当事務所用)【2024/8/16追記】役員報酬の未払金a/cでの月割計上は損金になるの?

問題の所在

役員報酬の計上の相手科目が未払金a/cなどになるのは以下のケースがありうる:

1)いわゆる定額同額支給だが、資金繰り等の事情で、未払になることがある。

2)期中現金主義で処理してきて、節税案で13ヶ月目分を未払費用a/c

3)毎月、役員報酬・従業員給与を、毎月、発生主義で計上していて、決算でも未払費用a/cで計上(トータルで12ヶ月分)

役員報酬の未払計上については、税務調査で否認されたとも聞く。他方で、定額同額支給を維持する意味では、未払で計上せざるを得ない気もする。

では期中はいいとして(!)、期末時点で上の1),2),3)の各未払計上の場合、そのまま損金計上してOKか?

 

★なお、計上する場合の科目の候補には、未払金a/cと未払費用a/cとがあるが、

以下のブログの記事の、①継続的な役務提供である、②支払い義務が確定している、③具体例で給与が挙げられている、等に鑑み、未払費用a/cの一択でいく:

未払費用と未払金の違いと共通点、便利な使い分け方法を公認会計士が解説

 

結論

上の、1),2)3)とも、未払金a/c計上又は未払費用a/c計上で、損金OKと解する。

 

理由

横断的な解説をされている記事は以下:

役員報酬の未払計上は否認されるのか?

個別には以下:

1)について

役員報酬の未払計上については、例えば、一時的な資金繰りのために未払計上していたのであれば、資金繰りが解消された段階で未払いの計上を解消していなければ認められないとする考え方がある。

しかし、法人税法の役員報酬の法律をいくら読んでも、未払計上が認められないとする要件は出てこない。

また、資金繰り悪化が未払計上の要件でもなければ、資金繰り悪化解消時の支払(未払解消)が要件でもない。

現在は定期同額が原則要件であることから、未払計上しても法人の所得調整はできない。

例えば、「法人の所得が多額になったことから総会議事録をバックデートし、過去遡及して役員報酬を増額・未払計上する」ような事例は、法律要件を満たしていませんので、当然、否認されることになる。この点を立証するには、本来、源泉所得税については、「支払時」に源泉・納付義務があるわけですが、実務上は未払計上であっても(源泉・納付義務がない時でも)あえて源泉申告・納付をするのは、過去遡及して役員報酬を増減していないことを証拠として残しておけば万全です。(未払の支給時に二重にしはらうことのないよう)

別途、参考記事はこちら:

役員報酬の未払い金は損金算入できる?源泉徴収の扱い方も解説

https://ashiyakaikei.com/directors-unpaid/#i-8

 

2)について

以下の記事が参考になる。端的に言えば、両説があるが実務上許容されているであろう、

役員報酬の未払計上

(以下、一部抜粋)

例えば、給与の計算期間が末締めの翌月払いであるような場合には、従業員給与は月末時点で確定債務となり、未払計上されるのが通常だと思いますが、役員報酬も給与と同様に当初より末締めの翌月払いという実務を行っていた場合に未払計上は認められるのかという疑問があります。ここで、株式会社の役員は会社との関係でいえば委任契約であり、雇用契約ではありません。契約関係が異なる事により、当該未払処理が異なってくるのか否かですが、見解は分かれているようです。

ネット等で色々調べてみると、未払計上出来ない派は、たいていの理由は委任契約だから末締め等の概念が無いためとの事のようで、未払計上問題無い派は、委任契約であれ、末時点で債務が確定しているので当然未払計上可能だという事のようです。

念のため、国税局の電話相談センターにも問合せをしてみましたが、2回電話させて頂いて1回目がまあ問題無いだろうという事で、2回目が委任契約なので本来は末締めという概念は出ないが、実務上未払計上で従来より処理している場合に、税務調査等においてそこをどうこうという事はまずないと思うので大丈夫だろうという事を丁寧に説明頂きました。

そもそも民法によれば、「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。」(民法648条2項)となっていますが、会社との間で末日を区切りとしているならば私は末日を持って債務が確定するという考えで良いのでは無いかと思います。実際役員報酬の未払計上のケースはあまり見ないですが、税理士との顧問契約は、こちらも委任契約になりますが、こちらは末締めで未払計上するケースを割と見る事があります。

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【2024/8/16追記】

以下の書籍のp121-122に、

月割は期間によって報酬を定めた場合には、雇用契約の場合と同様に(民法624②)、期間の経過によって報酬請求権が生じることとされています(民法648②但書)。そこで、役員についても、月額報酬を支給することとしている場合には、月単位での執務執行期間の終了時に報酬請求権が生じることとなります。

ただし、これは、職務執行期間が報酬と結びつき、月単位での委任対価を支払うこととしているからに他なりません。役員報酬の場合、雇用のように、日々あるいは時間単位で報酬請求権が生じるというような単位期間の定め方は、通常なされることがありません。役員の場合は、日割計算によって報酬請求権が生じることにならず、日割りでの未払計上はできないと解されます。

と記載がある。

日割計算による未払計上ができない主旨であるが、換言すると、月割計算による未払計上を肯定していることになる。

 

3)について

これは、12ヶ月分なので、定期同額給与の規定を全面に押し出して (^^)、損金可能であろうと解する。

 

補足

なお、「未払計上の月の分の源泉所得税を控除する/しない論点」については、上の「別途、参考記事」もあるとおり、趣旨は「遅くとも支払時のタイミングには控除してね」という当たり前のことと解されるので、そうならば、先行して未払時に控除することは是認されると考えられる。

ただし、給与ソフトでの通常の設定は、給与支払時に給与天引きするので、上の先行計上だとズレる (^^)