T様用)海外出張での交際費、会議費のレシート(外貨)の円換算に適用する為替レートは?
問題の所在
以下の事例:
・業務受託業で、例えば韓国にスタッフ同伴で出張し、作業をする。
・現地での交際費、会議費のレシート(ウォン建)が提出される。
・実際に費消した月と、当該レシートが提出された月がズレる。
↓
提出されたレシートに適用する為替レート、個々の取引日の為替レートを適用していたら煩雑なので、
通達で許容されている中から、継続適用するものを決めるための、備忘メモ。
結論
当社では、いわゆる社内レートを、「みずほ銀行hpにアップされている、取引日の属する月、の前月の末日、のTTS」とする。
ポイントは以下:
- 提出月の為替レートを適用できると助かるが、そこまでの融通は認められない。
- 月初を選択することも可能であるが、なんとなく月末の方が容易な気がする。
- 前月の月初を選択することも可能であるが、月中の平均値になるので、煩雑である。
- TTM、TTS、TTBのいずれも可能であるが、みずほ銀行のhpから入手しやすいのがTTMだから。
- みずほ銀行hpのリンク先は以下。
ヒストリカルデータ
https://www.mizuhobank.co.jp/market/historical/index.html
なお、以下の注意事項が掲載されている。(関係するものは太字にしている)
注意事項
- このページには、公示相場(仲値)および、みずほリファレンスのデータファイルをおいておりますが、これらはあくまでもご参考としてご提供するものです。
- 公示相場については、収録したデータはすべて初回公示分です。相場の変動により公表停止・再公表がある場合でも、それは含まれておりません。
- 韓国ウォンとインドネシアルピアは、100単位としています。
- 中国人民元は、主に中国国外で取引されている「オフショア中国元」のレートを基準としています。
理由
以下の法人税基本通達の中から選択可能なものを適用しただけ(なお文中の太字は引用者加筆)
(外貨建取引及び発生時換算法の円換算)
13の2-1-2 法第61条の8第1項《外貨建取引の換算》及び法第61条の9第1項第1号イ《発生時換算法の意義》の規定に基づく円換算(法第61条の8第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は、その取引を計上すべき日(以下この章において「取引日」という。)における対顧客直物電信売相場(以下この章において「電信売相場」という。)と対顧客直物電信買相場(以下この章において「電信買相場」という。)の仲値(以下この章において「電信売買相場の仲値」という。)による。ただし、継続適用を条件として、売上その他の収益又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の費用(原価及び損失を含む。以下この章において同じ。)又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。(平12年課法2-7「十九」により追加、平12年課法2-19「十五」により改正)
(注)
1 本通達の本文の電信売相場、電信買相場及び電信売買相場の仲値については、原則として、その法人の主たる取引金融機関のものによることとするが、法人が、同一の方法により入手等をした合理的なものを継続して使用している場合には、これを認める。
2 上記の円換算に当たっては、継続適用を条件として、当該外貨建取引の内容に応じてそれぞれ合理的と認められる次のような外国為替の売買相場(以下この章において「為替相場」という。)も使用することができる。
(1) 取引日の属する月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の電信買相場若しくは電信売相場又はこれらの日における電信売買相場の仲値
(2) 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買相場の仲値、電信買相場又は電信売相場の平均値
3 円換算に係る当該日(為替相場の算出の基礎とする日をいう。以下この(注)3において同じ。)の為替相場については、次に掲げる場合には、それぞれ次によるものとする。以下この章において同じ。
(1) 当該日に為替相場がない場合には、同日前の最も近い日の為替相場による。
(2) 当該日に為替相場が2以上ある場合には、その当該日の最終の相場(当該日が取引日である場合には、取引発生時の相場)による。ただし、取引日の相場については、取引日の最終の相場によっているときもこれを認める。
4 本邦通貨により外国通貨を購入し直ちに資産を取得し若しくは発生させる場合の当該資産、又は外国通貨による借入金(社債を含む。以下この(注)4において同じ。)に係る当該外国通貨を直ちに売却して本邦通貨を受け入れる場合の当該借入金については、現にその支出し、又は受け入れた本邦通貨の額をその円換算額とすることができる。
5 法第61条の9第1項《外貨建資産等の換算額》に規定する外貨建資産等(以下この章において「外貨建資産等」という。)の取得又は発生に係る取引は、当該取得又は発生の時における支払が本邦通貨により行われている場合であっても、本通達の本文及び(注)2から4までを適用し、当該外貨建資産等の円換算を行う。
6 いわゆる外貨建て円払いの取引は、当該取引の円換算額を外貨建取引の円換算の例に準じて見積もるものとする。この場合、その見積額と当該取引に係る債権債務の実際の決済額との間に差額が生じたときは、その差額は、13の2-1-11《製造業者等が負担する為替損失相当額等》により益金の額又は損金の額に算入される部分の金額を除き、当該債権債務の決済をした日(同日前にその決済額が確定する場合には、その確定した日)の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。
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補足
上の通達をわかりやすく解説している記事は以下:
2024.06.17 外貨建取引に係る税務上の取扱い
(以下、一部抜粋)
⑴日々の外貨建取引の円換算
外貨建取引の円換算方法は、原則、その取引日における対顧客電信売買相場の仲値、TTM(Telegraphic Transfer Middle)で換算することになります。
但し、継続適用を条件として、売上やその他の収益、資産については取引日の対顧客電信買相場TTB(Telegraphic Transfer Buying)で、仕入やその他の費用、負債については、取引日の対顧客電信売相場TTS(Telegraphic Transfer Selling)で換算することが認められています。
なお、よく、TTSとTTBを取り違う方がいらっしゃいますが、銀行側からみて通貨を銀行が売る場合はTTS、反対に銀行側が通貨を買う場合がTTBと覚えておくと間違いがないと思います。
原則はその取引日のTTMを使うのですが、上記のように、TTSもしくはTTBを使うことができるほか、継続適用を条件として合理的と認められる一定日もしくは一定期間の円換算額を使用することもできます。
法人税基本通達13の2-1-2に規定があり、一つには、継続適用を条件として、取引日の属する月もしくは週の前月末日、前週末日のTTSもしくはTTBまたはTTMを適用するというものです。すなわち、月末もしくは週末のレートを使う訳です。また、取引日の属する月もしくは週の当月の初日のTTSもしくはTTBまたはTTMを適用することも認められています。すなわち、月初もしくは週の初めのレートを使う訳です(これらは一定日のレートを使うやり方になります。)
その他、取引日の属する月もしくは週の前月もしくは前週のTTMやTTS,TTBの平均値を使うこともできます。すなわち、前月もしくは前週の平均レートを使う訳です(こちらは一定期間のレートを使うやり方になります。)
ここでの注意事項として、一定期間の長さは1か月以内となっていますので、半年とか1年間など平均値は使うことができません。
この一定日のレートや一定期間の平均値のレートを使うやり方は、実務では、よく社内レートとして使われることになります。
外貨での取引が頻繁な会社では、取引日でのレートを毎日確認して円換算するのは大変な手間と労力が必要となります。そこで、例えば、前月や前週といった一定期間の平均レートもしくは前月末や前週末といった一定時点のレートなど、その会社の取引実態に合った合理的な社内レートを用いて、日々の外貨建取引を円換算するといったことを実施しているわけです。当然、このようなやり方を会計でも税務でも認めていることになります。
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