消費税法上、投資事業有限責任組合の持分の「譲渡」の扱い② 課税売上割合上の扱いは?

問題の所在

投資事業有限責任組合の持分の譲渡について、以下の記事を作成した:

【2024/9/19訂正 m(_ _)m 】消費税法上、投資事業有限責任組合の持分の「譲渡」の扱い① 非課税取引?不課税取引?「償還」なら非課税取引?不課税取引?

上の論点の次に、「課税売上割合の計算」の論点がある。

★国際取引では、「非課税売上と整理し、その先で、課税売上割合の分母にカウントするしない調整」をすることがある。ここでも同じ発想が入っているよう。

その記事が以下の記事が国税庁のhpの質疑応答事例:

非課税となる有価証券の範囲と課税売上割合の関係

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/17/09.htm

(一部の抜粋は後述)

そこで、冒頭の弊記事の内容と上の記事とが整合しているかをchした。

 

結論と理由

・投資事業有限責任組合の持分の譲渡は、下の引用した表の中の赤字部分、すなわち、

株主又は投資主となる権利、優先出資者となる権利、特定社員又は優先出資社員となる権利その他法人の出資者となる権利令4855%

に該当し、課税売上割合の計算上で調整はなく、非課税仕入金額の5%だけを分母にカウントする、と考える。

なお、上のように5%にする趣旨は以下:

課税売上割合の計算で有価証券や金銭債権の譲渡対価に5%をかける理由

(以下、一部抜粋)

持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の出資持分や協同組合の持分については、そうしょっちゅう売買されるものではなく、株式や金銭債権、公社債等と比べて流動性が低いことから、円滑な譲渡を妨げないように配慮する必要性が薄いため、譲渡対価の5%相当額ではなく、全額を課税売上割合の分母に算入します。

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補足

上の国税庁の質疑応答事例の一部抜粋は以下(黒太字は引用者加筆):

 

【照会要旨】

非課税となる有価証券等の範囲と課税売上割合の分母に含める金額との関係はどうなるのでしょうか。

【回答要旨】

次表のとおり取り扱います。
非課税となる有価証券等の範囲と課税売上割合の関係

非課税となる有価証券等の譲渡の範囲課税売上割合の計算
法令有価証券等の種類分母に含める金額
法別表第二第2号金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券(ゴルフ場利用株式等を除く。)国債等の現先取引を除く 令482三、令4855%
令9条1項株式の端数の部分(注)令4855%
金融商品取引法第2条第1項第1号から第15号まで(定義)に掲げる有価証券及び同項第17号に掲げる有価証券(同項第16号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)に表示されるべき権利(これらの有価証券が発行されていないものに限るものとし、電子決済手段に該当するものを除く。)令4855%
株主又は投資主となる権利、優先出資者となる権利、特定社員又は優先出資社員となる権利その他法人の出資者となる権利令4855%
合資会社、合名会社、合同会社、協同組合等の持分全額含める
貸付金、預金(居住者発行のCDを含む。)、売掛金その他の金銭債権(電子決済手段に該当するもの及びゴルフ会員権を除く。)資産の譲渡等の対価として取得したものの譲渡を除く 令482二、令4855%
法別表第二第2号外為法第6条第1項第7号に規定する支払手段令482含めない
令9条4項資金決済に関する法律第2条第5項に規定する電子決済手段、同条第14項に規定する暗号資産、国際通貨基金協定第15条の特別引出権令482含めない
国債等やCD、CPの買現先 令483
売戻し差額が益のとき…益部分を含める
売戻し差額が損のとき…損を控除する
国債等やCD、CPの売現先 令482含めない

(注) 会社法の施行に伴って端株制度は廃止されましたが、同法施行前から存在する端株については「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第86条の規定により存続が認められています。このため、当該端株に係る消費税の取扱いについては、従前と同様に有価証券に類するものとされる(平18改正消令附則2)とともに、会社法施行後に行われる端株の売却代金は有価証券等の譲渡の対価とみなされ(平18改正消令附則4)、課税売上割合の計算においては、その5%相当額を分母の金額に算入することとなります。

【関係法令通達】

消費税法施行令第48条

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消費税法施行令9条1項(黒太字は引用者加筆):

有価証券に類するものの範囲等)
第九条 法別表第二第二号に規定する有価証券に類するものとして政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 金融商品取引法第二条第一項第一号から第十五号まで(定義)に掲げる有価証券及び同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)に表示されるべき権利(これらの有価証券が発行されていないものに限るものとし、電子決済手段(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項(定義)に規定する電子決済手段をいう。第四号及び第四項並びに第十一条において同じ。)に該当するものを除く。)
二 合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、法人税法第二条第七号(定義)に規定する協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資者の持分
三 株主又は投資主(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十六項(定義)に規定する投資主をいう。)となる権利、優先出資者(協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号)第十三条第一項(優先出資者となる時期等)の優先出資者をいう。)となる権利、特定社員(資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第五項(定義)に規定する特定社員をいう。)又は優先出資社員(同法第二十六条(社員)に規定する優先出資社員をいう。)となる権利その他法人の出資者となる権利
四 貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権(電子決済手段に該当するものを除く。)
2 (引用者省略)
3 (引用者省略)
4 法別表第二第二号に規定する支払手段に類するものとして政令で定めるものは、電子決済手段、資金決済に関する法律第二条第十四項に規定する暗号資産及び国際通貨基金協定第十五条に規定する特別引出権とする。

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→ なお、以下で、「匿名組合の持分に準ずる」には該当しないことを条文等で確認する。まず、

法人税法

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 国内 この法律の施行地をいう。
二 国外 この法律の施行地外の地域をいう。
三 内国法人 国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう。
四 外国法人 内国法人以外の法人をいう。
五 公共法人 別表第一に掲げる法人をいう。
六 公益法人等 別表第二に掲げる法人をいう。
七 協同組合等 別表第三に掲げる法人をいう。
(以下、引用者省略)

別表第三 協同組合等の表(第二条、附則第十九条の二関係)

★ここには投資事業有限責任組合は記載なし(引用者追記)

投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)

(定義)
第二条 この法律において「委託者指図型投資信託」とは、信託財産を委託者の指図(政令で定める者に指図に係る権限の全部又は一部を委託する場合における当該政令で定める者の指図を含む。)に基づいて主として有価証券、不動産その他の資産で投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めるもの(以下「特定資産」という。)に対する投資として運用することを目的とする信託であつて、この法律に基づき設定され、かつ、その受益権を分割して複数の者に取得させることを目的とするものをいう。
2 (引用者省略)

16 この法律において「投資主」とは、投資法人の社員をいう。

消費税法施行令第48条

(課税売上割合の計算方法)
第四十八条 法第三十条第六項に規定する政令で定めるところにより計算した割合は、第一号に掲げる金額のうちに第二号に掲げる金額の占める割合とする。
一 (引用者省略)
二 (引用者省略)
2 前項第一号に規定する資産の譲渡等には、事業者が行う次に掲げる資産の譲渡は、含まないものとする。
一 法別表第二第二号に規定する支払手段又は第九条第四項に規定する電子決済手段、暗号資産若しくは特別引出権の譲渡
二 第九条第一項第四号に掲げる金銭債権のうち資産の譲渡等を行つた者が当該資産の譲渡等の対価として取得したものの譲渡
三 次に掲げるもの(以下この条において「現先取引債券等」という。)をあらかじめ約定した期日(当該約定の日以後その期日を定めることができることとされているものにあつては、当該定められる期日)にあらかじめ約定した価格又はあらかじめ約定した計算方法により算出される価格で買い戻すことを約して譲渡し、かつ、当該約定に基づき当該現先取引債券等を買い戻す場合における当該現先取引債券等の譲渡
イ 国債等
ロ 第十条第三項第一号に規定する譲渡性預金証書
ハ 第十条第三項第六号に規定する約束手形
ニ その他財務省令で定める証券又は証書
3 事業者が現先取引債券等をあらかじめ約定した期日(当該約定の日以後その期日を定めることができることとされているものにあつては、当該定められる期日)にあらかじめ約定した価格又はあらかじめ約定した計算方法により算出される価格で売り戻すことを約して購入し、かつ、当該約定に基づき当該現先取引債券等を売り戻した場合には、当該売戻しに係る第一項第一号に規定する資産の譲渡等の対価の額は、当該現先取引債券等の当該売戻しに係る対価の額から当該現先取引債券等の当該購入に係る対価の額を控除した残額とする。この場合において、当該控除して控除しきれない金額があるときは、同号に掲げる金額は、当該金額から当該控除しきれない金額を控除した残額とする。
4 (引用者省略)
5 事業者が法別表第二第二号に規定する有価証券(第九条第二項に規定するゴルフ場利用株式等を除く。)並びに同条第一項第一号及び第三号に掲げる権利(以下この項において「有価証券等」という。)の譲渡をした場合(当該譲渡が第二項第三号に掲げる現先取引債券等の譲渡又は第三項に規定する現先取引債券等の売戻しに該当する場合を除く。)又は同条第一項第四号に掲げる金銭債権(資産の譲渡等を行つた者が当該資産の譲渡等の対価として取得したものを除く。以下この項において同じ。)の譲渡をした場合には、当該譲渡に係る第一項第一号に規定する資産の譲渡等の対価の額は、当該有価証券等又は金銭債権の譲渡の対価の額の百分の五に相当する金額とする。
6 (引用者省略)

消費税法 別表第二 第二号(赤太字は引用者加筆):

別表第二(第六条、第十二条の二、第十二条の三、第三十条、第三十五条の二関係)
一 (引用者省略)
二 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項(定義)に規定する有価証券その他これに類するものとして政令で定めるもの(ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利に係るものとして政令で定めるものを除く。)及び外国為替及び外国貿易法第六条第一項第七号(定義)に規定する支払手段(収集品その他の政令で定めるものを除く。)その他これに類するものとして政令で定めるもの(別表第二の二において「有価証券等」という。)の譲渡

別表第二の二(第六条関係)

一 有価証券等外国為替及び外国貿易法第六条第一項第七号に規定する支払手段のうち同号ハに掲げるものが入力されている財務省令で定める媒体を含む。)
二 郵便切手類
三 印紙
四 証紙
五 物品切手等
六 身体障害者用物品
七 教科用図書

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改めて、消費税法施行令第9条第1項 を再掲:

(有価証券に類するものの範囲等)
第九条 法別表第二第二号に規定する有価証券に類するものとして政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 金融商品取引法第二条第一項第一号から第十五号まで(定義)に掲げる有価証券及び同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)に表示されるべき権利(これらの有価証券が発行されていないものに限るものとし、電子決済手段(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項(定義)に規定する電子決済手段をいう。第四号及び第四項並びに第十一条において同じ。)に該当するものを除く。)
二 合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、法人税法第二条第七号(定義)に規定する協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資者の持分
三 株主又は投資主(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十六項(定義)に規定する投資主をいう。)となる権利、優先出資者(協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号)第十三条第一項(優先出資者となる時期等)の優先出資者をいう。)となる権利、特定社員(資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第五項(定義)に規定する特定社員をいう。)又は優先出資社員(同法第二十六条(社員)に規定する優先出資社員をいう。)となる権利その他法人の出資者となる権利

★引用者追記:上の最後が「持分」ではなく「権利」とあるが、金融商品取引法でも投資事業有限責任組合の地位を「権利」と称している。