【2025/2/28追記】M様用)国内の投資事業有限責任組合への出資(有限責任組合員)の受取配当金の仕訳は?

問題の所在

以下の事例:

・上場会社の100%子会社(非上場) ★金商法監査対象

・3月決算

・前年末(2024年2月13日)にしれっと投資事業有限責任組合(以下「LPS」という)にジャスト1億円、出資した。

・当該LPSの計算期間は、12/1から11/30。

・2025/2/28付けで、以下のものが郵送されてきた:

●組合財産分配通知書(2枚)

●通期報告書 組合員別貸借対照表、組合員別損益計算書、

●課税仕入れ取引に係る立替金精算書
(支払先:当該LPS、勘定科目名:組合管理報酬、金額(税抜き):338、183円、消費税額33,817円)

★未払金a/c計上分が課税仕入れ

●LPS全体の計算書類と監査報告書

 

結論

このLPSに限れば、以下の通り:

(借)普通預金  2,461,877
@@@法人税等    727,164
@@@LPS費用   338,181
@@@仮払消費税等   33,818

(貸)受取配当金 3,561,041

 

理由

論点が多岐にわたるため、以下、個別に記載する:

 

論点1 法人税基本通達14-1-1(帰属自体)

・そもそも、普通の株式投資の場合であれば、会社利益-課税①-税引利益から配当支払い、

・しかし、LPSの場合には、LPS利益-課税なし-税引利益から配当支払い、

と変わる。ここから、いわゆるパススルー課税が導かれる。

だから、突き詰めると、(単体決算なのだが)当社のTBとLPSのTBを連結決算をするようなニュアンス(あくまでニュアンス)。

だから売上a/cで計上したいくらい! でもしょせん配当目的の投資なので、受取配当金a/cで計上する。。。

ということは、連結会計で言う持分法相当額の金額が当社に帰属することになる(以下「」という)

 

なお、以下の名著によれば、この通達の(注)で、

(注) 任意組合等とは、民法第667条第1項に規定する組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項に規定する有限責任事業組合契約により成立する組合並びに外国におけるこれらに類するものをいう。以下14-1-2までにおいて同じ。

とあることから、投資事業有限責任組合(=LPS)は、通達上、「任意組合等」に含まれると整理された、と解説がある:

 

論点2 法人税基本通達14-1-1の2(組合事業から受ける利益等の帰属の時期)

当事例のLPSの場合には、

①当LPSの計算期間のエンドが 2024/11/30 で、

②通知が 2025/2/28 で、

③当社の会計期間のエンドが 2025/3/31。

→ だから都合、①<②<③が成立しているので、好運にも、特段の調整は不要。

さらに、分配通知書の作成日付が 2025/2/28 で、支払予定日も同じ 2025/2/28

→ だから、仮受金a/cで計上の要否等の特段の調整が、好運にも不要。

 

論点3 法人税基本通達14-1-2(組合事業から受ける利益等の計算)

以下の記事を参照:

法人税基本通達14-1-2の読み方は?

 

論点4 法人税基本通達14-1-3(匿名組合契約に係る損益)

通常では、受取配当金の認識・計上は、配当の分配時(支払い後)。

しかし、LPSでは、上のを重視(徹底)すると、LPSからの配当の確定時(支払い前)に計上することになる。

この点に関し、当事例は、配当の確定日と支払予定日がともに、2025/2/28となっているので、この点を気にする必要はない。

なお、上のから、この受取配当金の金額自体は全額を益金に計上する(=換言すると益金不算入にカウントしない)ことにもなる。

 

論点5 当社の受取配当金の金額

今回のLPSの配当金の計算は、組合財産分配通知書の「1)期中配当予定額」に、「1億円×4%×保有期間(日数)」の計算式が記載されている。

受取配当金の金額は、通常の株式投資のそれであれば、配当基準日時点で保有する株式(いわゆる権利株)の保有株数と配当還元率を乗じた金額で算出されるので、違和感はない。

 

論点6 匿名組合等の利益の分配に係る、居住者又は国内法人に対する源泉徴収

(法人税でもなく消費税でもなく)匿名組合契約等の利益の分配に関する源泉徴収については、平成20年1/1以降の匿名組合等の源泉所得税の扱い(=所得税法210条、所得税法施行令288条、327条)に従った計算になっている。

具体的には、配当金額に対し、復興税をオンした20.42%の源泉徴収を受ける。それを法人税も追認している(以下の論点7へ)

 

論点7 源泉所得税の月割り計算

まず、配当金に係る源泉所得税の計算のルールを確認する。

法人税上、源泉所得税の計算は月割り計算である(法人税施行令142条の2第1項第6号)。

他方、当事例の組合財産分派通知書の4)差引源泉税明細、をみると、あたかも日割り計算をしているように見える、、、、がそうではないと考える。

まず、上のパススルー課税、から、「受取配当金をもらう側」から「受取配当金を払う側」へ発想を変える。そうすると、組合財産分配通知書の、「2)貴法人組合財産分配金額」の(注)のなお書きの、

「なお、貴法人に帰属する源泉徴収税額については、4)差引源泉明細に記載されている本投資証券等の利益の分配に係る源泉徴収税額本組合に対する貴法人の持分割合を乗じた金額となっております。」

の読み方は、

・赤字の部分で、LPS全体での一本の源泉所得税を計算する際に、月割り計算を経て算出するところ、上のパススルー課税、から、払う側からはみっしり12ヶ月/12ヶ月と計算しているハズで、

・青字の部分で、各有限責任組合員ごとに合理的に按分計算するために、(税法の規定ベースではなく)保有日数ベースで算出している、

と解する。

 

論点8 仮払消費税の取り込み

仕訳作成の考え方は以下:

1)まず、受取配当金だけ考えるなら以下:

(借)普通預金  2,461,877

(貸)受取配当金 2,461,877

2)このLPSでは、上述の通り、①総額方式、が取れるので、法人税での所得税額控除が取れるため、以下:

(借)普通預金 2,461,877
@@@法人税等   727,164

(貸)受取配当金 2,461,877
@@@受取配当金   727,164

3)さらに、消費税の仕入税額控除も取れるハズなので、

(借)普通預金  2,461,877
@@@法人税等    727,164
@@@組合管理報酬  338,181
@@@仮払消費税等   33,818

(貸)受取配当金     2,461,877
@@@受取配当金       727,164
@@@未払金(未払消費税等) 372,000

4)上の仕訳を純化すると以下。結果的には、上の②中間方式を、仕訳で体現したような形になる:

(借)普通預金  2,461,877
@@@法人税等    727,164
@@@LPS費用   338,181
@@@仮払消費税等   33,818

(貸)受取配当金 3,561,041

 

【未払金a/cと受取配当金a/c】

再言であるが、この仕訳での受取配当金a/cは、法人税上は「全額」益金算入。他方、LPS費用a/cは当然、全額損金算入。

かつ、受取配当金は、(法人税上ではなく)消費税上は、通常通り、不課税売上。

だから、未払金a/cを受取配当金a/cに置き換えるても、
・会計上及び法人税法上、372千円が損益ニュートラルになり、
・消費税上も、会計ソフトのデフォルトの設定でそのまま仕入税額控除を取る仕訳になっており、
・また未払消費税等a/cを使わずに済むので、見栄え上、都合がよい。

【組合管理報酬a/cとLPS費用a/c】

組合管理報酬a/cは、LPS自体から見た科目名称。一組合員の当社の立場からは、LPS費用a/cの方がしっくりくる。

 

補足

上の論点8は、連結会計の持分法を通常の連結に戻すような変な仕訳だが、理屈で考えるとこうなる。

ちなみに、ググったところ、この仕訳を明確に記載している記事はなく、せいぜい以下のリンク先の記事で触れられている程度:

コンテンツ・プロデュース機能の基盤強化に関する調査研究会計・税務

https://producerhub.net/library/337.pdf

(以下、一部抜粋)

⑤「消費税の扱い」
組合が事業を行う場合、組合で消費税相当額を支払ったり、受け取ること
になる。この処理について2つの考え方がある。
「組合員自体が納税義務者に該当するという考え方」と、「組合は単なる契
約関係であり、組合員が損益分配割合に応じて課税資産の譲渡等を行ったも
のであるという考え方」である。
消費税法基本通達1-3-1において、後者の考えが採用されている。従って、
各組合員の消費税の申告時において、組合で生じた「仮払い消費税」及び
「仮受け消費税」のうち、損益分配割合に応じる部分を取り込む必要がある。
従って、組合の会計報告をする者は、各組合員にこの情報も報告しなければ
ならない。
ただし、組合事業そのものに関わる消費税の納付は、納税義務者である各
構成員が連帯して納付義務を負うことになる。

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