会社の役員に常勤者がゼロ、従業員もゼロでも、会社法上、税務上、社会保険上、問題ないの?

問題の所在

以下の事例で、設立後半年後に、年金事務所から調査票の問い合わせが来た。どう回答するか?

・従業員はゼロ人。

・役員(取締役)は社長Aの一人で、実態は非常勤。

・実態は、出資者Bが無償又は外周費を受領して活動する。

・社長Aは高額医療費請求者であり、夫の国保の扶養に入っているので、社保に変更はしたくないので、会社では加入してない(国保のまま)

・月給は、所得税、住民税が非課税である月80,000円にして、設立後最初の特例納付時には、「3ヶ月分の24万円を支払い、源泉所得税の納税ゼロ円」で申告した。

特に、常勤者ゼロであるが、法務、税務、社会保険等で問題はないか?

 

結論

以下の通り:

・調査票には その他(理由:非常勤のため)と記載し、添付が求められるエビデンスは、②源泉所得税。

・もし提出後、グダグダ言われたら、もう、役員報酬の月給を、社会保険テーブルの最低金額以下の、57,999円以下にする。 ★なお当該金額は、他の収入も名寄せしてカウントしてのである。

★なお、「特例納付書の役員の収入24万円を、月57,999円になるように修正する」のはやり過ぎ。実際、24万円支払い済なのだから。

 

理由

棚卸しすると以下:

1.会社法上

問題なし。

2・法人税法上

私見ではそれ自体は問題ないが、実態がないことは申告書情報から容易にわかるため、いわゆるブラックリストにカウントされるリスクはある。

3.社会保険上

・まず、非常勤であれば、社会保険の加入義務は逃げられる。

・しかし、「1名の代表取締役が非常勤で従業員もゼロ」という主張が、年金事務所に受け入れられない可能性がある。

・その場合、力技では、以下の社会保険の給与テーブルの最低金額以下の金額、すなわち月57,999円以下にする必要がある。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r6/ippan/r60213tokyo.pdf

・さらにそれは他の所得と合算してカウントしての、57,999円になる。他に事業所得。給与所得所得があると名寄せしてカウントして判断されると解する

★しかし雑所得(年金)だったらどうだろう?? なお一時的な変動は許容されると推定するが、、、、

以下の①②③の記事が参考になる:

 

① 以下の記事は、1名のみの取締役が非常勤でも問題ないことを示唆している:

非常勤役員でもOK?経営業務管理責任者に必要な経験と注意点について

https://vs-group.jp/gyoseiss/gyosho/parttimeofficer/#:~:text=%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-,%E9%9D%9E%E5%B8%B8%E5%8B%A4%E5%BD%B9%E5%93%A1%E3%81%A7%E3%82%82%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%A5%AD%E5%8B%99%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E8%80%85%E3%81%AE%E8%A6%81%E4%BB%B6,%E3%81%A6%E3%82%82%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82

(以下、一部抜粋)

会社法上は、役員全員が非常勤役員であっても問題はありません。

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② 以下の記事では、一人会社の社会保険は2か所以上から収入があれば名寄せされる主旨が指摘されている:

yahoo知恵袋

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11117874841

(以下、一部抜粋)

非常勤の役員だけで会社の設立はできますか 会社の設立にあたり、実務は管理会社に委託するので、事実上 常勤者は必要ない会社となります。 数名の非常勤役員のみでの運営とし、常勤の役員が一名もいなくても会社の設立は可能ですか? 保険や年金の加入条件からも全員、非常勤としたいのですが。

可能です。 代表取締役を選ぶ必要がありますが、常勤かどうかなど関係ありません。 上場企業でも子会社の代表取締役を兼任している人が多いですが、名前だけで非常勤の場合も多いです。 実務に支障がなければ問題なく会社設立はできます

補足 社会保険はややこしいです。

まず、正論からいきますと、会社は必ず社会保険強制適用事務所になります。

次に社会保険の適用者になるかどうかは、あいまいで、勤務実態がほとんどない非常勤役員などは適用除外となるでしょう。

ただし、代表取締役はほとんど会社に出社していないとしてもその会社の経営を実質行っていることから非常勤という概念には社会保険上はならず、加入させられる可能性大です。

そして社会保険は2社以上に勤務していた場合、どこか1社(メイン)の社会保険に入ることになるので、入っていないほうの社会保険は入っていない方の報酬がメインの方の社会保険の計算に上乗せされて支払います。 結論としては、代表取締役だけ設立する会社から支給される給与分をメインの方の給与に上乗せされて計算されるということです。

ただ、こういう会社が社会保険に入っているケースは非常に少なく(届出しないからみつからない)、実務上は何もしないで全員社会保険関係なしというのが実態です。

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③ 以下の記事は、夫婦の2名の取締役のうち1名を非常勤にすることを提案する記事だが、1名のみの役員の常勤・非常勤の判断上、有益である;

常勤役員を非常勤役員にするだけで、社会保険料が削減に!

https://jfc-guide.com/basic-knowledge/234/

(以下、一部抜粋)

【ポイント】

常勤役員を非常勤役員に変更し、一定の条件を満たせば、被保険者ではなくなります。

一定の条件とは、次の2点です。

  1. 1日の所定労働時間が正社員の3/4未満であること
  2. 1ヵ月のうち、正社員の3/4未満の出社であること

非常勤役員になり、あまり出社しなければ、被保険者にならないため、会社は社会保険料を負担する必要はありません。

(途中、筆者省略)

2.非常勤役員で被保険者に該当する人としない人

ここからは、例を使って説明します。

(例) A株式会社では、 正社員の方の労働条件は、 1日8時間労働 週40時間労働 1ヶ月21日出社 です。

《非常勤役員1の労働時間》

1日6時間労働 月に16日出社

6時間 / 8時間 ⇒3/4 以上

16日 / 21日 ⇒ 3/4 以上

よって、この非常勤役員は、被保険者となるため、社会保険に加入しなければなりません。

《非常勤社員2の労働時間》

1日5時間労働 月に22日出社

5時間 / 8時間 ⇒ 3/4 未満

21日 / 21日 ⇒ 3/4 以上

毎日出社してもらっても、労働時間が3/4以上とならないため社会保険に加入する必要はなくなります。

つまり、

・毎日出社してもらっていても、1日の勤務時間が5時間であれば、社会保険の加入義務はない

・毎日8時間働いてもらっていても、1ヶ月で15日以内の出社に押さえてもらえば社会保険の加入義務はない

ということになります。

社会保険に加入するか否かは、役員報酬の高低で決まるわけではない?

役員報酬が低い非常勤役員でも、役員報酬が高額な非常勤役員であっても、上記2の条件に該当しなければ、被保険者に該当しません。そのため、会社は、社会保険料を負担する必要はありません。

なお、常勤役員であれば、常に社会保険の加入義務がありますので、ご注意ください。

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補足

「一人会社でその役員が非常勤、従業員もゼロ人」のスキームは、会社設立時はいいとしても、設立後にはやや無理がある。