S社様用)【2022/9/2修正】「いわゆる間接出向で、出向者本人への給与計算と支給は従来通り出向元企業で行い、その支出実額を後日、出向先企業から出向元企業が一本の金額で受け取る」場合の仕訳の科目は?
問題の所在
★この事例:
- 親会社への出向者1名がおり、いわゆる間接出向ゆえ、本人への給与支払は当社が行い、そのキャッシュアウト分が後日、親会社から振り込まれる。
- 親会社からの補てん分は、以下の①▲②
①本給、②会社負担額である社会保険(健保、厚生年金保険、雇用保険)
(∵源泉所得税と住民税は預り金として整理) - 当社での本人への給与支払は、(出向前と同様に)他の従業委員等と一括で行われる。一人分を抜き出したイメージは以下:
(借)従業員給与 110 (貸)普通預金 85
(借)旅費交通費 10 法定福利費 30
(借) 従業員預り金 5 - この本人の給与相当を親会社から後日、入金されたときの仕訳の科目が問題となる。
ただし、当該一人分を抜き出す仕訳を毎月作成するのは煩雑なので、課税上、弊害がない仕訳を決めておきたい。
これを以下のいずれの仕訳でやるか?(ちなみに、従来は①。ただし通勤費は定期券なので年に2回しか発生しない)
①:
(借)普通預金 85 (貸)旅費交通費 10
( 借雑従業員給与 70
②:
(借)普通預金 85 (貸)旅費交通費 10
( 借雑雑収入 70
結論
以下の理由の、
- 給与手当a/cに充てるメリットは以下:
①給与手当a/cが一番金額が大きいので、影響が緩和される
②税額控除の、賃上げ促進税制の試算エクセル上、
月次残高TB上の毎月の給与手当a/cの借方金額▲当該出向者の給与額面金額
という関係は確保できる(が、やや分かりにくいが、、、)
に鑑み、大過ないので、従来通り①でいく(当面)
理由
消去法的には以下のように雑収入a/cで受け入れるのがベターである:
- 消費税のことがあるので、課税取引である通勤費相当額(=旅費交通費a/c)は、
出向者に支給時と親会社からの補てん時に、きれいに相殺する仕訳にする。 - それ以外の科目である、給与手当a/c、法定福利費a/c、従業員預り金a/cは、
・消費税上非課税取引・不課税取引であり、
・また会計上・法人税上も、間接出向分がキレイに相殺されずに科目の入り繰りが生じても、損益及び所得に影響ないのであるが、以下の個別の検討で、やはり負担させたくない:- 給与手当a/cに充てるメリットは以下:
①給与手当a/cが一番金額が大きいので、月次増減分析で影響が出にくい
②税額控除の、賃上げ促進税制の試算エクセル上、
月次残高TB上の、毎月の給与手当a/cの借方金額▲当該出向者の給与額面金額
という関係は確保できる(が、やや分かりにくい)
③当事務所の記帳方式である仕訳インポート上、キーワードを「〇〇氏」だけで計上も補填も給与手当a/cが自動抽出される。
他方で、給与手当a/cに充てることで生じるデメリットは以下:
①給与計算上、賃金台帳上の額面金額と一致させておきたいが、差額が生じる - 従業員預り金a/cは、源泉所得税の処理とリンクさせる必要があるので、これにも負担させたくない
- 法定福利費は、フロー科目であり、計上額の検証がしにくいので、意味のない金額を負担させたくない
- 給与手当a/cに充てるメリットは以下:
- そこで、(通勤費以外を)全額を雑収入a/cで受け入れる
- 雑収入a/cに、消費税上、課税取引と非課税取引が混在することが前提になってしまうが、期末に判別は容易である。
上の再掲であるが、前提として、当社での本人への給与支払の仕訳も、(出向前と同様に)他の従業委員等と一括で行われ、その一人分を抜き出したイメージは以下:
(借)従業員給与 110 (貸)普通預金 85
(借)旅費交通費 10 法定福利費 30
(借) 従業員預り金 5
親会社から出向者分が振り込まるときの受入仕訳は、
(借)普通預金 85 (貸)従業員給与 75
(貸)旅費交通費 10
なお、この仕訳に関し、上のイメージ仕訳をきれいに振り戻す仕訳の形である
(借)普通預金 85 (貸)従業員給与 110
(借)法定福利費 30 旅費交通費 10
(借)従業員預り金 5
は、実際には一人分を抽出し直すので煩雑であるので採用しない。
次に、逆に、シンプルさを追求するのであれば、
(借)普通預金 85 (貸)従業員給与 85
で十分ではないか?とする考えもあるかもしれない。
これは、たとえばすでに法定福利費a/cが入り組んでいるので、当期純利益に対する影響は同じだからと考えることを論拠とする。
しかし、この方法では、消費税上、課税取引である旅費交通費a/cが相殺漏れになり、課税仕入金額が過大になるため不適当である。
なお、この論点の前提である、出向元企業の通勤費の支払分は補填されるため不課税取引である根拠は以下:
なお、以下の説明では以下の点に注意:
- 「出向元企業が親会社で出向先企業が子会社」であり、当記事の事例の出向関係とは逆である。
- 途中から登場する「派遣社員」ということばは、「え?急に、外部から調達した派遣労働者の話しに変わっているの?」と困惑するかもしれないが、そうではなく、「出向者」の意味である。
- 補填が先に入金される前提であるが、当記事の事例の場合は逆で、補填入金されるのは後である。
給与負担金(給料及び旅費、日当の実費負担)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/07.htm
(以下、一部抜粋)
また、派遣社員(=この文章では「親会社からの出向者」(=この記事の事例では「子会社からの出向者)、以上筆者加筆)
の旅費、通勤費、日当など(旅費等)を区別して親会社(=この記事の事例では「子会社からの出向者)、以上筆者加筆)
に支払う場合、これらの旅費等は派遣先の子会社(=この記事の事例では「派遣先の親会社」、以上筆者加筆)
の事業の遂行上必要なものであることから、その支払は課税仕入れに該当することになり、また、旅費などの実費相当額の支払を受ける親会社(=この記事の事例では「支払いを受ける子会社」、以上筆者加筆)
においては、派遣社員(=この文章では「親会社からの出向者」(=この記事の事例では「子会社からの出向者)、以上筆者加筆)
に支給すべき旅費、日当に相当する金額を預かり、それをそのまま派遣社員に支払うにすぎないから、課税の対象とはなりません。
(⇒だから、入金時に相殺して消去する必要上がる:筆者注)
補足
(2022/9/21追記)「期中は雑収入a/cで計上し、決算整理で給与手当a/cと相殺」がベターか?
以下の記事は、出向に係る論点を網羅的に解説してくれていますが、補填される通勤費の消費税法上の扱いと調整については触れておらず、給与本体と合算で雑収入a/cで計上することを例示されている:
(以下、一部抜粋)
(2)給与負担金受取時の勘定科目(出向元)
出向元は、給与相当額を出向先から受け取りますが、受取額は「給与」のマイナスではなく、「受取手数料」あるいは「雑収入」等の科目で「収入計上」する方がわかりやすいと思います。
理由は上記(1)と同様です。給与のマイナス処理をすると、給与の源泉所得税との関係がわかりにくくなりますので、「給与」は支給額を示しておく方が、わかりやすいと思われます。
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