いわゆる一人会社(法人成り)で、業績が悪化したという理由だけで、役員報酬は減額しても損金算入可になるの?
問題の所在
役員報酬は、①定期同額給与、②事前確定届出給与、(③業績連動は中小閉鎖会社では考慮外)があり、①定期同額給与 の場合には、文字通り、原則として毎月一定額である。
しかし、業績悪化した場合には減額しても当該減額した金額をも損金計上できることになっているが、特に一人会社(法人成り)の場合も、本当にそう?
結論
一人会社(法人成り)の場合には、通常は、まず無理。
★例外は以下の理由を参照。
理由
国税庁のQ&Aに、
業績悪化改定事由の場合、単純に、PLの利益等の減少だけでなく、「第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員報酬を減額せざるを得ない事情が生じている」必要がある。
の旨の記述がある。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf
(以下、一部抜粋。太字は引用者加筆)
このため、例えば、次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになると考えられます。
① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の- 2 – 額を減額せざるを得ない場合
③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
上記①については、株主が不特定多数の者からなる法人であれば、業績等の悪化が直ちに役員の評価に影響を与えるのが一般的であると思われますので、通常はこのような法人が業績等の悪化に対応して行う減額改定がこれに該当するものと考えられます。
一方、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ、役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にあるような会社についても、上記①に該当するケースがないわけではありませんが、そのような場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があることに留意してください。
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補足
この点に関し、一人会社(法人成り)では、
- 株主は社長自身であり、
- 「取引銀行との協議状況」と呼べるほどの規模の事業はしておらず、
- 経営改善計画なども未作成
と3つのいずれも該当がないことが通常だから。
参考図書と解説はこちら:
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