E様用)税効果会計における、資産除去債務の扱いは?
問題の所在
資産除去債務は、わかりにくいので (^o^)、特に税効果会計における扱いを棚卸しした際の備忘メモ。
なお、以下の記事は特集記事であるが、大変参考になる:
税効果会計の実務ポイント解説シリーズ 第2回 資産除去債務に関する税効果の実務論点 情報センサー2019年2月号 会計情報レポート
https://www.ey.com/ja_jp/technical/library/info-sensor/2019/info-sensor-2019-02-03
結論
以下の通り:
・負債に計上される資産除去債務(科目 資産除去債務a/c)は将来減算一時差異に該当。
・資産に計上される資産除去債務に対応する除去費用(科目 建物a/c等)は将来加算一時差異に該当。
・それぞれが税効果会計の対象となる。
・このうち将来加算一時差異については、原則として繰延税金負債を計上することとなる。
・一方、将来減算一時差異については、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、回収可能性適用指針)に従い、繰延税金資産の回収可能性を検討し、回収可能と認められる部分についてのみ、繰延税金資産を計上することとなる(企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下、税効果適用指針)第8項(1))。
・資産除去債務(負債)に係る将来減算一時差異の解消年度は、将来の除去費用の支出時となる。
・「将来解消年度が長期にわたるものの、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有するもの」として、回収可能性適用指針第35項における「解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い」の定めを用いることができるかどうかが論点となる。
解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い
- 35. 退職給付引当金や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異のように、スケジューリングの結果、その解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異は、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有する。これらの将来減算一時差異に関しては、第15項から第32項に従って判断した分類に応じて、次のように取り扱う。
- (1) (分類1)及び(分類2)に該当する企業(第28項に従って(分類2)に該当するものとして取り扱われる企業を含む。)においては、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。
- (2) (分類3)に該当する企業(第29項に従って(分類3)に該当するものとして取り扱われる企業を含む。)においては、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)において当該将来減算一時差異のスケジューリングを行った上で、当該見積可能期間を超えた期間であっても、当期末における当該将来減算一時差異の最終解消見込年度までに解消されると見込まれる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。
- (3) (分類4)に該当する企業(第28項に従って(分類2)に該当するものとして取り扱われる企業及び第29項に従って(分類3)に該当するものとして取り扱われる企業を除く。)においては、第27項と同様に、翌期に解消される将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。
- (4) (分類5)に該当する企業においては、原則として、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性はないものとする。
- 35. 退職給付引当金や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異のように、スケジューリングの結果、その解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異は、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有する。これらの将来減算一時差異に関しては、第15項から第32項に従って判断した分類に応じて、次のように取り扱う。
・この点に関して、資産除去債務に係る将来減算一時差異は除去費用の支出時に一時に解消されるものです。回収可能性適用指針第35項における退職給付引当金や建物の減価償却超過額のように長期にわたり解消される将来減算一時差異とは解消のパターンが異なるものであるため、回収可能性適用指針第35項の定めを用いることはできないと考えられる。
・結論を先に示すと、資産除去債務について各分類における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いを示すと<表1>であり、第35項と比較すると、分類1及び分類4は一緒、分類2では理屈が異なるが結論は同じであり、分類3ではスケジューリングが可能な分のみが回収可能であるため結論も異なる。
① (分類2)の会社の場合
・回収可能性適用指針の企業の分類が(分類2)の会社の場合には、当該一時差異がスケジューリング可能と判断されるか否かが重要な論点となります。資産除去債務(将来減算一時差異)に対応する繰延税金資産について、処分に係る決議等が行われていない場合でも、支出時期(除去時期)を合理的に見積ることにより金額が算定されているため、回収可能性適用指針第3項(5)②に定められる将来の一定の行為の実施に係る「実施計画」があると判断されるものと考えられます。
→ 従って、当該将来減算一時差異は(スケジューリング不能ではなく)長期ではあるがスケジューリング可能、と考えることができ、全額が回収可能性があると判断されます。
② (分類3)以下の会社の場合
A 収益力に基づく課税所得
・企業の分類が(分類3)以下の会社については、資産除去債務見合いの将来減算一時差異に関して、将来の課税所得によって回収されると判断されれば、繰延税金資産が計上される。
・将来の課税所得の見積額による回収可能性を判断する場合、(分類3)の場合にはおおむね5年を限度とし、(分類4)の場合には翌年1年間の課税所得のみを見積ることになります。
・なお、(分類5)の会社について、収益力に基づく将来の課税所得の見積りにより回収可能性を判断することができない点は、他の将来減算一時差異の回収可能性の判断の際と同様。
B スケジューリングされた将来加算一時差異との相殺の取扱い
・資産除去債務に対応する除去費用(将来加算一時差異)は、減価償却により解消されていくため、回収可能性適用指針第11項の手続の中で、それぞれの解消見込年度において対応する将来減算一時差異のスケジューリング額(将来減算一時差異の解消見込年度及び税務上の欠損金の繰越期間での解消予定額)がある場合には、当該対応する将来減算一時差異に関して、繰延税金資産が計上されることになります。
・また、回収可能性適用指針第11項の相殺の手続においては、回収可能性適用指針で定められる企業の分類の影響がないと考えられます。すなわち、将来減算一時差異と将来加算一時差異の相殺を見込む期間は、企業分類による課税所得の見積期間と整合させる必要はなく、例えば、(分類5)の企業であったとしても、スケジューリングされた将来加算一時差異と相殺させることで、将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断されます。
補足
特記事項なし
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