ずっと毎月出勤日数が17日未満である従業員Aについては、随時改定でも、年1回の定時改定でも、標準報酬を改定できないって?

問題の所在

弊事務所の某顧問先様の事例:

従業員Aは時間給であり、毎月、前月に申請し決定した出勤日数だけ当月に出勤する。

離婚したが現在は高齢の両親からおカネに困っていないこともあり、17日未満しか出社しない。ただ、両親からの支援を得られない将来を考え、社会保険は加入したい希望を有している。

会社は割高の社会保険の会社分を負担しているため、臨時改定をしたかったが、標準報酬の改定の要件を満たさないため、随時改定ができず、次の定時改定まで待っていた。

 

結論

17日未満が続いている場合、、、、標準報酬額を変更する方法は、ない!

端的には、月額変更届、算定基礎届の要件が以下のため、出勤日が将来ずっと17日未満の場合、標準報酬額はずっと200千円のまま:

・月額変更届 → 17日以上出勤している前提で、その中での増減額になる(以下の「問題の所在」の太青字部分)(→17日未満だと、、、出せない!)

・算定基礎届 → 4,5,6月の出勤日数が17日未満の場合、、、、従来の標準報酬額がスライドする(以下の「理由」の太赤字部分)

 

理由

まず、どこかの年金事務所hpで「月額変更届」を検索すると以下がヒットする:

 

随時改定(月額変更届)

(以下、一部抜粋)

1.概要

被保険者の報酬が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを随時改定といいます。
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。
(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。(※1)
(2)変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。(※2)
(3)3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。(※3)
上記(1)~(3)すべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目(例:4月に支払われる給与に変動があった場合、7月)の標準報酬月額から改定されます。

(※3)支払基礎日数とは、給与計算の対象となる日数をいいます。日給制や時給制の場合は出勤日数、月給制や週給制の場合は暦日数で計算します。

 

次に、定時改定(算定基礎届)を提出することでも標準報酬額を変更できない理屈は以下:

 

1.「算定基礎届」の原紙

裏面に注意書きがあり、以下のとおり:

(以下、一部抜粋)

お知らせーーーーーーーーーーーー

・この届書により決定された標準報酬月額はその年の9月分保険料(10月納付分)から適用となります。
・7月、8月、9月改定の月額変更に該当する場合は、この算定による定時決定より月額変更による改定が優先されますので、『被保険者報酬月額変更届』を必ずご提出ください。(「⑱備考」欄の「3.月額変更予定」を○で囲んでください。)
・「⑩給与計算の基礎日数」が17日(または15日・11日)以上の月が1月もない場合は、従前の標準報酬月額により決定することになります。
・年間報酬の平均で算定することを申立している場合は、『被保険者報酬月額算定基礎届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等』に記入した「修正平均額」を「⑯修正平均額」欄にご記入ください。
・「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間または1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3未満の者のうち、週20時間以上勤務する者であって、国又は地方公共団体等に属する事業所及び特定適用事業所に使用されていること等、一定の条件を満たした者をいいます。
・「パート」とは、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の短時間就労者をいいます。
短時間労働者」と記入)

 

「2.算定基礎届の記入・提出ガイドブック令和4年度」

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/santei.guide.book-r4nendo.pdf

 

(以下、一部抜粋)

前書

健康保険および厚生年金保険の被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じな
いように、7月1日現在で使用している全ての被保険者に4~6月に支払った賃金を、事業主の
方から「算定基礎届」によって届出いただき、厚生労働大臣は、この届出内容に基づき、毎年1
回標準報酬月額を決定します。これを定時決定といいます。
「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月
に適用され、納めていただく保険料の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となります。

 

p1

1.算定基礎届の提出について
(1)提出期間等
提出期間:7月1 日(金)から7月11日(月)まで
提出先 : 算定基礎届送付時に同封している返信用封筒により事務センターへ郵送
または管轄の年金事務所担当窓口
照会先:管轄の年金事務所
(2)ご提出いただくもの
※ 令和3 年度から「被保険者報酬月額算定基礎届総括表」を廃止しましたので、提出は不要
です。
①「届出用紙」で提出する場合
ア被保険者報酬月額算定基礎届(70 歳以上被用者算定基礎届)
《該当する方がいる場合は、次の届書も必要になります。》
イ被保険者報酬月額変更届(70 歳以上被用者月額変更届)【7 月改定者】
○ ご不明な点がありましたら、日本年金機構ホームページ(https://www.nenkin.go.jp/)
をご確認ください。

上のリンク先の 定時決定(算定基礎届) をクリックすると以下:

提出対象者

算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在のすべての被保険者および70歳以上被用者です。
ただし、以下の(1)~(4)のいずれかに該当する方は、算定基礎届の提出が不要です。
(1)6月1日以降に資格取得した方
(2)6月30日以前に退職した方
(3)7月改定の月額変更届を提出する方
(4)8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った方(詳細はこちら「8月9月の随時改定予定者にかかる算定基礎届の提出について」)
※上記(3)および(4)の方については、算定基礎届の報酬月額欄を記入せず、空欄としたうえで、備考欄の「3.月額変更予定」に〇を付してご提出ください。
※電子媒体申請および電子申請の場合は、上記(3)および(4)の方を除いて作成してください。
※上記(4)の方について、随時改定の要件に該当しないことが判明した場合は、速やかに算定基礎届をご提出ください。

 

従業員Aの場合、

      • 算定基礎届には記載対象だが、
      • 報酬月額の、⑬合計はー(弥生給与の算定基礎届の記載の仕方を参照)、⑭はゼロ、⑮もゼロ
      • 上の(1)、(2)には当然該当せず、かつ(3)、(4)に該当しないから、
        • 「算定基礎届の報酬月額欄を記入せず、空欄としたうえで、」→これはそうする
        • 「備考欄の「3.月額変更予定」に〇を付してご提出ください。」→これは、(変更自体ができない、決定通知待ちなので)〇で囲まない
        • 月額変更届も不作成、添付しない

 

p19

4.随時改定と月額変更届
毎年1 回の定時決定により決定された標準報酬月額は、原則その年の9 月から翌年の8 月まで1 年間適用されますが、この間に昇給や降給などにより報酬に大幅な変動があったときは、実態とかけ離れた状態にならないよう次回の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直します。これを「随時改定」といい、「月額変更届」を提出していただくことになります。
改定された標準報酬月額は、再び随時改定がない限り、6 月以前に改定された場合は当年の8 月まで、7 月以降に改定された場合は翌年の8 月までの各月に適用されます。

 

従業員Aの場合、

      • 上述の通り、「17日縛り」があるため、提出できない。

 

補足

実務対応は以下の2つか?(私見)

  1. 某社は退職金制度がないので、いったん退職し、次の月にまた再加入してもらう、
  2. 毎月の給与天引き分を、「(個人天引き分+会社負担額)▲あるべき会社負担額」の計算式の金額にさせてもらう。