5年前の年度だけ課税売上高が1千万円超だったときに簡易課税適用申請を出していた会社がインボイス登録申請時に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出し忘れても、直ちに2割特例の適用は否定されない根拠は?

問題の所在

以下の事例で、2割特例が適用可能か否か?

・3月決算の会社。

・過去に、令和4年3月期の基準年度(=令和2年3月期)の課税売上だけが1千万円超になり、「消費税課税事業者届出書」「消費税簡易課税制度選択届出届」を提出し、令和4年3月期だけ消費税等の申告・納税をした。
→ それ以外の年度の課税売上高は全て1千万円未満のため、自動的に免税事業者。

・インボイス登録申請済で令和6年3月期の下半期(=令和5年10月1日以降)課税事業者であるが、その申請の際、これだけ提出しただけ(=「消費税課税事業者選択不適用届出書」は不提出)

・「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出」は不提出。。。

観念的には、令和6年3月期の上半期も課税事業者の状態が継続しているが、、、

 

結論

「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出」は不提出でも大丈夫!

 

理由

そもそも、「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出」をわざわざ都度提出しないが (^^)、今回のインボイスQ&A等の中で、これを要件とする明文の規定はないため。

具体的には以下の記事から判断する:

 

2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

(以下、一部抜粋。太字や着色は筆者加筆)

(2)  2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になられた方対象です。
したがって、基準期間における課税売上高が1千万円を超える事業者の方、資本金1千万円以上の新設法人、調整対象固定資産や高額特定資産を取得して仕入税額控除を行った事業者の方等、インボイス発行事業者の登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合や、課税期間を1カ月又は3カ月に短縮する特例の適用を受ける場合などについては、2割特例の対象とはなりません
なお、2割特例の適用ができない課税期間の詳細については、インボイスQ&A≪2割特例の適用ができない課税期間①≫(PDF/305KB)及び≪2割特例の適用ができない課税期間②≫(PDF/309KB)を参照してください。

(注1) 「基準期間」とは、個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。

(注2) 「事業者免税点制度」とは、基準期間における課税売上高が1千万円以下であることにより事業者の納税義務が免除される制度のことをいいます(消法9①)。これにより、納税義務が免除される事業者を免税事業者といいます。

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当事例では、

・上の赤字に該当している。

・上の青字には該当しない。

ため、2割特例に該当すると判断する。

 

念のため細部を確認するに、上の中の 問115≪2割特例の適用ができない課税期間①≫ は以下:

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

(以下、一部抜粋。なお太字は筆者加筆)

(2割特例の適用ができない課税期間①)

問 115 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)は、基準期間の課税売上高
が1千万円を超える課税期間などについては適用できないとのことですが、具体的に教えて
ください。【令和5年4月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
2割特例は、適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属
する各課税期間において、免税事業者(「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった免
税事業者を含みます※。)が適格請求書発行事業者となる場合に適用することができます(28年
改正法附則51の2①)。
ただし、以下の課税期間については、2割特例の適用を受けることはできません。
※ 適格請求書等保存方式の開始前である令和5年9月30日以前の期間を含む申告について
は、2割特例の適用はありません。詳細については、問116《2割特例の適用ができない
課税期間②》をご参照ください。

(途中、筆者省略)

【過去の売上が一定金額以上ある場合】
② 基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間(消法9①)
③ 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適
用が制限される課税期間(消法9の2①)
④ 相続(注1)・合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の
適用が制限される課税期間(消法10、11、12)
(注)1 相続のあった課税期間について、当該相続により事業者免税点制度の適用が制
限される場合であっても、適格請求書発行事業者の登録が相続日以前であり、他
の2割特例の適用が制限される課税期間でなければ、2割特例の適用を受けるこ
とができます(28年改正法附則51の2①三)

(以下、筆者省略)

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当事例との関係では上の②が一見、問題となりうるが、当事例では令和6年10月1日以降の下期の基準年度=令和4年3月期の課税売上高は、上述の通り1千万円未満であるので該当しないと判断する。

次に、上の中のリンク先の②は以下のQ&Aであるが、これは、「免税事業者(「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった免税事業者を含みます。)が適格請求書発行事業者となる場合に適用することができることを解説しているので、当事例と無関係である:

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/116.pdf

(以下、一部抜粋)

(2割特例の適用ができない課税期間②)

問 116 課税選択届出書の提出により納税義務の免除が制限されている場合であっても小規模事
業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けられない場合があるとのこ
とですが教えてください。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
2割特例は、適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属
する各課税期間において、免税事業者(「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった免
税事業者を含みます。)が適格請求書発行事業者となる場合に適用することができます(28年改
正法附則51の2①)。

一方で、令和5年10月1日より前から「課税選択届出書」の提出により引き続き課税事業者
となる同日を含む課税期間※、つまり、適格請求書等保存方式の開始前である令和5年9月30
日以前の期間を含む課税期間の申告については、2割特例の適用を受けることはできません(28
年改正法附則51の2①一)。

※ 適格請求書発行事業者の登録申請書を提出した事業者であって、「課税選択届出書」の提出
により令和5年10月1日を含む課税期間の初日から課税事業者となる事業者(注)については、
当該課税期間中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することにより、「課税選
択届出書」を失効させることができます(28年改正法附則51の2⑤)。
 この場合、当該登録申請書の提出により、適格請求書発行事業者となった場合においては、
登録日から課税事業者となり、当該課税事業者となった課税期間から2割特例を適用できる
こととなります。
 なお、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない場合であっても、令和5年10月
1日を含む課税期間の翌課税期間以後については、基準期間の課税売上高が1千万円以下で
ある場合には、問115≪2割特例の適用ができない課税期間①≫の課税期間に該当しない限
り、2割特例を適用することができます。

(注) 上記の「「課税選択届出書」の提出により令和5年10月1日を含む課税期間の初日か
ら課税事業者となる事業者」とは、当該課税期間から初めて課税事業者となる事業者
をいうのであり、「課税選択届出書」の提出により令和5年10月1日を含む課税期間よ
り前の課税期間から課税事業者となっていた事業者は、該当しません。そのため、対
象外となる事業者においては、令和5年10月1日を含む課税期間中に「消費税課税事
業者選択不適用届出書」を提出したとしても、当該課税期間につき「消費税課税事業
者選択届出書」を失効させることはできません。また、結果として当該課税期間にお
いては2割特例を適用できないこととなります。

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補足

なお以下の書籍のp382にも、上の結論と同主旨のことが明記されていた!(^^)