前年の所得税の確定申告に上場株式等の譲渡損失を折り込まず、今年、譲渡利益が生じたので、前年の確定申告の更正の請求とセットで損益通算をするのはダメ？
問題の所在
お客様の事例で、
今年、上場会社株式等の譲渡利益が生じ、他方で、前年の所得税の確定申告に上場株式等の譲渡損失だったそうなので、前年の確定申告の更正の請求とセットで、損益通算をしようと企図し、調べたら、このお客様の場合にはダメだった。その備忘メモ。
結論
以下の場合には、更正の請求は認められない：
・前年、（年末調整ではなく）確定申告
・特定口座
・源泉徴収 有 を選択
参考記事は以下の４つ：
株で損したら確定申告すべき！ 損益通算と繰越控除で“節税”する方法
Ｑ 2019年中に上場株式等を売却し譲渡損失が生じましたが、2019年分の確定申告を失念しました。その失念した譲渡損失の繰越控除について、2020年分の確定申告で適用を受けることはできますか
https://faq.mizuho-sc.com/faq/show/2909?site_domain=default
申告し忘れた過去の上場株式等の譲渡損失の申告
Q 一昨年株式等の譲渡損がありましたが損失の繰越控除をしていません。これから一昨年分の譲渡損を申告することはできますか？
https://faq.sc.mufg.jp/faq/show/2243?category_id=97&site_domain=default
理由
特記事項なし
補足
この点の理解が曖昧であったが、ググるとたくさんヒットするので、典型論点なのであろう。
なお、このお客様については以下の事情があった：
① 従来、みずほ証券と大和証券で、「特定口座、源泉徴収 有」で株式投資を行ってきた。
② 令和元年度に、みずほ証券の口座で譲渡損失が生じたが、みずほ証券の担当者から、「将来の譲渡利益と相殺可能なように、今年、確定申告をしておくとベター」の旨の助言はなく、本人も、気にしていなかった。
③ 令和2年度に、大和証券の口座で譲渡損失が生じたが、大和証券の担当者から、「将来の譲渡利益と相殺可能なように、今年、確定申告をしておくとベター」の旨の助言はなく、本人も、気にしていなかった。
④ 令和3年度に、今年、譲渡し利益が確定したところで、某大和証券の担当者から、「いやー、利益がでてよかったですね。なお、昨年の損と通算できますから、確定申告してください」と助言を受けた。
⑤ 本人は、一人親方の法人成り会社の社長の奥様であり、３０年以上、ずっと経理を担当されていた。毎年、年末調整で終わらせるべきところ、なぜか、ずっと、確定申告でやってきていた。
⑥ 当社は令和2年度末に解散、令和3年8月に清算。当事務所は当社の解散・清算を受嘱し、その中で、上の、実質、年末調整である確定申告を、令和2年度、行った。いわゆる年末調整の意味での確定申告をサービスで実施した。
⑦ その際、年末調整の要提出資料リストをお見せし、上の確定申告も、令和元年度を踏襲して、給与所得の年末調整に、生命保険控除、障碍者控除、医療費控除等をオンしただけだった。
⑧ その際、奥様が株取引をしていることは知らず、令和2年度の確定申告に、大和証券分の譲渡損失をオンできなかった。
上の例では、「所得税の確定申告の依頼」の形から入れば、上場株式等の譲渡損失のトピックに話がいったと思うが、「解散期の年末調整のつもりの、所得税の確定申告」の形から入ったので、上場株式等の譲渡に話が広がらなかった。
お客様はご納得いただいたが、今後は、意外と特定口座で運用されている方はいらっしゃるので、留意したい。
（しかし、一見のお客様は、網羅性リスクがあるなあ）
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