「(相続人A、B、Cのうち)一切の財産をBとCに各1/2の割合で相続させる」旨の遺言があるが、申告期限までに、当該2名の間で遺産分割が未了の場合、申告は未分割の分割になる理由は?

問題の所在

以下の事例を検討する:

・夫と妻と娘2名。被相続人は妻。相続人は夫と娘2名。

・夫と妻が世田谷区内に、自宅とアパート物件(貸家建付地、土地と建物)を、各々、共有で保有していた。

・自宅及びアパート物件ともに銀行借入金がある。元本は、夫婦で持分割合である。

・自宅もアパートも銀行借入金の残高が、向こう4年ほど残っている。

・銀行借入金の自宅分については、夫が妻分も合計して返済してきている。

・生前、妻は、夫の預金口座から自分の口座へ勝手に送金した(約3千万円)。

・生前、妻はアルコール依存症で夫に対して損害賠償請求500万円で裁判中であったが、上述の通りそれを大きく超過する債務があり、裁判は夫が有利に進んでいたが、原告死亡で結審している。

・遺言書があり、一切の財産を娘二人に半分ずつ相続する旨である。

・夫の遺留分は(別の記事で検討した通り)25%である。

・夫は自宅の被相続人の持分(+銀行借入金)を相続することを希望しているが、(相続税評価額ではなく)公示価格等の時価ベースだと、約48%と試算されている。

・遺産分割協議上、娘2人は、夫(父)に対し、は、自宅の土地建物を相続財産とする場合、代償分割で現預金3千万円を要求した。

・上の要求を父は拒否し、もしも遺言通りに処理する場合、上の妻への債権を相続人(娘2名)に請求すると主張している。

・上の経緯などもあり、娘2人の間での遺産分割は、協議を進める時間がなく、未了である。

以上の膠着状態で相続税の申告をする場合、

・遺言の内容通りの申告

・いわゆる未分割の分割の申告

のいずれか?

 

結論

未分割の分割。

 

理由

少なくとも、

>・上の経緯などもあり、娘2人の間での遺産分割は未了である。

のため。

 

補足

未分割の申告の場合、通常の期限内申告の特典である、

・配偶者の税額控除

・小規模宅地等の特例

が、当初申告時には適用できない。