ISMS更新費用で20万円超(税抜き)の支出は、税法上の繰延資産の扱いにせず、支出時に全額損金計上でOK?
問題の所在
法人の取引で、「ISMS(=ISO27001)更新手数料 596,000円」があり、更新の効果は次の更新まで複数年間続くし、かつ20万円超なので、税法上の繰延資産で、長期前払費用a/cで計上する、、、、
と思ったが念のためググったところ、誤ってヒットしたプライバシーマークとISO19000の支払いについて、
1)ISO19000は、なんと、20万円超でも、支出時に全額損金計上が(許容ではなく)相当!とする国税庁の解説記事にヒットしてビックリ!
2)プライバシーマークは、(マーク使用料の利用期間は2年間だがマックス20万円(税抜き)のため)結論としては全額その期に損金計上、と整理してありビックリ!
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上の1):事業者がISO9000を取得するために審査登録機関に支払う手数料の税務上の取扱いについて
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/20/09.htm
(以下、一部抜粋)
(注) ISO9000は、昭和62年に国際標準化機構(ISO)によって制定された、品質管理及び品質保証に関する一連の国際規格です。その取得は対外取引において好印象と安心感を与えることから、対外取引の上で有効な意義を有しています。
【回答要旨】
いずれの手数料も、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入して差し支えありません。
(理由)
1 ISO9000は法的な権利ではないので、工業所有権には該当しないこと、また、譲渡することができず、超過収益力を生ずるものではないので、営業権にも該当しないこと。
2 ISO9000を取得することは、事業者に品質システムが備わっていることを不特定多数の者に対して広告宣伝する効果を有していることから、その損金性が認められること。
3 損金算入時期については、次の理由からその支出の日の属する事業年度とするのが相当であると認められること。
(1) 審査登録料金
イ 支出によって得られる将来の広告宣伝の効果のためではなく、むしろ、現在の取引関係を維持するために、事業者は審査登録料金を支払っている面もあると考えられること。
ロ 次のことから、広告宣伝の効果がその支出の日以後数年に及ぶものとして、繰延資産として処理することは相当でないこと。
ISO9000の資格を保有し続けるためには、サーベイランス料、登録維持料等の費用負担が審査登録料金の支出後に求められること、また、一定の事由が生じる場合には審査登録証の停止、撤回及び取消しの措置がとられることから、審査登録料金の支出の効果がその支出の日以後数年に及ぶとはいいがたいこと。
審査登録料金の支出によって得られる広告宣伝の効果は、実態としては、ごく短期間のうちに失われるものもあると考えられること。
ハ 本件の支払手数料は、市場の開拓等のために「特別に支出する」ものではないので、法人税法施行令第14条第1項第3号((繰延資産の範囲))に掲げる開発費として処理することは相当でないこと。
(2) 登録後料金のうち、サーベイランス料、登録維持料等
取得後、毎年支払うサーベイランス料、登録維持料等は、認証を受けた事業者が、認証後もISO9000を引き続き保有するために支出するものであり、サーベイランス料、登録維持料等はISO9000の維持費用と考えられること。
(3) 登録後料金のうち、更新審査料
取得後、3年目に支払う更新審査料は、従前と同様の品質システムが備わっていることの認証を得るために支出するものであるので、審査登録料金と同様に考えられること。
【関係法令通達】
法人税法施行令第14条第1項第3号、第6号ホ
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
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上の2)「プライバシーマーク」の使用許諾を受けるまでの費用等の税務上の取扱いについて
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/20/10.htm
(以下、一部抜粋)
- (3) プライバシーマーク付与契約の契約期間は2年間ですが、更新の手続により更に2年間の延長を行うことができます。この延長の手続に当たっては、上記(1)と同様に申請料及び審査料等を、延長が認められた場合には延長期間の使用料として上記(2)と同様にプライバシーマーク使用料をそれぞれ支払うこととなります。
【回答要旨】
- (1) の申請料については、その支払日の属する事業年度の損金の額に算入して差し支えありません。
の審査料等については、請求書を受領した日の属する事業年度の損金の額に算入して差し支えありません。 - (2) プライバシーマーク使用料は、法人税法施行令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産(償却期間は契約期間の2年)に該当するものとして取り扱うことになります。
なお、A社が消費税について税抜経理処理を適用している場合には、繰延資産となる費用の金額は20万円未満となり、法人税法施行令第134条《繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入》の規定を適用して、その支払日の属する事業年度の損金の額に算入することができます。 - (3) 上記(1)又は(2)と同様に取り扱うこととなります。
(理由)
1 プライバシーマークの使用許諾を受けるまでに要する費用
- (1) 申請料及び審査料等
事業者が付与機関等に支払う申請料、審査料等は、当該事業者が個人情報の取扱いを適切に行う体制等を整備していると認められる事業者であることの付与機関等の付与認定を受けることを目的とする費用です。
これらの費用は、次に掲げることからすれば、申請料についてはその支払日の属する事業年度、審査料等については付与機関等からの請求書受領日の属する事業年度において、それぞれ損金の額に算入することになると考えられます。- 審査の結果いかんにかかわらず必要となる費用であり、審査の結果、付与認定が受けられなかった場合でも返還されるものではないこと。
- 申請料については形式審査終了時に、審査料等については専門的審査終了時に、付与機関等の役務提供は完了すること。
- 専門的審査の結果、付与機関等の付与認定を受けた場合において、プライバシーマークを使用するためには別途付与契約を締結し使用料を支払う必要があり、当該申請料、審査料等の効果が支出の日以後1年以上に及ぶとは認められないこと。
- (2) プライバシーマーク使用料
プライバシーマーク使用料は、付与機関との間で締結したプライバシーマーク付与契約に基づき、付与機関が所有する商標権であるプライバシーマークを2年間使用する許諾を得るために支出する費用です。
したがって、プライバシーマーク使用料は支出の効果が2年間に及ぶものと認められるところ、税法上、支出の効果が1年以上に及ぶ費用のうち一定のものについては、繰延資産に該当することとされており(法2二十四)、当該「一定のもの」に該当すれば本件のプライバシーマーク使用料は繰延資産に該当することとなります。
当該「一定のもの」については、法人税法施行令第14条第1項各号《繰延資産の範囲》に掲げられており、本件のプライバシーマーク使用料は同項第1号から第5号まで、及び第6号イからニまでのいずれにも該当しないことから、同号ホに規定する「イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用」に該当するかどうかを検討することとなります。
この点、法人税基本通達8-1-10《出版権の設定の対価》の(注)において「他人の著作物を利用することについて著作権者等の許諾を得るために支出する一時金の費用」が法人税法施行令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当することからすれば、同様に他人の商標権の使用許諾を得るために支出する本件のプライバシーマーク使用料も繰延資産に該当すると解することとなります(この場合の償却期間は支出の効果の及ぶ期間、すなわち契約期間の2年となります。)。
ただし、プライバシーマークの使用料は、小規模事業者は5万円、中規模事業者は10万円とされており、いずれも20万円未満ですから、法人税法施行令第134条《繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入》の規定を適用して、その支出の日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。
また、大規模事業者(お尋ねのA社)のプライバシーマークの使用料は20万円ですが、この金額は消費税込みの金額ですから、大規模事業者が税抜経理方式によっている場合には、その使用料の額は20万円未満となり、この場合には中小事業者と同様にその支出の日の属する事業年度において損金の額に算入することができることとなります(平成元年3月1日付直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)の9)。(注)
- 1 プライバシーマーク制度は、「事業者が個人情報の取扱いを適切に行う体制等を整備していることを認定し、その証として”プライバシーマーク”の利用を認める制度」とされていますので、プライバシーマーク制度を利用することは、事業者にとって体制等の整備の確認及びマークの使用という2つの効果があるようです。
- 2 付与機関等は、プライバシーマークの付与契約期間(2年間)内において、必要に応じて実地調査等により、事業者が要件を維持しているかどうか等を審査し、その審査料等を徴することとしています。この場合の審査料等は、支出の効果が1年以上に及ぶとは認められないことから審査終了時に損金の額に算入することができるものと考えられます。
2 付与認定の更新等に要する費用
付与認定の更新等に要する費用については、更新等に係るものではありますが、その内容は1(1)及び(2)の費用となんら変わるところはなく、税務上も1の(1)及び(2)の費用と同様に取り扱うこととなると考えられます。
【関係法令通達】
法人税法第2条第24号
法人税法施行令第14条、第134条
法人税基本通達8-1-10、8-2-3
平成元年3月1日付直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
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これらISMS支出と似た支出の2つが、国税庁のhpで、支出時に全額損金算入が「妥当」、と扱われていると、ISMS支出もこれらと同様に扱うべきか否かと迷う。
結論
ISMS更新手数料は、ISO19000の更新審査料に準じ、支出時に全額損金に計上して差し付けないと考える。
理由
1)まず、ISMS更新手数料の意義は以下:
ISO 27001(ISMS認証)の取得・維持・更新にかかる費用の相場は?
https://secure-navi.jp/blog/000146
(以下、一部抜粋)
ISO 27001とISMSには、以下のような違いがあります。
ISO 27001(ISO/IEC 27001)は、ISMSを構築するための国際規格
ISMS認証は、ISO 27001(ISO/IEC 27001)に基づいてISMSを構築し、審査機関の審査に合格した組織に与えられる認証
すなわち、ISO 27001認証を取得することとは、ISMS認証を取得することと同じ意味です。ISO/IEC 27001とは?要求事項やISMS認証との違いを分かりやすく解説
ISMS認証は維持・更新費用もかかる
ISMS認証は一度取得したら永久に保持できるわけではありません。「維持審査」と「更新審査」を受審する必要があります。
維持審査は毎年、更新審査は3年に1回行われます。それぞれの審査を受けるための費用も必要ですので、ご注意ください。
ISMS認証の維持・更新審査については、こちらの記事でまとめています。
ISMS認証の更新審査ではどんな点が見られる?維持審査との違いも紹介
ISMS審査(維持・更新審査)費用の相場
ISMSの審査費用は、一般的に50万〜100万円が相場とされています(審査員の交通費や宿泊費を除く)。しかし、必ずしもこの相場に収まるとは限りません。審査費用は以下の要素によって変動します。
どこの審査機関に申請するのか
自社のリソースのみで対応するのか、社外のコンサルタント(もしくは代行会社)に依頼するのか
業種
拠点数
従業員数
また、維持審査・更新審査の費用は数十万円ほどになるのが一般的です。維持・更新審査も審査機関や組織の規模によって異なります。
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以上から、ISMSの更新手数料の特徴のうち、
(3) 登録後料金のうち、更新審査料
取得後、3年目に支払う更新審査料は、従前と同様の品質システムが備わっていることの認証を得るために支出するものであるので、
審査登録料金と同様に考えられること。
と、
(1) 審査登録料金
イ 支出によって得られる将来の広告宣伝の効果のためではなく、むしろ、現在の取引関係を維持するために、事業者は審査登録料金を支払っている面もあると考えられること。
ロ 次のことから、広告宣伝の効果がその支出の日以後数年に及ぶものとして、繰延資産として処理することは相当でないこと。
ISO9000の資格を保有し続けるためには、サーベイランス料、登録維持料等の費用負担が審査登録料金の支出後に求められること、また、一定の事由が生じる場合には審査登録証の停止、撤回及び取消しの措置がとられることから、審査登録料金の支出の効果がその支出の日以後数年に及ぶとはいいがたいこと。
審査登録料金の支出によって得られる広告宣伝の効果は、実態としては、ごく短期間のうちに失われるものもあると考えられること。
ハ 本件の支払手数料は、市場の開拓等のために「特別に支出する」ものではないので、法人税法施行令第14条第1項第3号((繰延資産の範囲))に掲げる開発費として処理することは相当でないこと。
とを共に満たすと考えるため。
補足
他の検査費用、たとえば監査報酬も、帳簿上、毎年、支払手数料a/c(∵監査法人へ支払うため源泉しないため)で全額損金処理だったもの (^^)
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