住宅取得等資金の非課税の特例は、2年に分けて贈与をもらったら前の分は不適用?
問題の所在
以下の事例:
・土地を購入し、その土地に自宅を建てるお客様。
・令和7年9月に土地の決済を行い、来年7月に建物が完成する予定で同8月決済予定。
・住宅購入にあたり、土地はご主人様名義で購入、建物はご夫妻の共有名義で取得予定。
・資金は住宅ローンの利用と「奥様のご両親から1,000万円の贈与」を受けて建築費用に充てるため、「住宅取得等資金の非課税の特例」を利用する予定。
・当初は、来年の建物の決済時に奥様両親から一括で贈与を受けて支払いをする予定でしたが、 土地の決済時に一部(200万円)を先行して贈与を受けて、残りの800万円を来年の建物決済時に贈与を受ける計画になった。
・このように、贈与を受けるタイミングが今年(土地決済時)と来年(建物決済時)にまたがる場合は、来年の贈与分のみが非課税の特例の対象になるのでしょうか? 今年の分と来年分を合わせて、申告等の手続きを行うことは可能なのでしょうか?
・もしならない場合は。今年贈与を受ける200万円のうち、110万円の年間非課税枠を差し引いた90万円には贈与税が課せられるのでしょうか?
結論
・200万円の方は、「住宅取得等資金の非課税の特例」を適用できない、
・したがって、今年贈与を受ける200万円のうち、110万円の年間非課税枠を差し引いた90万円には贈与税が課せられる。
理由
・住宅取得等資金贈与の非課税制度の要件(条件)の一つに、
”贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅を新築や取得していること”(=贈与年の翌年3月15日までに、住宅用家屋の引渡し等を受けること)
というものがあるため。
・先に、令和8年8月に贈与を受けた800万円は、令和8年8月には引き渡しが終わっていますでしょうから、
令和8年度の確定申告(=令和9年3月15日までに申告)で住宅取得等資金贈与の非課税を適用できる、と考えます。
・他方、令和7年9月に贈与を受けた200万円は、令和7年度の確定申告(=令和9年3月15日までに申告)で住宅取得等資金贈与の非課税を適用したいですが、この時点で引き渡しが未済なので、
令和7年度の確定申告(=令和8年3月15日までに申告)で住宅取得等資金贈与の非課税を適用するのは無理、と考えます。
・したがって、今年贈与を受ける200万円のうち、110万円の年間非課税枠を差し引いた90万円には贈与税が課せられると考えます。
補足
以下の記事が大変参考になる:
住宅取得等資金贈与の非課税はまだするな!デメリットあり【2024年延長】
(以下、一部抜粋)
失敗例2 贈与のタイミングを早まった
最も多いトラブルが、贈与のタイミングを誤ったことによって、特例が使えなくなってしまうケースです。
住宅取得等資金贈与の非課税制度の要件(条件)の一つに、”贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅を新築や取得していること”というものがあります。
“新築”とは、注文戸建て住宅を想定しており、3月15日までに完成引渡しまでは済んでいなくても、屋根(骨組みを含む)が有り、土地に定着した建造物として認められる状態であればOKとされています。
一方で、“取得”とは新築マンション、中古物件、戸建ての建売住宅を想定しており、先ほどとは異なり、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、完成引渡しを受けていないとダメなのです。
特にミスが起こりやすいのが、新築マンション。
新築マンションは、売買契約日と引渡日までの期間が非常に長くなります。
例
X1年11月:親から1000万の贈与を受ける
X1年12月:売買契約締結、上記1000万を支払う
X2年5月:マンションの完成引渡し
上記のようなケースだと、贈与を受けた年(X1)の翌年3月15日までに完成引渡しを受けていないため、住宅取得等資金贈与の非課税が使えません。
この方の場合は、X2年の1月に入ってから贈与を受けていれば、X3年3月15日までに完成引渡しを受けているので、問題なく特例が使えたことになります。
一般的に、新築マンションの代金は、契約時に頭金を、引き渡しの直前に残金を支払う形が多いかと思います。
贈与のタイミングによってミスが起きないよう、引き渡し直前の残金に充てる目的で贈与を受けるのが無難でしょう。住宅ローンと併用で購入を検討している方は、ここまで見越したうえで、ローンの準備をしておきたいですね。
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