自動車メーカーの不正検査事件で協力会社が休業した後に支給された補償金の、消費税上の課非判定は?

問題の所在

以下の事例:

・ダイハツ社の不正検査問題で、ダイハツ社の協力会社の操業が停止し、再開後に当該停止に対する一時金を支給された。

・毎月の売上はおおよそ300万円であるが、当該一時金は約30万円。

この受取一時金の課非判定は?

直感的には、補償金は不課税であるが、、、、

まず、国税庁hpの以下の①②の規定を:

 

① No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6157.htm

(以下、一部抜粋。太字は引用者加筆)

(7) 心身または資産について加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金

対価を得て行う(注2)資産の譲渡や貸付け、役務の提供等の取引ではないからです。ただし、損害賠償金でも、例えば次のような場合は対価を得て行う(注2)資産の譲渡や貸付け、役務の提供等の取引であり、課税の対象となります。

イ 損害を受けた製品などの棚卸資産が加害者に引き渡される場合で、その資産がそのままで使用できる場合や、軽微な修理をすれば使用できる場合

ロ 無体財産権の侵害を受けたために受け取る損害賠償金が権利の使用料に相当する場合

ハ 事務所の明渡しが期限より遅れたために受け取る損害賠償金が賃貸料に相当する場合

根拠法令等

消法2、4、消基通1-1-1、5-1-1・2、5-2-4・5・8、5-2-13~15、11-1-2

================

 

② No.6257 損害賠償金

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6257.htm

(以下、一部抜粋)

例えば、次のような損害賠償金は、その実質からみて資産の譲渡または貸付けの対価に当たり、課税の対象となります。

1 損害を受けた棚卸資産等が加害者に対して引き渡される場合において、その資産がそのまままたは軽微な修理を加えることによって使用することができるときにその資産の所有者が収受する損害賠償金

2 特許権や商標権などの無体財産権の侵害を受けた場合に権利者が収受する損害賠償金

3 事務所の明渡しが遅れた場合に賃貸人が収受する損害賠償金

根拠法令等

消法4、消基通5-2-5

====================

・休業期

 

結論

当該補償金には対価性がないと判断し、不課税売上と解する。

「本来得られるべきであったにもかかわらず、相手(加害者)の事情によって得ることができなかった」、いわゆる逸失利益の補填金に該当するような損害賠償金については、消費税の取扱いは課税取引にはならず、対象外となるため。

 

理由

以下の記事が参考になる:

課税・非課税?それとも… 損害賠償金を授受した際の消費税の取扱い

https://www.kigyoujitsumu.com/topics_detail31/id=46396

(以下、一部抜粋)

一般的な考え(=対象外)

事業として対価を得て行なわれる資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供については、消費税の申告上、これを課税の対象として取り扱います。
一方で、心身または資産に加えられた損害により受ける金銭等については、一般的に対価性がなく、消費税の課税の対象とはなりません。
たとえば、経済的な損失を受けたことに対して支払われる慰謝料をはじめ、予約の解除や取消しに伴うキャンセル料、アパートの賃貸借契約の中途解約による違約金等がこれに該当するといえるでしょう。

実質による判定(課税の可否の判断)

本来得られるべきであったにもかかわらず、相手(加害者)の事情によって得ることができなかった、いわゆる逸失利益の補填金に該当するような損害賠償金については、消費税の取扱いは課税取引にはならず、対象外ということになります。しかし、単に損害賠償金という名目だけで、そのすべてを対象外として取り扱うことはできません。
次のように実質的に資産の譲渡等に該当する場合には、損害賠償金として受け取った場合であっても、消費税上は課税の対象となります。

・損害を受けた棚卸資産等が加害者に引き渡される場合で、その棚卸資産等がそのまま、あるいは軽微な修理を加えることにより使用できるときに、その加害者からその棚卸資産等を所有する者が収受する損害賠償金

・無体財産権の侵害を受けた場合に、加害者からその無体財産権の権利者が収受する損害賠償金

・不動産等の明渡しの遅延により加害者から賃貸人が収受する損害賠償金

たとえば、商品等の運搬中の破損に対する損害賠償金について、外側の包装の破れ等の程度であって本体に何らの支障はないものの、顧客への販売が難しくなったため運送会社が引き取るようなケースは、消費税上の取扱いは課税取引となるでしょう。
これに対し、ビンなどが破損したことによって、これを飲食等に充てることができないような場合に受け取る金銭等については、たとえ請求書等において消費税の額が表示されていたとしても、その全額が対象外となります。
また、特許等の侵害によって無許可でこれを使用した者から権利者が収受する損害賠償金は、あくまでもその実態がその特許等の使用料に相当するため、課税の対象となります。
そのほか、テナントとの賃貸借契約期間を超えた部分に対して賃借人に請求する損害賠償金についても、その実態は割増家賃にほかならず、課税の対象となります。

====================

補足

近い通達は以下。(1)(=1号)が該当すると考える。

★本文の末尾は「次に掲げる補償金は、対価補償金に該当しない」なので、読み方に注意!

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/05/02.htm

(対価補償金等)

5-2-10 令第2条第2項《資産の譲渡等の範囲》に規定する「補償金」とは、同項の規定により譲渡があったものとみなされる収用の目的となった所有権その他の権利の対価たる補償金(以下5-2-10において「対価補償金」という。)をいうのであり、当該補償金の収受により権利者の権利が消滅し、かつ、当該権利を取得する者から支払われるものに限られるから、次に掲げる補償金は、対価補償金に該当しないことに留意する。(平23課消1-35により改正)

(1) 事業について減少することとなる収益又は生ずることとなる損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金

(2) 休廃業等により生ずる事業上の費用の補てん又は収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産について実現した損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金

(3) 資産の移転に要する費用の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金

(4) その他対価補償金たる実質を有しない補償金

(注) 公有水面埋立法の規定に基づく公有水面の埋立てによる漁業権又は入漁権の消滅若しくはこれらの価値の減少に伴う補償金は、補償金を支払う者はこれらの権利を取得せず、資産の移転がないことから、資産の譲渡等の対価に該当しない。

====================