役員報酬の定期同額給与を減額しうる「業績悪化改定事由」に係る手続は?

問題の所在

顧問先様の中で、法人成りで、(経費があまりないため)従来、役員報酬を高めに計上していたが、売上が激減したため、いわゆる「業績悪化改定事由」に該当するとして、期中から役員報酬をゼロにすることにしたが、話し先行で、具体的な手続を確認した際の備忘メモ。

(なお、いわゆる事前確定給与については、記載外とする)

 

結論

  • 「業績悪化改定事由」を適用する場合、対税務署への特段の届の類を作成・提出する必要はない!
  • 作成すべきは、社内の臨時株主総会議事録であり、まさに「業績悪化改定事由」のため役員報酬を減額する決議を書面化して、(どこにも提出せずに)保存しておく
  • (もちろん、確定申告の際に、(税務権限代理証書ではなく)税理士法33条の1に基づく書面添付書類を作成し、その中で説明し、資料で上の臨時株主総会議事録を同封する、、、、のは、かえってやぶ蛇リスクがある気もしつつ、、、)
  • (今回の事例では、オーナーが社会保険に未加入なので関係ないが)通常は、社会保険の臨時改訂にも該当する可能性が高いので、セットで、変更届も該当する年金事務センターに提出する
  • 令和4年6月時点では、①従来の、「業績悪化改定事由」を適用する場合と、②新型コロナ対応での「業績悪化改定事由」を適用する場合、の2つがあり得るが、両者の違いは理由付けの違いでしかない。
  • ポイントは、「業績悪化改定事由」の議事録への記載とエビデンスであるが、
    • 従来の「業績悪化改定事由」で行く場合には、
    • 新型コロナ対応で行く場合には、広く認められるであろう(文書化する都合だけ考えると、こちらの方が単純で済む気がする(私見)

 

理由

まず、両方について「業績悪化改定事由」の考え方を解説しているのは、以下の記事:

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第14回】「業績悪化改定事由に該当するか否かの判断」

https://profession-net.com/professionjournal/corporation-article-884/

ここでは、「新型コロナ対応での「業績悪化改定事由は、基本的に広く認められる可能性が高い」旨がコメントされている。

 

次に、従来の「業績悪化改定事由」について、税務署への特段の届等が不要な旨は、以下の記事を参考。

(なお、この記事中では、議事録例もダウンロードできる):

役員報酬(定期同額給与)の変更で必要な議事録の雛形(ひな形・雛型)とは?(無料ダウンロード)

(以下、一部抜粋)

ちなみにこの役員報酬変更については、税務署への届出は特に不要です。後日、税務調査で調査官から閲覧を求められたときには必要となりますのでしっかり作成し会社に保管しておきましょう。

 

また、減額の総会議事録例は以下:

https://mag-a.jp/emergencyplan2020/wp-content/themes/emergencyplan/assets/file/%E5%BD%B9%E5%93%A1%E5%A0%B1%E9%85%AC%E9%A1%8D%E3%81%AE%E6%B8%9B%E9%A1%8D%E6%94%B9%E5%AE%9A%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf

 

次に、新型コロナ対応での「業績悪化改定事由」について、国税庁の直近の指針は以下:

 

また、ググってヒットした記事は以下:

 

新型コロナで業績悪化した場合の役員報酬の減額について

 

 

補足

私見では、コロナ禍で売上が減少している中小企業等へ経済産業省が支援金を広く配布している直近の状況では、決算書上で売上が減少していることが明らかであれば、役員報酬を減額して利益調整をする(将来の課税所得を毀損させない)ことは、税務署的にネガティブではないであろう。