税理士業務用)「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」の意義は?

問題の所在

「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」について、理解を整理する。

結論

以下の3つ:

① いわゆる住宅ローン控除の期間は、海外赴任の間が「停止させられ」、帰国後も「切り捨てられる」

② 海外赴任中に、自宅を賃貸に出した場合、上の①の停止期間は、賃貸人が退居した日まで、「伸ばされる」

③ 上の①②だけでも辛いところ、そもそもこの届を、海外赴任で出国する前の日付で税務署に提出しておかないと、住宅ローン控除の期間は、出国日で「強制終了」。つまり①②さえも失う。

 

理由

海外勤務をされるくらいなので、自宅を所有する方が少なくないが、

特に金融機関からの借入で自宅等を購入されている場合、いわゆる住宅ローン控除を適用しているが、

海外赴任 → 当たり前だが、自宅に居住しない → その間は、住宅ローン控除の「引き続き居住する」の要件を満たさないが、、、、満たさないので、住宅ローン控除の適用が停止される!

(私見では、住宅ローン控除の制度主旨から考えると、海外赴任の間も認めていい気もするが、脱法行為に悪用されるリスクがあるのであろう)

これを徹底すると、一度でも海外赴任した瞬間に、「引き続き居住する」はストっプし、したがって残余期間の住宅ローン控除のは失効するが、それでは、(住宅を購入しようとする所得層=それは海外赴任などする人種と結構重なる蓋然性がある)が、住宅を購入しようとするモチベーションが低下する、慎重になることから、

あくまで海外赴任の間だけ停止し、

帰国後に、そこから残りの期間分は、住宅ローン控除を認めるものである。

 

また、海外赴任の間、賃貸に出す人は少なくない(国内の転勤の間でさえも、自宅を賃貸に出す人は少なくない)

なお、海外赴任の間、自宅を賃貸に出す方は多いが、例えば、

・出国は、令和4年4月1日

・帰国は、令和7年3月31日

・賃貸期間のエンドは、令和7年9月30日

とすると、

ご本人の、住宅ローン控除の開始日は、「令和7年9月30日」としている。

実際の帰国日は3月31日であっても、そこから9月30日までの半年は事実として居住していないのだから、仕方ない。

補足

仮の話で、

・この届を出さず、

・自宅を「住居用」で賃貸に出し、本人も不動産所得の申告もしない、

としても、

・不動産所得について納税もなく、申告書作成のために税理士へ報酬も払う必要もなく、

・住宅ローン控除の期間も途中停止しないので、ローンの繰り上げ返済も躊躇がない、

(・実際、賃借人は自宅用であれば、支払家賃について税務署へ申告するものもないので、賃貸人の無申告が発覚するリスクも僅少であろう)

(・この不動産所得を隠ぺいしたとしても、遠い、相続税の申告時にこの財産分が簿外財産として認定されるリスクは少ないし、そのころはもう時効)

という点で「メリット」があることになる。