法人で、入会金を分割支払の場合、償却開始はいつ?

問題の所在

以下の事例:

・不動産賃貸業の法人成りのお客様で、宅建業協会(都道府県)へ、令和6年1月に10万円、令和7年中に残り10万円を支払う。

・入会金は法人税法上の繰延資産に該当し、5年金等償却だが、

1)10万円ずつ別々に償却

2)20万円合算直後から償却開始、つまり2年後から開始

3)その他

のいずれか?

この点に関し、国税庁hpの開設は以下:

No.5382 同業者団体等の加入金と会費の取扱い

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5382.htm

(以下、一部抜粋。なお文中の赤太字は引用者加筆)

概要

法人が同業者団体等(社交団体を除きます。)に対して支出した加入金および会費の取扱いについては次のとおりです。

加入金

1 構成員としての地位を他に譲渡することができることとなっているものおよび出資の性質を有するもの

譲渡または脱退するまで資産に計上します。

2 上記1以外のもの

繰延資産に該当し、償却期間は5年となります。

ただし、支出金額が20万円未満の場合には損金経理により全額損金算入することができます。

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例えば上の事例にこの赤太字の単純文言解釈を当てはめると、10万円ごとになるのだが、、、

 

結論

上の3)その他、で、

1年目の支出時に、2年目の分も未払計上して合計20万円を5年償却。

★上の2)は、1年目に10万円がキャッシュアウトしているので、それを償却止めさせるのは無理がある (^^)

 

理由

まず、2年目の10万円を初年度に見積計上することの可否が問題となるが、これに関する通達は以下であり、その内容は、

・令第14条第1項第6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》について、

・4年超の長期のもの(=短期間でないもの)

は未払計上を禁止するものである。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_03.htm

(分割払の繰延資産)

8-3-3 法人が令第14条第1項第6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる繰延資産となるべき費用の額を分割して支払うこととしている場合には、たとえその総額が確定しているときであっても、その総額を未払金に計上して償却することはできないものとする。ただし、その分割して支払う期間が短期間(おおむね3年以内)である場合には、この限りでない。(昭51年直法2-39「4」、昭55年直法2-8「三十」、平19年課法2-3「二十」、平19年課法2-17「十八」により改正)

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この点に関し、今回の入会金は、

・令第14条第1項第6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》には該当せず、

・2年間なので短期間に該当する

ので、令和6年1月時点で残り10万円を未払計上して、合算金額20万円で償却開始することがは直接には禁止されていない。

↓↓

次に、支出単位が10万円ずつであることから、20万円未満の場合の全額損金処理の適用の可否が問題となる。

それを規定している通達は以下(文中青太字は引用者加筆):

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_03.htm

(支出する費用の額が20万円未満であるかどうかの判定)

8-3-8 令第134条《繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入》の規定を適用する場合において、支出する金額が20万円未満であるかどうかは、令第14条第1項第6号イ《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる費用については一の設置計画又は改良計画につき支出する金額(2回以上に分割して支出する場合には、その支出する時において見積られる支出金額の合計額)、同号ロ及びハに掲げる費用については契約ごとに支出する金額、同号に掲げる費用についてはその支出の対象となる資産の1個又は1組ごとに支出する金額により判定する。(昭45年直審(法)58「2」、昭49年直法2-71「13」、昭55年直法2-8「三十」、平元年直法

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https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097#Mp-Pa_1-Ch_1-At_14

法人税施行令

(繰延資産の範囲)
第十四条 法第二条第二十四号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)
二 開業費(法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
三 開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
四 株式交付費(株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税その他自己の株式(出資を含む。)の交付のために支出する費用をいう。)
五 社債等発行費(社債券等の印刷費その他債券(新株予約権を含む。)の発行のために支出する費用をいう。)
六 前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
 イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

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入会金は、上の法人税施行令第十四条第六項のに該当するが、上の通達8-3-8で支出ごとに償却がOKなイ、ロ、ハ、ニの範囲の外になる。
(その他だから明記しなかった趣旨もいえるかもしれないが、、、 (*^^*))

以上の2つを整理すると、

(1)2年目分を未払計上して、合算して5年償却することはOK、

(2)1年目分、2年分を個々に全額一時に(連続して)償却することは不可
(★そもそもこれを認めたら支払方法を変更することで法人税の計上ルールの脱法が可能になってしまう)

と考える。

 

補足

以下、そもそも入会金の処理についてまとめておく:

 

まず、宅建業協会への入会金支払いは、基本通達8-11-1に該当する:

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_01.htm

第8章 繰延資産の償却第1節 繰延資産の意義及び範囲等

(同業者団体等の加入金)

8-1-11 法人が同業者団体等(社交団体を除く。)に対して支出した加入金(その構成員としての地位を他に譲渡することができることになっている場合における加入金及び出資の性質を有する加入金を除く。)は、令第14条第1項第6号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に規定する繰延資産に該当するものとする。(昭55年直法2-8「二十八」により追加、平19年課法2-3「十八」、平19年課法2-17「十六」により改正)

(注) 構成員としての地位を他に譲渡することができることとなっている場合における加入金及び出資の性質を有する加入金については、その地位を他に譲渡し、又は当該同業者団体等を脱退するまで損金の額に算入しないものとする。

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次に、償却期間のベースは以下:

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_02.htm

(繰延資産の償却期間)

8-2-3 令第14条第1項第6号《公共的施設の負担金等の繰延資産》に掲げる繰延資産のうち、次の表に掲げるものの償却期間は、次による。(昭46年直審(法)20「4」、昭48年直法2-81「20」、昭55年直法2-8「二十九」、平12年課法2-19「十二」、平19年課法2-3「十九」、平19年課法2-17「十七」、平30年課法2-8「八」により改正)

該当条項種類細目償却期間
令第十四条第一項第六号イ《公共的施設等の負担金》に掲げる費用公共的施設の設置又は改良のために支出する費用(8-1-3)(1) その施設又は工作物がその負担した者に専ら使用されるものである場合その施設又は工作物の耐用年数の7/10に相当する年数
(2) (1)以外の施設又は工作物の設置又は改良の場合その施設又は工作物の耐用年数の4/10に相当する年数
共同的施設の設置又は改良のために支出する費用(8-1-4)(1) その施設がその負担者又は構成員の共同の用に供されるものである場合又は協会等の本来の用に供されるものである場合イ 施設の建設又は改良に充てられる部分の負担金については、その施設の耐用年数の7/10に相当する年数
ロ 土地の取得に充てられる部分の負担金については、45年
(2) 商店街等における共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに併せて一般公衆の用にも供されるものである場合5年(その施設について定められている耐用年数が5年未満である場合には、その耐用年数)
令第十四条第一項第六号ロ《資産を賃借するための権利金等》に掲げる費用建物を賃借するために支出する権利金等(8-1-5(1))(1) 建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等で当該権利金等の額が当該建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるものである場合その建物の耐用年数の7/10に相当する年数
(2) 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明渡しに際して借家権として転売できることになっているものである場合その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数
(3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間)
電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用(8-1-5(2))その機器の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)
令第十四条第一項第六号ハ《役務の提供を受けるための権利金等》に掲げる費用ノウハウの頭金等(8-1-6)5年(設定契約の有効期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び一時金又は頭金の支払を要することが明らかであるときは、その有効期間の年数)
令第十四条第一項第六号ニ《広告宣伝用資産を贈与した費用》に掲げる費用広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用(8-1-8)その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年)
令第十四条第一項第六号ホ《その他自己が便益を受けるための費用》に掲げる費用スキー場のゲレンデ整備費用(8-1-9)12年
出版権の設定の対価(8-1-10)設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合には、3年)
同業者団体等の加入金(8-1-11)5年
職業運動選手等の契約金等(8-1-12)契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年)

(注)

1 法人が道路用地をそのまま、又は道路として舗装の上国又は地方公共団体に提供した場合において、その提供した土地の価額(舗装費を含む。)が繰延資産となる公共施設の設置又は改良のために支出する費用に該当するときは、その償却期間の基礎となる「その施設又は工作物の耐用年数」は15年としてこの表を適用する。

2 償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる。

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支払内容の区分ごとの処理は以下:

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_03.htm

(社交団体の会費等)

9-7-15 法人がその入会している社交団体に対して支出した会費その他の費用については、次の区分に応じ、次による。(昭46年直審(法)20「8」により改正)

(1) 経常会費については、その入会金が交際費に該当する場合には交際費とし、その入会金が給与に該当する場合には会員たる特定の役員又は使用人に対する給与とする。

(2) 経常会費以外の費用については、その費用が法人の業務の遂行上必要なものであると認められる場合には交際費とし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には当該役員又は使用人に対する給与とする。

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