k様用)子会社株式を譲渡した際の、譲渡益、債権放棄損、口座残高受入益の仕訳と表示は?
問題の所在
以下の事例:
・オーナーが2社、K社とsk社の2社を、ともに100%持分で保有していた。
・オーナー自身はK社の代表取締役であり、9年前に、sk社は部下を名目上の代表取締役にし、経験者のM氏を雇い、実質的に請負で出来高で給与を支払っていた。
・sk社は資本金300万円。警備業であるが、新型コロナ後は利益が出ない、繰越欠損金が生じていたこともあり、ダメ元でMA案件サイトに登録したら、面識のない買い手A社が現れ、以下の条件で合意した:
(0)なお、A社、数年後に関東で開催予定の博覧会に警備業で入札予定であり、sk社が9期存続している点が買収価値である。)
(1)譲渡時に備え、sk株式を、オーナーからK社へ簿価譲渡。つまり譲渡時点では、「K社の保有する子会社株式の譲渡」になる)
2)sk社のBSには、「 sk社へ貸付金a/c 1,704千円」が計上されているが、それは返済不要で合意。ただし契約書で明記はされておらず口頭での合意。
★K社にとって、債権放棄損a/c 1,704千円。
3)売却代金は500万円。全額一括で、K社の普通預金口座へ振り込まれた。
★K社の株式譲渡益=500万円-1,704千円=3,296千円。
4)skの通帳を残高ゼロで引き渡す(=預金口座の残高230千円は全部引き出しておく。ただし契約書で明記はされておらず口頭での合意。
★K社にとって、債権放棄損a/c マイナス230千円。
・なお、K社自体も債務超過状態で繰欠も十分にある。
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以上から、以下の論点が問題となる:
① 債権放棄損a/cは、法人税上、寄附金認定されないか?
寄附金に該当するか否かについては、子会社の財務状況に関し単に赤字体質からの脱却が見通せないというだけでは不十分で、本件債権放棄が経済的合理性の観点から特段の必要性があったとは認め難いと考えられることから、法人税基本通達9-4-1にいう「相当な理由」があったとはいえず、寄附金に該当するものと考えられます。
★再言ですが、K社自体、債務超過で繰越欠損金も2千万円弱あるため、リスクヘッジで寄付金処理してもいいのであるが、、、、一応検討する。
② 債権放棄損a/c、子会社株式売却益a/cは、PL表示上、どこまでまとめるか?
結論
上の①:寄附金の申告調整はしない方針とする。
上の②:債権放棄損a/cと、子会社売却益a/cとに区分して表示する。
理由
まず①については、以下の国税庁の記事が参考になる:
経営権の譲渡に伴う債権放棄による経済的利益の供与
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/13/27.htm
(以下、一部抜粋)
経営権の譲渡に伴う債権放棄による経済的利益の供与は、寄附金ではなく単純損金として認められます。
(理由)
他の企業に経営権を譲渡するような場合、譲受法人としては、その譲受け後における子会社の経営上の責任を考えて、赤字をできるだけ圧縮した上でなければ、譲渡に応じられないという条件を提示することは十分にありうることです。このため、やむを得ず子会社に対する貸付金等の一部を切り捨てたり、新たに資金を投入するなどしてある程度子会社の財政面を改善した上で譲渡するといった事例が見受けられます。
このような貸付金等の切捨てや資金の援助については、親会社として今後発生するであろうより大きな損失を回避するためにやむを得ず行う損失の負担であると認められる場合が少なくありませんので、この損失負担を一概に単純な贈与と決めつけることは適当ではなく、常に寄附金として取り扱うことは実態に即したものとはいえないと考えられます。
したがって、A社が子会社の経営権の譲渡に伴い、やむを得ず債権の放棄等の損失を負担した場合に、それが今後より大きな損失の生ずることを回避するために行われたものであり、かつ、そのことが社会通念上も妥当なものとして認められるような事情にある場合には、税務上もその債権放棄は寄附金として取り扱わないことが適当と考えられます。
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・今回の取引が、上の「それが今後より大きな損失の生ずることを回避するために行われたものであり、かつ、そのことが社会通念上も妥当なものとして認められるような事情にある場合」を満たすか否かが問題となるが、この点は該当すると考える。なぜなら、上で述べたように、オーナーがsk社をこのまま運営しても利益が回復する兆しがない、損失が拡大するリスクがあるので、それを回避するための取引だからである。
・なお契約書上、明文はない点については、包括条項の「この契約書に定めのないときは、当事者が誠意を持って協議する」に紐づければ足りると判断する。
・なお、この点に関し、寄附金認定を肯定する旨の以下の解説もありますが、、、、
https://eytax.jp/pdf/article/2015/kokuzei_sokuhou_20151123.pdf
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次に②であるが、上の①の議論で、債権放棄取引が子会社株式譲渡取引と一体として捉えるも、取引時点が異なるので、債権放棄損a/cと子会社売却益a/cはグロス表示すると考える。
★自己満足で、各々の仕訳の日付が異なるため、各々の原始取引は仮払金a/cで計上し、それを一つに集約する仕訳にはしておく (^o^)。
補足
なお、この事例の派生論点として、
(0)譲渡時に備え、sk株式を、オーナーからK社へ簿価譲渡)
に関し、譲渡所得がゼロでも確定申告をする要否が問題となるが、もちろん不要でok。
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