従業員が出張時の航空券の支払いに係る領収証は、簡易インボイスで可?

問題の所在

以下では、顧問先様(上場会社のグループ会社)で、従業員の出張精算で提出してもらうインボイスのうち、航空券チケット分も簡易インボイスで可能か否かを検討する。

★換言すると、インボイスが必要な場合、それが航空機チケットの場合、簡易インボイスでOKか否か?を検討する。

★したがって、インボイスの保存の要否の論点ではない点に留意。

 

まず、ルールとして、簡易インボイスを発行できる者は、下の「補足」に引用している、インボイスQ&Aの問24によれば、小売業、飲食業等の他に「旅行業」と明記されている。

この旅行業の中に、航空券チケットが入るか否かが問題となる。

★入らない場合には、従業員から提出された立替経費精算をchしてインボイスに記名がない場合には、当該従業員に領収証を再取得させる(まあ、修正インボイスをgetさせる?)手間が生じる。

この点に関し、「受領するインボイスの保存の要否」の論点では、

・限定列挙の特例の中に、「(インボイスの交付義務が免除される)3万円以下の公共交通機関による旅客の運送」「ただし、タクシーや航空機は、この対象にならない」と明記されている。

・他方、従業員の出張旅費は、その出張に通常必要となる範囲ではインボイスの保存が不要とされる、

・では、従業員の出張旅費のうち航空機代は?となると、、、、、
会社が航空券等を購入した場合はインボイスが必要となるが、
会社が従業員に出張旅費として航空券代を支給し、従業員が自身で航空券等を購入した場合は、出張旅費特例の対象となり、インボイスは不要となる、そう(以下の記事参照)

https://okahara-tax.com/invoice-airplane/

もう、何がなんだか、、、、、、、、、、、、、、、

「簡易インボイス 旅行業 航空機」でぐぐっても、インボイスの保存の要否のページばかりがヒットする (*_*)

 

結論

私見では、航空機チケットの場合には、簡易インボイスでok、と考える。

上の事例に引き直すと、出張精算する会社の経理部等の立場からは、航空券は電車の切符と異なり記名をすることがシステム上可能であることから、

  • 今後、インボイスにお客様の氏名を記載する航空会社と記載しない航空会社の、両方がでてくる可能性がある、
  • 今後、出張旅費精算で提出される航空券の領収証には、出張精算する従業員の氏名が、印字されている分と印字されていない分が混在する可能性がある。

将来に、税務調査で、仮に、上の混在を指摘されることがあれば、以下のように回答する予定:

  • 弊社内ルールとしては、「インボイス制度とは別に、不正利用防止の趣旨で「インボイスになる領収証のうち航空券は、可能な限り記名でgetして経理へ提出して。」とアナウンスしている。
  • ただし、制度上、簡易インボイスが認められるので、記名されない領収証をもらってもその航空会社へ文句を言えないのであろう。なので、それが無記名の簡易インボイスであった場合には、そのまま受領する。

 

理由

以下の国税庁のインボイスQ&A(令和4年11月改訂)問24 が参考になる:

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=43

(以下、一部抜粋)

(適格簡易請求書の交付ができる事業)
【答】
適格請求書発行事業者が、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う次の事業を行う場合には、適格請求書に代えて、適格請求書の記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することができます(消法 57 の4②、消令 70 の 11)。
また、適格簡易請求書についても、その交付に代えて、その記載事項に係る電磁的記録を提供することができます(消法57の4⑤)。
① 小売業
② 飲食店業
③ 写真業
④ 旅行業
⑤ タクシー業
⑥ 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
⑦ その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

①から⑤までの事業については、「不特定かつ多数の者に対するもの」との限定はありませんので、例えば、小売業として行う課税資産の譲渡等は、その形態を問わず、適格簡易請求書を交付することができます。

また、「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」であるかどうかは、個々の事業の性質により判断します。例えば、以下のような事業が該当することとなります。
・ 資産の譲渡等を行う者が資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名又は名称等を確認せず、取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業
・ 事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業(取引の相手方について資産の譲渡等を行うごとに特定することを必要とし、取引の相手方ごとに個別に行われる
取引であることが常態である事業を除きます。)

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つまり、上の①から⑤(④の旅行業を含む)について何ら制限がないため、旅行業の中に含まれる航空券も簡易インボイスで許容されると解する。

航空機は、実際には顧客氏名情報をgetしているのだから、電車などよりも記名を実行することは可能な気はするが、それでも簡易インボイスでOKだということ。

 

補足

相当ググってみて、以下の記事の文中に参考になる記載がある:

簡易インボイスを発行できるのはどんな業種?

(以下、一部抜粋)

顧客名を把握している小売業などは対象外?

簡易インボイスを発行できるのは、お客さんが不特定多数だとインボイスを発行するのが大変である点に配慮したためです。

ではネット通販などのようにアカウント登録をしないと注文できないケースだとどうなるか。

この場合顧客名をすべて把握しているという理由により簡易インボイスを発行できないのでしょうか?

この点について、問24では先ほどの1から5の業種についてはお客さんが「不特定多数」でなくても構わないとしています。

ネット通販のケースでいえば、顧客を特定できる状況にあっても、事業の内容が「小売業」に該当するのであれば簡易インボイスを発行できるということです。

飲食店業・写真業・旅行業・タクシー業も同じ考え方を適用できます。

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