LPS(=投資事業有限責任組合)を売却(=持分を譲渡)した場合、消費税の課税売上割合の計算上、5%だけ含める扱いになる理由は?

問題の所在

消費税の課税売上割合の計算上、

1)通常は、分母に有価証券等の譲渡価額の5%をオンするが、

2)例外として、合名会社等の持分の譲渡では、譲渡価額の全額をオンする。

★以下の記事参照:

有価証券等を譲渡/売却したときに、「課税売上割合の分母に5%を含める」って?

では、この点に関し、ではLPS(=投資事業有限責任組合は、1)と2)のどちら?

★なお、投資事業有限責任組合を売却(=持分を譲渡)することは、通常は想定されない。

投資事業有限責任組合は当初は、有期で存続するもので、最後は、払い戻し(=償還)されることが想定されているから。

ただ、例えば、「当初の期間を延長することが増えており、その場合、当初の期間までで回収したい有限責任社員の持分を他の有限責任社員へ譲渡する」ことは、ありうる。

 

結論

2)の方。

 

理由

結論だけなら、以下の国税庁の記事

実は有価証券の中には、以上のように分母に5%分だけオンするのではなく、「分母に全額をオンする」ものもある。

その扱いは以下の記事参照。以下の表中の赤太字が投資事業有限責任組合。

 

非課税となる有価証券の範囲と課税売上割合の関係

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/17/09.htm

(以下、一部抜粋)

次表のとおり取り扱います。

非課税となる有価証券等の範囲と課税売上割合の関係

非課税となる有価証券等の譲渡の範囲課税売上割合の計算
法令有価証券等の種類分母に含める金額
法別表第二第2号金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券(ゴルフ場利用株式等を除く。)国債等の現先取引を除く 令482三、令4855%
令9条1項株式の端数の部分(注)令4855%
金融商品取引法第2条第1項第1号から第15号まで(定義)に掲げる有価証券及び同項第17号に掲げる有価証券(同項第16号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)に表示されるべき権利(これらの有価証券が発行されていないものに限るものとし、電子決済手段に該当するものを除く。)令4855%
株主又は投資主となる権利、優先出資者となる権利、特定社員又は優先出資社員となる権利その他法人の出資者となる権利令4855%
合資会社、合名会社、合同会社、協同組合等の持分全額含める
貸付金、預金(居住者発行のCDを含む。)、売掛金その他の金銭債権(電子決済手段に該当するもの及びゴルフ会員権を除く。)資産の譲渡等の対価として取得したものの譲渡を除く 令482二、令4855%
法別表第二第2号外為法第6条第1項第7号に規定する支払手段令482含めない
令9条4項資金決済に関する法律第2条第5項に規定する電子決済手段、同条第14項に規定する暗号資産、国際通貨基金協定第15条の特別引出権令482含めない
国債等やCD、CPの買現先 令483
売戻し差額が益のとき…益部分を含める
売戻し差額が損のとき…損を控除する
国債等やCD、CPの売現先 令482含めない

(注) 会社法の施行に伴って端株制度は廃止されましたが、同法施行前から存在する端株については「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第86条の規定により存続が認められています。このため、当該端株に係る消費税の取扱いについては、従前と同様に有価証券に類するものとされる(平18改正消令附則2)とともに、会社法施行後に行われる端株の売却代金は有価証券等の譲渡の対価とみなされ(平18改正消令附則4)、課税売上割合の計算においては、その5%相当額を分母の金額に算入することとなります。

【関係法令通達】

消費税法施行令第48条

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補足

上の赤太字の根拠は以下:

【2024/9/19訂正 m(_ _)m 】消費税法上、投資事業有限責任組合の持分の「譲渡」の扱い① 非課税取引?不課税取引?「償還」なら非課税取引?不課税取引?

(以下、一部抜粋)

改めて、

金融商品取引法では、真正の有価証券は、第2条第1項で列挙し、それ以外のみなし有価証券は第2条第2項で規定しており、投資事業有限責任組合はその第2条第2号5号で明記されている。

五 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(前項各号に掲げる有価証券に表示される権利及びこの項(この号を除く。)の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)

この点に関し、消費税法では、消費税法施行令9条第1項の、有価証券等の譲渡で非課税取引および非課税取引に類する取引の例示(形式的には例示)の中で、譲渡等の金融商品取引法第2条第1項にあるものは消費税上もまとめて同じ扱いをしていいので引用している。

しかし、第2条第2項にあるものは、消費税上、扱いを場合分けする都合、まとめては引用せず、分けて規定している。

消費税法施行令9条1項(黒太字は引用者加筆):

有価証券に類するものの範囲等)
第九条 法別表第二第二号に規定する有価証券に類するものとして政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 金融商品取引法第二条第一項第一号から第十五号まで(定義)に掲げる有価証券及び同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)に表示されるべき権利(これらの有価証券が発行されていないものに限るものとし、電子決済手段(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項(定義)に規定する電子決済手段をいう。第四号及び第四項並びに第十一条において同じ。)に該当するものを除く。)
二 合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、法人税法第二条第七号(定義)に規定する協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資者の持分
三 株主又は投資主(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十六項(定義)に規定する投資主をいう。)となる権利、優先出資者(協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号)第十三条第一項(優先出資者となる時期等)の優先出資者をいう。)となる権利、特定社員(資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第五項(定義)に規定する特定社員をいう。)又は優先出資社員(同法第二十六条(社員)に規定する優先出資社員をいう。)となる権利その他法人の出資者となる権利
四 貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権(電子決済手段に該当するものを除く。)

なお、「持分」と言わず「権利」といっているのは、上の金融商品取引法の規定を意識していると推察する。

そして、以上の検討から、譲渡も償還も同等に扱うのが相当であると考える。

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