内定者を集めての食事会を、従来は本社内で開催していたのから外部のホテルを借りて開催するへ変更する場合、仕訳上の科目は?
問題の所在
以下の事例:
・親会社P、その子会社S。
・令和6年5月に内定式(★来年=令和7年4月1日入社の学生を対象)を開催。
・従来の内定式は、本社の会議室で開催していたが、今年は(奮発して)地元のホテルで会食形式で開催。
(・したがって、予算単価も、引き合い時点のベースで、3万円/1人当たりに上昇。
・この場合、仕訳の科目は?
・なお、従来は、募集費a/cで処理している。
結論
以上の事例では、今回の支出は法人税法の交際費に該当すると考えられるため、仕訳の科目は募集費a/cではなく交際費a/cへ計上する。
理由
各税目の視点で検討する。
(1)所得税等
入社内定者への支給等については、以下の1)と2)に分解できる:
1)入社日の前の取引
・内定状態ではあるが入社が確定していない、入社していないため使用人の規定は適用できない
・したがって後の検討で本人に課税が生じても給与所得ではなくせいぜい雑所得である。
★この意味は「会社は源泉所得税を控除する義務はない」という点。
2)入社日の後の取引
・もう入社しているので、内定者ではなく使用人である。
・したがって後の検討で本人に課税が生じても雑所得ではなく給与所得である。
★この意味は「会社は源泉所得税を控除する義務がある」という点。
↓
今回の事例は1)の方であるため、会社経理的には特段の配慮は無用である。
(なお内定者側の雑所得云々についても、(内定式に100か所以上、出席でもしていれば別であるが)現実問題として、これを確定申告することはスルーして許容であろう。)
(2)法人税
以下の理由から、交際費に該当すると考えられる。
・まず、内定者は当社の社員では(まだ)ない。ゆえに(社内飲食費ではなく)(社外)飲食費に該当する。
・今回の事例で金額が一人当たり3万円以上というのは、社外飲食費の税法基準である1万円よりも大幅に超過しているため、全額を交際費a/cで処理する必要があると考える。
補足
ググって参考になる記事を以下に引用する:
① 以下の記事は式次第ベースでイメージしやすく解説されている;
内定式
https://fanblogs.jp/fukaiissei/archive/1/0
(以下、一部抜粋)
全ての費用を会議費、福利厚生費等の勘定で処理してはないでしょうか?
ちょっと待ってください。
内定式の費用の中に交際費となるものがあります。
それは、食事会や懇親会です。
食事会や懇親会費は交際費になります。
内定式のおおまかな流れと会計処理はつぎのとおりです。
①開催の辞
②社長の挨拶
③内定者オリエンテーション
④会社の紹介ビデオ鑑賞
⑤内定通知の交付
⑥閉会の辞
⑦食事会・懇親会等
まず⑦と⑦以外とに費用を区分します。
⑦以外は、会議費、福利厚生費等で処理します。
⑦は、交際費となります。
内定者はまだ会社と労使関係がないため、社外の人となります。
従って、⑦の食事会・懇親会の費用に対して5,000円基準を適用して社外少額飲食費に該当するかどうかを判断します。★抜粋者注:令和6年4月1日以降、1万円基準を適用する。
食事会・懇親会費用が一人当たり5,000円以下ならば、社外少額飲食費として損金算入できます。★抜粋者注:令和6年4月1日以降、1万円基準を適用する。
必要な証票は、式次第・出席者名簿・請求書・請求明細書などです。
② 以下の記事は、交際費に該当する/しないをわかりやすく解説されている:
採用内定者に対する経費について
https://yamada-cpa.com/column/column/237/
(以下、一部抜粋)
採用内定後、正式採用までの間の工場見学及び懇親会など会社の業務の理解を目的とするものや内定者同士の親睦を深める事を目的とするようなものであれば、採用後の業務に役立つものでもあり、また、社会通念上一般的に行われているものでもあるため、通常要する費用は交際費には該当しないと考えられます。
ただし、採用内定者をつなぎとめるために、ホテル等で豪華な食事でもてなしたり、海外へ研修旅行に連れていくなど社会通念上、通常考えられる懇親の範囲を超えるようなものや会社の業務に関係のない演劇鑑賞会のようなものは、交際費に該当する可能性があります。
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③ 以下の記事は、交際費a/cに計上しないようにするための理論武装をわかりやすく解説している(しかし今回の事例の実態は囲い込みなので、、、(^^♪):
内定式の費用はどの科目で処理するか
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/3495282.html
(以下、一部抜粋)
Q)
社員数30名未満の中小企業に勤めています。
来年度新卒の内定式を行ったところ、20万ほどの費用がかかりました。
出席者は20名弱。内訳は社員6:内定を出された学生4くらいの割合です。
式といっても、飲食店の貸切の部屋で社長の訓辞などの後に食事・談話をするという懇親会的な内容ですが、この場合はどの勘定科目を使うのが適切でしょうか。
私は交際費で処理しようとしたのですが、経営者側としては会議費または福利厚生費で計上したいとの意向です(全額会食のためだけの費用に見えるが、その中に会場使用料なども含まれていると解釈するなら会議費で落とすこともできるのではないか、とのこと)
A)
内定者の懇親会費用が交際費にしなくとも良いかどうかは、会社業務との関連性、および、会社を理解してもらい会社業務を紹介するなど会社業務に関係する目的と、引止め工作など会社業務と直接には無関係な目的とのいずれがより強いのかという相関関係によって決まるようです。
例えば、同業他社の一次面接集中日にホテルへ缶詰にするなどであれば、交際費計上にしたほうが無難といえます。
御社の場合には、「社長の訓辞などの後に食事・談話を」なさったとのこと、その内容が会社業務に関連するものであり、かつその他の目的が比較的弱いのであれば、問題なく交際費でない処理をすることができます。その場合には、採用関連費用を計上している勘定科目があればそこへ、なければ会議費などの科目へ計上すれば良いように思います。
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④ 以下の記事は、会計士目線っぽい (^^♪
実態判断!内定式・内定者懇談会の勘定科目はこう決める
http://keirikyuuentai.com/bookkeeping-about-ceremony-of-prospective-employees
(以下、一部抜粋)
さて、経理として気になるのは、これらの費用がどの勘定科目に当たるかです。ぱっと思い浮かぶだけで以下のように出てきます。
- 接待交際費
- 福利厚生費
- 採用教育費
- 会議費
実は、単に内定式や内定者懇談会といっても、その内容は会社によって千差万別であり、勘定科目はその中身を実質的に検討して判断する必要があります。
そこで今回は、内定式・内定者懇談会を正しく仕訳するための判断方法をご提案しましょう。
本稿は税理士の古旗淳一が、一般的な取引を想定した私見を執筆しております。
1.実際に何をしているかで勘定科目は変わる
会の名前は「内定式」「内定者懇談会」「内定者説明会」あるいは「入社前研修会」であっても、実際にその会で何をしているかによって勘定科目は異なります。
まずはどのような実態なのかを担当者に確認したり、当日の資料を入手したりして、下記のいずれに該当するかを検討しましょう。
1-1.内定者の歓心を誘う性格が強い場合
ホテルの大会議室を貸し切り、豪華な食事とお酒を提供して、業務に関することは乾杯前に人事部長がスピーチするぐらい・・・という中身であれば、ほぼ接待交際費に該当します。
内定者は事業発展のために大切な労働力を提供しようとするお客様ですので、そのお客様をもてなす会とみなされます。この場合、会場費・飲食費はもちろん、支給交通費も交際費になります。
1-2.入社前研修の性格が強い場合
きちんと何時間か机に座ってもらい、会社側から会社のルールや社会人の心得を説明したり、工場見学をさせたりする場合は、採用教育費で問題ありません。
内定者は「従業員に準ずる立場の者」ですので、おもてなしを受けることもあれば、新人社員としての研修を受けることもあります。後者であれば、会場費や支給交通費などは採用教育費(その他、会場費、会議費、旅費交通費なども可)になります。
お昼にお弁当などを用意しても、よほど豪華すぎない限りは採用教育費や会議費で処理できます。
一方、研修後に居酒屋で懇親会を開いた場合はさすがに交際費ですので、昼の研修とは別物として処理しましょう。
1-3.社員や内定者同士の交流会・懇親会の性格が強い場合
社員同士の交流を促進してのレクリエーションの意味合いが強く、内定者は社員に準ずる立場として参加しているわけですから、よほど豪華な食事や高価なレクリエーションでない限り、福利厚生費として認められるでしょう。
ただし、福利厚生費は全社員一律に参加の権利を有することが要件ですので、参加する社員や内定者を曖昧な基準で選別したり、開催する年としない年が意味もなくまちまちだったりすると、接待交際費と認定される可能性もあります。
2.ルールづくりと定期的な確認を
採用人数が多い会社の場合、1年間に数回内定式を開くこともあるため、経理が毎回内容を確認して勘定科目を検討するのは大変です。
一般的には、どのような会を開くのか、人事部に大まかなルールがありますので、その範囲内であればどの勘定科目で処理するのかを経理部でルール決めしておきましょう。そうすれば、普段と金額が大幅に違うときだけ人事部に問い合わせればよいことになります。
ただし、昨今の人材不足のように、経営環境の変化で実態も大きく変化することがあります。数年に1回は実態が変わっていないか人事部に確認し、ルールが実態と乖離しないように気を付けましょう。
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