E社様用)【2025/5/26円換算の単純ミスの訂正】国内LPSの投資先の、米国の不動産ファンドのForm 1402-Sを入手したときの仕訳は?
問題の所在
以下の事例:
・当社は3月決算である。IT企業であるが、投資に熱心である。
・当社は、米国の不動産ファンドに投資する国内の資事業優先責任組合(LPS)に投資している。
★カネの流れは、「LPS→米国の専用ファンド→米国の投資ビークル→米国の不動産ファンド各種」。
・LPSに関与する日本の会計事務所から、組合財産分配通知書を半年ごと受領する。
・そこでは控除されている外国税額控除額は見込みであり、法人税基本通達16-3-6に従い仮払金a/cで計上し、その後に、Form1042-Sを受領してそこに記載されている外国税額の確定金額を、計上済の仮払金に置き換えて、外国税額を確定させることになると考える。
↓
では、この確定金額(18,905米ドル)に適用する為替レートは? 通達16-3-6中にも明示なしである。
・受領済の組合財産分配通知書の(注2)にも上と同様の説明書きがあるが、適用すべき為替レートには触れていない。(この点は後述の補足でコメント予定)
・(LPSが投資し、その投資先が不動産ファンド各種へ投資する、その)不動産ファンド各種の決算日は不明である。
・当社が使用する為替レートは、換算日($→円の振替日)のみずほ銀行のTTB、である。 ★法人税基本通達13の2-1-2が許容する概算為替レートは不使用である。
結論
前後を含め以下:
1)令和6年1月から6月の間の、組合財産分配通知書上の、貴法人外国税額控除額は 9,162 USD、右上の作成日の為替レートTTBは 151.05円/ドル。
2)令和6年7月から12月の間の、組合財産分配通知書上の、貴法人外国税額控除額は 9,816 USD、右上の作成日の為替レートTTBは 145.00円/ドル。
3)令和7年5月に普通郵便で到着した、Form 1402-S 上の 「10 Total withholding credit は 18905 ★カンマくらい記載せんか (^^)
↓
外国税額控除に関連する各仕訳は、以下の通り:
1)の仕訳の仮払金a/c: 9,162 USD × 151.05 円/USD =1,383,920 円
2)の仕訳の仮払金a/c: 9,846 USD × 145.00 円/USD =1,427,670 円
3)の仕訳:
【参考:USDベース】
(借)法人税等 18,905 USD (貸)仮払金 19,008 USD
(借)組合投資他費用 103 USD
↓ 円ベースで以下;
(借)法人税等 2,796,655円(注3) (貸)仮払金 2,811,590円(注1)
(借)組合投資他費用 14,935円(注2)
(注1)
分配通知書の2通に記載の、9,162 USD と 9,816 USD の計 19,008 USD分。
ゆえに、既円貨の、1,383,920 円 + 1,427,670 円 = 2,811,590円
(注2)
USDベースで、仮払金a/cの合計は 19,008 USD。他方、Form 1402-S 上の 「10 Total withholding credit は 18905 USD 。
ゆえに差し引き借方残 103 USD。
これに適用する為替レートの定めはないが、Form 1402-S の作成日に近い為替レートで、145.00 USD を選択。
★つまりこの時点での取引からは為替差損益a/cは生じない。
ゆえに、103 USD × 145.00円/USD = 14,935円
(注3)
以上の貸借差額。
理由
まず、以下の通達が参考になる:
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/16/16_03_05a.htm
(以下、一部抜粋。青字は引用者着色)
(外国法人税の換算)
16-3-47 法第69条《外国税額の控除》の規定を適用する場合の外国法人税の額については、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げる外国為替の売買相場(13の2-1-3《多通貨会計を採用している場合の外貨建取引の換算》の適用を受ける場合の相場を含む。以下16-3-47において「為替相場」という。)により換算した円換算額による。(昭50年直法2-21「33」により追加、昭54年直法2-31「八」、昭58年直法2-3「六」、平2年直法2-1「十三」、平10年課法2-7「二十二」、平12年課法2-7「二十三」、平12年課法2-19「十七」、平14年課法2-1「四十」、平15年課法2-7「五十七」、平21年課法2-5「十七」、平26課法2-9「四」、令4年課法2-14「五十八」により改正)
(1) 源泉徴収に係る外国法人税((3)に該当するものを除く。) 次の区分に応じ、それぞれ次に掲げる為替相場
イ 利子、配当等を収益に計上すべき日の属する事業年度終了の日までに当該利子、配当等に対して課された外国法人税(次のロに該当するものを除く。)は、当該利子、配当等の額の換算に適用する為替相場(一の計算期間に係る利子を2以上の事業年度にわたって収益に計上する場合には、当該2以上の事業年度のうちその外国法人税を課された日の属する事業年度に係る利子の額の換算に適用する為替相場)
ロ 利子、配当等に課された外国法人税でその課された日の属する事業年度において費用(仮払経理を含む。以下16-3-47において同じ。)の額として計上するものは、その費用の額の換算に適用する為替相場
(2) 国内から送金する外国法人税((3)に該当するものを除く。) その納付すべきことが確定した日の属する事業年度において外貨建ての取引に係る費用の額として計上する金額の換算に適用する為替相場
(3) 国外事業所等において納付する外国法人税 その納付すべきことが確定した日の属する事業年度の本支店合併損益計算書の作成の基準とする為替相場
(4) 租税条約により納付したものとみなされる外国法人税 その外国法人税を納付したものとした場合に適用すべき(1)から(3)までに掲げる為替相場
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↓
今回の取引は、上のロ。
つまり今回の取引は、期末換算でもなく、決済取引でもないと考える。
ゆえに、為替差損益a/cは生じないと考える。
また、上の103 USDへ適用する為替レート145.00円/USD について付言すると、
・理論的には、Form 1402-S に関連した日付(例 当社が受領した日など)がベターであることは承知するが、、、
・じゃあ、郵送の際の封筒に郵便局が押印した日だとしたら、その封筒を保存しておくのか? そうでないなら自己申告になるので恣意性が介在することになる点でイマイチ、、、、
・じゃあ、財産分配通知書が到着した日にしよう、しかも2回あるのなら、Form 1402-S の到着に近い日の方がまだマシか、、、、
、、、程度の話。
補足
実はこの事例を、JICPA租税相談室に相談し、丁寧なコメントをいただいたのですが、弊質問の仕方が要領を得なかったのか、事例に沿ったダイレクトな回答を聞きそこなったため、回答のポイントは借用させていただいたが、全体的には私見である。
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なお、以下の書籍の、基本通達16-3-47を解説(引用?)しているp132の末尾に、
(注)減額された外国法人税の額は、通常、その減額された日の属する外貨建取引に係る収益の額として計上する金額の円換算に適用する為替相場になる。
という記述があるが、これは、「当て込む為替レートの選択上、税金は直感的に費用サイドであるが、(還付等の)減額分は費用マイナスというよりはもう収益とみなすよね」という主旨と推定する。
→ 今回の事例でも、外国法人税は、19,008 USDから 18,905 USDへ 103 USDだけ減額されているが、この減額は還付の類ではない。そもそも「その減額された日」が不明なので、次善の策として、「Form 1402-S の作成日に近い為替レート」で、140.00 USD を適用した。
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なお、上の「問題の所在」の中の、
>・受領済の組合財産分配通知書の(注2)にも上と同様の説明書きがあるが、適用すべき為替レートには触れていない。(この点は後述の補足でコメント予定)
について付言すると、この(注2)の文言は、要するに、「分配通知書の2通に記載の、9,162 USD と 9,816 USD は、概算金額であるので、Form 1402-S に記載のある 18905 usd で計算してください」の旨であり、USDベースで確定額で計算するルールだと示唆しているものであると解する。
つまり、基本通達16-3-6の規定を示唆しているだけのものであり、通貨換算についての話は含まれていないと解する。
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