「賃貸アパートの一室を、オーナーの自宅から貸室に変更工事した場合の、旧畳の撤去費用」は修繕費に計上できないと判断する理由は?

問題の所在

以下の事例で、いわゆる資本的支出か修繕費支出かの判断:

・オーナーは生前、世田谷区赤堤に1棟の賃貸アパートを所有し、その1室を自宅としてずっと住んでいた。

・この物件は、元々はオーナーの家族で住んでいたのを、世田谷区下馬へ別の自宅を建設した際に、リフォームして賃貸アパートへ変更した。

・オーナーが亡くなり、その賃貸アパートはオーナーの長女が相続し、生前のオーナーの部屋をリフォームし、賃室として使用開始。

(・したがって当該部屋は、オーナーが亡くならない限り、そのまま使用に供していた。)

・当該リフォーム台は約400万円。

 

一般論で、「賃室からオーナーの自宅へのリフォーム」であれば、高級化の付加価値を付けた工事にする気がするが、今回のように、元々オーナーの部屋を貸室へ変更する際には、高級化の付加価値をつけることはしない。

しかし、用途変更は、一般論では用途を変えることで利用される、利用が延長される、それが価値である、と解される(そう)。

そのため、基本通達7-8-1で、用途変更の支出に係る支出は、基本的には資本的支出に該当し、資産計上するとされており、今回の事例でも同様であることには争いはない。

 

ただし、以下の引用の太字部分であるが、うち太赤字部分の反対解釈により、「に間接に要した費用の額、例えば、旧資産の撤去費等」は修繕費に計上できるとも考えられるが、さて?

(以下、引用)

第8節 資本的支出と修繕費

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm

(以下、一部抜粋)

7-8-1 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」により追加)

(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額

(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額

(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額

(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

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この点に関し、なんとか修繕費で切り出せないかと工事契約書を見ると、

① 旧畳の撤去費用

② 新畳の設置費用

があり、①が該当する気がするのだが、、、、

 

結論

この事例の旧畳の撤去費等は修繕費a/cに計上できない(→したがって、リフォーム代が丸々、建物a/cに計上される、と判断する。

 

理由

以下の書籍が参考になる。

まず、どのテーマの範疇になるかであるが、p559以降の(取替費用)ではなく、p592以降の(用途変更)の範疇と考える。

次に、

p597、「2-58 賃借店舗の内装を全面改装した場合の処理」で、

当初の洋風レストランの木造内装部分について、「~、全面的に模様替えが行われるわけですから、未償却残高として残っていれば、除却損として経理処理することができましょう。」とあるが、当事例の場合には旧畳の残高は簿外のためムリ。

次に、

p596、「2-57 賃貸ビルを事務所用から飲食店用に用途変更する費用の取扱い」で、

内壁や外壁の張替えや塗替えについて、「しかし、内壁や外壁の張替えや塗替えも、事務所用から飲食店用に用途変更することを起因として行われるものですから、用途変更という目的に包含されるといえましょう。したがって、全体の用途変更の費用から内壁や外壁の張替えや塗替えのための費用を取り出して、修繕費とすることはできないものと考えます。」とあり、参考になる。

これを当事例に当てはめると、

・旧畳の撤去も、用途変更という目的に包含されること、

・用途変更の規制の趣旨からも、旧畳の撤去費用は通達の文言の「直接に要する費用」に該当すると判断することが穏当なこと、

と判断する。

 

補足

このケースでは少額なため、リスクを取らないで、上の論理解釈で済。

ただ、もっと高額だと、事例を探して修繕費a/cで計上する道を探るのだろうなー (^^)