社用車利用時の故障等の費用の支払いと保険金受取の各々の課否判定は?

問題の所在

以下の事例:

・当社の従業員Aさんが客先訪問中に、社用車利用時に高速中で飛び石でフロントガラスが破損し、その場から客先へタクシーに切り替えて向かった。

・その際のタクシー代を立替経費精算申請されたので、当然、支払った。

・その後、保険会社から、当該タクシー代も保険支払対象となる旨の連絡があり、後日、振込まれる予定。

・ともに期中の取引で、各々の課否判定は?

 

結論

・保険金は、受取保険料a/cで、不課税取引

・タクシー代は、旅費交通費a/cで、、、、課税取引! ★消費税上対応するのは、(当社が受け取る受取保険金ではなく、)タクシー会社側での収入計上取引であるため。

 

理由

以下の記事の「結論」の再掲:

課否判定)従業員等の(出張旅費の)日当が課税仕入になる考え方は?

(以下、一部抜粋)

演繹的には、消費税の課税関係が以下の通りであるため:

 

1.当事者の整理

(会社)立替経費支払い【不課税】 ⇔ (従業員)宿泊費、日当等【?】 ⇔ (JR等)電車売上【課税】

(会社)立替経費支払い【不課税】 ⇔ (従業員)宿泊費、日当等【?】 ⇔ (JR等)電車売上【課税】

(会社)立替経費支払い【不課税】 ⇔ (従業員)宿泊費、日当等【?】 ⇔ (JR等)電車売上【課税】

 

2.考え方

消費税の課否判定上は、上の赤でみるのではなく、青でみるので、【?】は【課税】になる。

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改めて、国税庁の記事(消費税の基本通達)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/02.htm

(以下、一部抜粋)

(保険金等による資産の譲受け等)

11-2-8 法第2条第1項第12号《課税仕入れの意義》に規定する「他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること」(以下11-2-8において「資産の譲受け等」という。)が課税仕入れに該当するかどうかは、資産の譲受け等のために支出した金銭の源泉を問わないのであるから、保険金、補助金、損害賠償金等を資産の譲受け等に充てた場合であっても、その資産の譲受け等が課税仕入れに該当するときは、その課税仕入れにつき法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるから留意する。(令5課消2-9により改正)

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また、以下の記事が参考になる:

保険金を収受して自動車の修理代を支払う場合の消費税区分と仕訳例

保険金を収受して自動車の修理代を支払う場合の消費税区分と仕訳例

(以下、一部抜粋)

この記事の内容は、2024年8月現在の最新の税制に対応しています。

交通事故を起こしてしまった場合であっても、保険に加入していれば保険金を受け取ることができます。

しかし、保険契約の内容によっては、当社が保険金を受け取ることなく、保険会社が直接、修理会社事故の相手方に修理代や慰謝料などを支払うことがあります。

そこで、今回は、自動車保険に係る保険金を収受して修理代を支払う場合についての消費税区分と仕訳例について解説したいと思います。

保険金の受け取りは不課税取引

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

保険金は、一定の保険事故の発生の事実に基づいて収受するものであり、資産の譲渡等の対価として収受するものではないため、保険金の受け取りは上記4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たしません。

したがって、保険金の受け取りは消費税の課税の対象とならず、不課税取引となります。

自社所有の自動車を修理した場合

上述のとおり、保険金の受け取りは不課税取引となりますが、不課税売上げである保険金収入を原資として自社所有の自動車を修理した場合は課税仕入れに該当するのでしょうか?

この点については、消費税法基本通達11-2-8に、以下のように記載されています。

(保険金等による資産の譲受け等)
法第2条第1項第12号《課税仕入れの意義》に規定する「他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること」(以下「資産の譲受け等」という。)が課税仕入れに該当するかどうかは、資産の譲受け等のために支出した金銭の源泉を問わないのであるから、保険金、補助金、損害賠償金等を資産の譲受け等に充てた場合であっても、その資産の譲受け等が課税仕入れに該当するときは、その課税仕入れにつき法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるから留意する。

つまり、課税仕入れに該当するかどうかを判断する際は、その支出した金銭の源泉(出どころ)は関係ないということです。

したがって、不課税売上げである保険金収入を原資として修理代を支出した場合であっても、当該修理代は課税仕入れに該当することになります。

それでは、当社所有の自動車の修理代について保険金が支払われる場合の仕訳例を、ケース別に見てみましょう。

設例
当社従業員が業務中に交通事故に遭った。保険金100万円の支払いを受けることとなり、当該保険金を原資として当社所有の社用車を100万円で修理した。

① 保険金の支払いを受けて修理代を支払う場合

 

保険金の支払を受けた場合は不課税取引となり、「雑収入」などの勘定科目で処理します。

また、当該保険金を原資として修理代を支出した場合は課税仕入れとなります。

個別対応方式を採用している場合は、その修理した自動車の業務目的により用途区分を行います。例えば、課税商品用運送トラックの修理代であれば「課税売上対応課税仕入れ」、住宅内見用車両であれば「非課税売上対応課税仕入れ」となります。

 

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補足

上の税法上の規定は、「消費税 基本通達 第2節 課税仕入れの範囲」の中で規定されている。

ここでは、抽象的に定められている課税仕入れ取引について、理屈で考えれば課否判定は一意に定まるが、誤解されやすいものをまとめてある。

 

実務上、不課税取引か否かを判断する際に、

①4要件への該当の有無、

②非課税取引に該当していないかのch、

の2つを励行するが、

③この基本通達11-2-1

も、上の①の入れ子的にセットでchすべき。

★愛用する「(令和6年度版)税務ハンドブック」でも、p201で、課税仕入れのまとめのところで、この基本通達の内容を要約して丸ごと記載している。