当事務所用)外貨建有価証券の取得価額の決定で、約定日の前に支払った場合は?2

問題の所在

以下の事例。なお論点は、よくある「期末時点での評価」でなく、「期中の取得価額の決定」でありより具体的には「取引日がいつか?」である:

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外貨建て金融商品 $1,000,000で購入 ★非上場
支払い日のレート:129.72円
約定日のレート:130.27円
※約定日より前に支払いを実施した。

この場合、以下の①②のいずれが正しいか?

➀ 投資有価証券 / 預金_¥129,720,000

➁ 投資有価証券_¥130,270,000 / 預金_¥129,720,000
/ 為替差益_¥550,000

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結論

理論上は以下:

・取得という行為は、「支払う」と「引き渡しを受ける」に2分され、各々、「支払日」と「引渡日」がある。

・「(自社が)引き渡しを受ける」は「(相手から)譲渡される」と同義である。

・まず法人税法61条の2①で、「有価証券を譲渡した場合には、原則として契約をした日(約定日)の属する事業年度において、譲渡対価の額から譲渡原価の額を減算した金額を益金の額又は損金の額に算入することになる。

・ただし、上の「約定日」は、有価証券の譲渡による損益の計上時期(基本通達2-1-22)で場合分けされており、今回の事例は当該基本通達の(1)の「証券会社等に売却の媒介等を委託している場合」に該当し、「当該委託をした有価証券の売却に関する取引が成立した日」とされている。

・次に、外貨建資産の取得

・法人税上、有価証券の

(外貨建取引の換算)
第六十一条の八 内国法人が外貨建取引(外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れ、剰余金の配当その他の取引をいう。以下この目において同じ。)を行つた場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額(外国通貨で表示された金額を本邦通貨表示の金額に換算した金額をいう。以下この目において同じ。)は、当該外貨建取引を行つた時における外国為替の売買相場により換算した金額とする。
2 内国法人が先物外国為替契約等(外貨建取引によつて取得し、又は発生する資産又は負債の金額の円換算額を確定させる契約として財務省令で定めるものをいう。以下この目において同じ。)により外貨建取引(第六十一条第二項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する短期売買商品等又は第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券の取得及び譲渡を除く。次項において同じ。)によつて取得し、又は発生する資産又は負債の金額の円換算額を確定させた場合において、当該先物外国為替契約等の締結の日においてその旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したときは、当該資産又は負債については、当該円換算額をもつて、前項の規定により換算した金額とする。
3 内国法人が、適格合併等により被合併法人等から外貨建取引によつて取得し、又は発生する資産又は負債の金額の円換算額を確定させるために当該被合併法人等が行つた先物外国為替契約等の移転を受け、かつ、当該適格合併等により当該外貨建取引(当該先物外国為替契約等によりその金額の円換算額を確定させようとする当該資産又は負債の取得又は発生の基因となるものに限る。)を当該内国法人が行うこととなつた場合において、当該被合併法人等が当該先物外国為替契約等につきその締結の日において前項に規定する旨を同項に規定する財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載していたときは、当該適格合併等の日の属する事業年度以後の各事業年度におけるこの条の規定の適用については、当該内国法人が当該資産又は負債の金額の円換算額を確定させるために当該先物外国為替契約等を締結し、かつ、当該記載をしていたものとみなす。
4 前三項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

理由

1.会計基準、法人税等のルールの概要

1)外貨建取引の換算

・外貨建取引全般の換算→外貨建取引日の外国為替の売買相場により円換算(いわゆる引き渡し基準)

・外貨建有価証券の換算→原則は約定日(いわゆる約定日基準)、例外は期中は支払日で流して、期末に「期中に約定日で処理した結果と同じになるように」修正する(いわゆる修正約定日基準)

2)有価証券の譲渡損益

・有価証券の譲渡損益→その譲渡契約をした日(証券業者等に委託している場合には、約定日は「取引が成立した日」

2.問題の所在

通常の実務での時系列では、約定日→支払日の順になる。上の事例のように、支払日→約定日、と逆になるのは稀であり、実際、会計基準等でも明文の規定はない。

3.検討

会計・税務のルール上は、原則(=外貨建取引の換算の原則(=引き渡し日(=支払日)と、例外(=外貨建有価証券についての例外(=約定日))の調整になろう。

・そして約定日基準の趣旨(=操作性の排除)を重視すれば、約定日が妥当であり、

・課税上の弊害がない場合(例 支払日の方が課税所得計算上、損だとしても会社が支払日で処理した場合)には、支払日でも許容される、

と考える。

なお、上の事例のように、支払日→約定日、と逆になるのは違和感がある。株式売買の実務上は、

・証券会社は自己玉で購入している。(その時、A社分、B社分、C社分と合計したり、按分しているわけではない)

・上の質問文では、「支払日」が具体的に何をした日を指しているのかあいまい。証券会社の外務員とのやり取りになるが、外務員が具体的にどのようなことをしたのかをヒアリングする必要がある。

・仮に、会社が、「支払日が約定日の前である場合の会計処理・税務処理の明文の規定がないことを盾に、証券会社には自己玉で購入した日が電信記録等の客観的なエビデンスで残っているから、もし約定日を待つと為替が不利に動くことを想定し、先に支払った」としたら、これは脱税の意図があるであろうから、認められないであろう。

・仮に、会社が、約定日の前に支払ったとしても、後日に送付されてくる取引明細には約定日が記載されるハズであるから、約定日で仕訳することは可能なハズ。

 

補足

特に、上場企業からのご質問は、メールの文章と添付ファイルだけでは、コメントを誤るリスクがある。

実際、会社担当者も、メールだけで完結する趣旨ではなく、

・いきなり電話で説明しても、一次元なので相手に伝わりにくいリスクがあるので、それを低減するため、最初にイメージ作りのメールを送信し、後で会話でフォローしたい希望があることが大半である。