L社様用、M社様用)いわゆる賃上拡大促進税制でいう「中小企業者」とは?「大規模法人」とは?
問題の所在
DL IBEXクラウド組曲Majorで、新規法人を登録する際に、「中小企業者区分」なるものがあり、
中小企業者 と それ以外 に区分を求められる。
ここでいう「中小企業者」は、租税特別措置法第42条の4第8項第7号で規定されるもので、特にいわゆる旧所得拡大促進税制(令和4年4月1日以降の現 賃上促進税制)の適用対象の要件に直結する。
★法人税でいう「中小企業」とは異なる(補足で後述)
これにつき、以下の事例に当てはめて検討した際の備忘メモ:
SL社
- 100%子会社。
- 親会社の資本金が、9,000万円台、自社の資本金は1,000万円。
- 親会社の期末時点での従業員数が、1,500人超。自社の従業員数は10人。
M2社
- 100%子会社。
- 親会社の資本金が、6億5,000万円台、自社の資本金は3,000万円。
- 親会社の期末時点での従業員数が、1,500人超。自社の従業員数は150人。
結論
SL社
中小企業者の要件のうち、
(1)以下のいずれかに該当する法人
に該当するため、中小企業者の要件を満たす。
M2社
中小企業者の要件のうち、
(1)以下のいずれかに該当する法人
の当該いずれかのうち1つが該当しないため、中小企業者の要件を満たさない。
理由
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まず、中小企業庁のhpにピンポイントで「中小企業者」の定義が表形式でアップされているが、その脚注に「上記にあげた中小企業の定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた「原則」であり、法律や制度によって「中小企業」として扱われている範囲が異なることがあります。」とあるため、これは参考程度:
中小企業・小規模企業者の定義 1.中小企業者の定義
https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html
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次に、現行の、いわゆる賃上促進税制の記事をアップ:
中小企業向け「賃上げ促進税制」(令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象)
制度詳細については「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック」、「中小企業向け賃上げ促進税制よくあるご質問Q&A」をご覧ください。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
そのガイドブックが以下で、その中での中小企業者の意義は以下の2ページ:
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin04gudebook.pdf
そのQ&Aが以下で、その中での中小企業者の意義は以下のQ1:
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin04qa.pdf
いずれも一言一句同じ文言で以下:
(中小企業者等)
青色申告書を提出する者のうち、以下に該当するものを指します。
(1)以下のいずれかに該当する法人
(ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15 億円を超える法人は本税制適用の対象外)
①資本金の額又は出資金の額が1億円以下法人
ただし、以下の法人は対象外
・同一の大規模法人(資本金額若しくは出資金が1億円超の法人、資本金若しくは出資を有しない法人
のうち常時使用する従業員数が 1,000 人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金が5億円以上
である法人等)との間に当該法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社
を除きます。)から2分の1以上の出資を受ける法人
・2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
②資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が 1,000 人以下の法人
(2)常時使用する従業員数が 1,000 人以下の個人事業主
(3)協同組合等(中小企業、出資である商工※)
※協同組合等に含まれる組合は、
農業協同組合、農業連合会、
中小企業等協同組合、
出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、
出資組合である生活衛生同業組合、
漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連会、
森林組合並びに森林組合連合会です。
▼
上のオレンジ部分がわかりにくいため、分解すると、
同一の大規模法人(資本金額若しくは出資金が1億円超の法人、資本金若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が 1,000 人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)から2分の1以上の出資を受ける法人
↓
同一の大規模法人(資本金額若しくは出資金が1億円超の法人、資本金若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が 1,000 人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)から2分の1以上の出資を受ける法人
↓
同一の大規模法人(資本金額若しくは出資金が1億円超の法人、資本金若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が 1,000 人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)から2分の1以上の出資を受ける法人
↓
大規模法人 の要件は、以下の「1,2,又は3をいい,中小企業投資育成株式会社を除きます」つまり、いずれかを満たすこと:
- 資本金額若しくは出資金が1億円超の法人、
- 資本金若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が 1,000 人超の法人
- 大法人(資本金の額又は出資金が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等
- 中小企業投資育成株式会社を除きます
↓
以上をこの事例に当てはめると、
- 資本金額若しくは出資金が1億円超の法人
→ SL社は100%親会社の資本金は9千万円台なので、1億円超ではないので、該当無し
→ M2社は100%親会社の資本金は6億円台なので1億円超であるため、該当する - 資本金若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が 1,000 人超の法人
→ SL社もM2社も、100%親会社がそもそも資本金を有しているので、該当無し - 大法人(資本金の額又は出資金が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)
→ SL社は、100%親会社の資本金は9千万円台であり、そもそも5億円未満なので、親会社は大法人ではないため、該当無し
→ M2社は、100%親会社の資本金は6億円台であり、5億円以上であるため大法人に該当し、
かつ、100%親会社なので完全支配関係がある。 - 中小企業投資育成株式会社を除きます
→ 100%親会社は中小企業投資育成会社ではないため、該当無し
となり、
・SL社は上の1.から4.のいずれかも該当しないため、該当無し。
・M2社は上の1.と3.が該当するので、「1.から4.のいずれかが該当」に該当する。
ゆえに、戻って、事例の会社は、
SL社
(中小企業者等)
青色申告書を提出する者のうち、以下に該当するものを指します。
(1)以下のいずれかに該当する法人
(ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15 億円を超える法人は本税制適用の対象外)
①資本金の額又は出資金の額が1億円以下法人
に該当する。
M2社
(中小企業者等)
青色申告書を提出する者のうち、以下に該当するものを指します。
に該当しない。
補足
租税特別措置法上の「中小企業者」と、法人税法上の「中小法人等」は、以下の2つの記事が参考になる(が、上の方がわかりやすい):
中小法人と中小企業者の範囲と取り扱い
https://nbs-nk.com/column/detail.php?id=403
第148回 租税特別措置法上の「中小企業者」と法人税法上の「中小法人等」 ~両者の判定に相違が生じる場合あり~
https://www.zeiken.co.jp/news/091955.php
なお、「適用除外事業者」とは前3事業年度の平均所得金額が15億円超の中小企業者をいうが(措法42の4⑧六の二(H31改正法案では八))。
なお、設立後3年未満の法人や合併等組織再編が行われた場合は、平均所得金額の算定方法が複雑となるため留意が必要(詳細は下記関連記事を参照)。
解説記事は以下:
https://profession-net.com/professionjournal/corporation-report-115/
また、中小企業者の意義については、旧所得拡大促進税制の時と不変である。そのリンク先が以下:
本ページは、令和3年3月31日以前に開始された各事業年度(個人事業主は令和3年以前の各年)に係る制度のご案内ページとなります。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudaiH30.html
上の時のガイドラインが以下。このQ22をみると、現賃上拡大促進税制の中小企業者の定義と同一であり、前後で変更なしであることが分かる:
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudaiqanda.pdf
(一部抜粋)
Q22.中小企業者等に該当する要件は何か。
A22.資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人でその発行済株式又は出資の総数又は総額の一
定割合(1 つの法人により 50%又は複数の法人合計で 3 分の 2)以上を大規模法人(資本金の額が
1億円超の法人、その他一定の法人)に所有されていない法人、及び資本若しくは出資を有しない法
人又は個人で、常時使用する従業員の数が 1、000 人以下のものをいいます。(租法 10③、42 の 4③、
租法施行令 5 の 3⑨、27 の 4⑫)
なお、平成 31 年 4 月 1 日以降に開始する事業年度では、その事業年度開始の日前 3 年以内に終
了した各事業年度(基準年度)の所得の金額の年平均が 15 億円を超える法人は、この中小企業者
等から除外されるため、適用条件が大企業と同様になります。
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