとググるとたくさんヒットする。代表的な記事は以下:
(以下、一部抜粋)
原状回復費用の仕訳と勘定科目まとめ
オフィスを退去する際などに支出する原状回復費用は経費に計上でき、基本的に「修繕費」の勘定科目で仕訳します。物件を借りた側の場合、原状回復費用を敷金と相殺するのが一般的です。物件を貸した側が支出した場合、「立替金」もしくは「修繕費」の勘定科目で仕訳し、敷金と相殺する仕訳を行います。
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