役務の提供を受けなかったのに外注費を支払うケースの消費税法上の課非判定と、PLの計上区分は?

問題の所在

以下の事例:

・上場会社のグループ会社のT社。親会社持分100%子会社。(自身は非上場)

・6月中に、T社から外注先のA社へ口頭発注(契約書等なし)したが、続信を失念していたため、A社は対T社の業務を全く行わず(全く稼働がなく)(したがってT社も何も検収もせず)が6月が終了し、7月の月初にこの分160万円(税抜き)をA社から請求された。

・T社の顧問税理士の助言は以下のとおり:

①A社に請求書をつくらせ、T社へ提出させる、

②T社はその請求書を受け取って、支払う。なお、A社からの請求書上の金額は消費税込み176万円であろうからこの金額で支払うが、違約金に準ずるため不課税取引処理と指示。
★つまり仕訳は、(借)○○費 176(税抜き)(貸)普通預金 176

・PLの計上科目については、営業外の雑損失a/cで計上すると、(新)半期報告書上、連結ベースで「その他」で逃げたいところ、四半期基準の重要性基準(20%基準)を超過してしまうため、具体的な独立科目表示に格上げになってしまうため具合が悪い。そこで、例えば販売費及び一般管理費の雑費a/cに含めることの当否を検討中。

論点1) 賠償金の請求書の金額は、、、176万円(税抜き)?、160万円(税抜き?)、176万円(税込み)?

論点2) 連結PL上の計上区分と科目は?

 

結論

上の① → 176万円(税込み) → あくまで外注費として支払い、それは課税取引として仕入税額控除できると考えます。

上の② → 外注費a/c。なお当グループの連結PL上、外注費は製造原価報告書の労務費又は外注加工費であろうから、PLでは売上原価の内数として計上されると考えます。

 

理由

まず、この取引をどう捉えるかが問題となる。

この点に関し、まず、この取引を「T社がA社へ、賠償金176万円を支払う」と擬制することが考えられる。

これによれば、消費税上は不課税扱いになり、仕入税額控除も自発的に計上しないのであるから、将来の税務調査時に指摘されるリスクはなくなので、顧問税理士としてはこうしたい(!?)

しかし、T社は、上場会社のグループ会社であるが、このような稟議を社内で保管することは社内的な説明が煩雑になる気がする。

また、このように賠償金と整理してしまうと、T社の親会社の連結PL上、営業外費用の区分に計上せざるを得ない。
損害賠償金は販売費でもないし一般管理費でもないため、例えばこれを雑費a/c等に含めて販管費の区分に計上することには理論的根拠がない。

次に、この取引の実態を、「T社がA社へ外注発注した事実・実態があり、A社から実質的な役務提供等を受けたと解して、外注費相当額を支払う」と考える。

実際、A社では、「T社からの発注に備えて、6月中、人員の工数を確保して待機していた。結果的に何もしていないし納品物もないが、待機していたことを根拠として、請求させてほしい」と主張しているはずである。(以下で造語で「時間引当」という。)

であれば、T社はA社へ「時間引当」という対価に対して支払うにすぎない。

この場合、A社が作成する請求書によるか、T社が作成する支払明細によるかのいずれかが考えられる。
作成のしやすさだけならば、私見では、支払明細の方が作成しやすい気がするが、将来の税務調査時を想定すると外部証拠としてのA社が作成する請求書の方がベターと考える。
★この点に関しては、A社側でも実際には不労所得的なのであるから、上述の「時間引当」をきちんと反映した請求書を自発的に作って欲しいくらい。

これによれば、立派に対価性があるので、消費税法上、課税取引と考えられるので、T社側では仕入税額控除を取れると考える。

また、これによれば外注費と整理するので、通常通りに、製造原価報告書上はの労務外注費a/c又は外注加工費a/cであろうから、PLでは売上原価の内数に計上されることになる。

なお最後に、「実態のない成果物をこしらえて、それを納品したと擬制する」と考えるのもなくはないが、確かに成果物があるのだから消費税上は課税取引になるが、実態がなくやり過ぎな気がするので、採用すべきではないと考えます。

 

補足

なお、仮にj-sox上、外注費の計上を重要な業務プロセスとして認識している場合には、契約書等がないのはそのままで不備に該当することになるため、例外扱いと宣言して上席者の承認済と整理しておくことになるが、、、、今回の事例では、T社は連結上、明らかに重要な拠点「外」のため、重要な業務プロセスを認識することはないため、NA。