令和7年通達改正で明文化された、フリーレントの借手の税務処理の内容は?
問題の所在
令和7年通達改正で、フリーレントの借り手の税務上の扱いが明文化されたようなので、ググったときの備忘メモ。
結論
以下の2つがわかりやすい:
①要約版
フリーレントの法人税処理が明確化
(以下、一部抜粋)
◆2つの損金処理方法のうち、どちらを選ぶ?
処理方法 | 内容 | 実務上の扱い |
① 支払基準(従来) | 賃料の支払があった年度に損金算入 | 中小企業では主流 |
② 按分基準(新設) | 賃料総額を賃借期間で按分して各年度に損金算入 | 新たに選択可能に! |
◆ 課税上の弊害があるケースとは?
フリーレント期間がなかったと仮定した場合との金額差が20%超となる場合
フリーレントが5割以上の期間を占める(契約開始年度で4ヶ月超の無償期間)と見込まれる場合
◆ 中小企業にもメリットあり
実際の会計処理と法人税処理が一致することで、税務リスクの軽減や説明負担の軽減が期待されます。
◆ まとめ
フリーレントの法人税処理が通達で明確化されました。
按分処理が可能となり、より柔軟な損金処理が可能です。
中小企業にも適用可能ですが、損金経理と課税上の弊害の有無がポイントです。
②詳細版
【新リース基準】フリーレントの税務処理が明確化【R7年改正通達】
(以下、一部抜粋)
フリーレント期間中は会計処理しない方法(A法)は改正後も採用可能
通達を参照する前にまず法人税法の本法を確認します。
法人税法 第53条
内国法人が資産の賃貸借で第64条の2第3項(リース取引に係る所得の金額の計算)に規定するリース取引以外のもの(以下この項において「賃貸借取引」という。)によりその賃貸借取引の目的となる資産の賃借を行つた場合において、その賃貸借取引に係る契約をした事業年度以後の各事業年度においてその契約に基づき当該内国法人が支払うこととされている金額(その資産の賃借のために要する費用の額又はその資産を事業の用に供するために直接要する費用の額を含むものとし、次に掲げる額に該当するものを除く。)があるときは、その支払うこととされている金額のうち当該各事業年度において債務の確定した部分の金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
一 第22条第3項第1号(各事業年度の所得の金額の計算の通則)に掲げる原価の額
二 固定資産の取得に要した金額とされるべき費用の額及び繰延資産となる費用の額
2 前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
上記は売買に該当しない賃貸借取引(オペレーティング・リース取引)の場合の規定です。フリーレント条項が盛り込まれるような不動産の賃貸借契約は上記の賃貸借取引該当することが多いと想定されます。
次に、「債務の確定した部分の金額は、」と規定されています。フリーレント期間については、賃貸借期間は経過しているものの、賃貸借契約上の賃料支払義務が成立しておらず、債務が成立していないことから、フリーレント期間に対応する賃料相当額は損金算入出来ないものと考えられます(平成30年6月15日裁決事例・財務省 令和7年 税制改正の解説 参考)。
そのため、法人税法で規定されている計算方法としては、「賃料の支払時に費用処理する方法(A法)」となります。
新設された法人税基本通達12 の 5- 3- 2のポイント
賃料総額を按分する方法(B法)による会計処理が出来ることが明文化
今回新設された通達の内容を確認します。
(無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入)
12 の 5- 3- 2 賃借期間のうち賃料の支払がない又は通常に比して少額である期間(無償等賃借期間)が定められた契約のうち、次に掲げる場合に該当するなどの課税上弊害があるもの以外のものに基づく法第 53 条第1項に規定する賃貸借取引に係る当該契約に基づき支払うこととされている金額についての同項の規定の適用に当たって、当該金額が当該賃借期間にわたり支払われるべきものとした場合に各事業年度中に支払われるべきこととなる金額(当該事業年度終了の日までに損金経理をした金額に限る。)を当該各事業年度の損金の額に算入するものとする。
国税庁 法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)より
少し読みづらいですが、ポイントは以下です。
・フリーレント契約については、契約期間の賃料総額をフリーレント期間を含めた契約期間で按分して実質的な1月当たりの負担額を算出しその額を賃借開始時から費用計上を行う方法で計算する(前段落のB法)。
・上記処理を行うためには損金経理することが要件とされ、申告調整による損金算入は出来ない。損金経理を行えば上場企業だけでなく中小企業もこの方法で計算することが出来る。
・課税上弊害があるものはこのB法で計算することが出来ない(後述)。
按分計算する場合の「課税上弊害があるもの」とは?
通達の続きです。「次に掲げる場合に該当するなどの課税上弊害があるもの」として例示が2つ挙げられています。
(無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入)
12 の 5- 3- 2 (続き)
⑴ 当該無償等賃借期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額と当該契約に基づき支払うこととされている金額との差額が当該契約に基づき支払うこととされている金額のおおむね2割を超える場合
⑵ 当該賃借期間の開始の日の属する事業年度終了の日において、当該無償等賃借期間内の日の属する各事業年度のいずれかの事業年度で、当該事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合(当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限る。)
国税庁 法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)より
(1)は、フリーレントに相当する金額が契約に占める割合が大きすぎる場合です。
(2)は、1事業年度のうちフリーレント期間が長すぎる場合です。
按分計算する場合には、しない場合と比較して、損金計上時期が早くなるため、上記のようにフリーレント期間の影響が大きくなるような契約については損金算入時期をB法で処理することが制限されているものと考えられます。
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理由
特記事項なし
補足
特記事項なし
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