いわゆる負担付贈与の実務論点① 土地の評価方法は?
問題の所在
以下の事例を検討する:
・夫と妻と娘2名。夫と妻が世田谷区内にアパート物件(貸家建付地、土地と建物)を共有で保有していた。
・当初の建設資金は金融機関から各々の名義で借り入れている
・妻が逝去し、遺産分割の結果、長女が当該貸家建付地と借入金をセットで相続することになった(★父は自宅を相続)が、そのままだと当該貸家建付地は娘と父と共有になるため、相続後に父の共有持分を長女に無償譲渡(注1)することにした。
この場合、単純に、贈与税での評価計算=相続税での評価計算、とやるとまちがい。また盲点と併せて、備忘メモ。
結論
以下のように、アパート物件(土地と建物)を残債(借入金)とセットで贈与する場合の計算上の留意点として、後述の解説記事などでは、3つ挙げられている:
- 負担付贈与の場合では、取引金額といっているので、土地も同様であり、(路線価ベースで算出した)相続税の確定申告時に算出した相続税評価額そのままでは不適当で、それを1.25倍(又は0.8で割り)、公示価格に引き直して算出する必要がある
- 債務には、住人の敷金、保証金もカウントする
- 贈与をした側の者も、債務分は所得税の収入にカウントされる
なお、事例としての取引価額の情報を収集しようとすると、不動産屋さんに照会したり、不動産鑑定士に評価依頼をすることになり、時間とコストがかかる。
したがって、よく言われる「路線価を1.25倍したものが公示価格(=時価)」であることの蓋然性があると、一層安心であるところ、なんと、国税庁hpの毎年の路線価の公表記事の中に、毎年明記されていた:
令和4年分の路線価等について
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/rosenka/index.htm
(以下、一部抜粋)
2 路線価等は、1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めています。
理由
いわゆる負担付贈与の論点である。
参考記事は以下:
1)(ひとまず相続税評価額でOKとしている)
負担付贈与の課税価格
https://chester-tax.jp/dictionary/category02_03/dic10_169.html
(以下に一部抜粋):
負担付贈与の注意点
負担付贈与については、以下の点に注意しなければいけません。
1.贈与した財産が土地や建物などの場合、価格は「時価」で計算される
例えば不動産を相続した場合の評価額は一般的に「路線価」になります。そのため、このときの評価額は時価の7割から8割程度になっているのです。しかし負担付贈与では、あくまでも時価で計算することになっていますので、贈与税の負担が思ったよりも大きくなる可能性があります。
土地や建物などではない財産だった場合は、相続税評価額と同等として計算されることになっています(ただし、相続税評価額の原則が「時価」ですので、ひとまずは「時価」と考えても良いでしょう)。
2.贈与した負担の金額に対して、贈与者に所得税が課せられる
贈与した側は、負担を贈与することでその分の利益を得たと解釈され、贈与した負担の金額に応じた「みなし譲渡所得税」が課せられます。忘れないようにしなければいけません。
2)(路線価を1.25で割り戻すと明記している!)
負担付贈与とは
https://www.suztax.com/index.php?zouyo49
(以下、一部抜粋)
なお、土地等及び家屋等の負担付贈与の場合の贈与財産価額は、相続税評価額ではなく、通常の取引価額に相当する金額、すなわち「時価」とされています。
土地の相続税評価額は、路線価方式で計算する土地の場合には、路線価評価となりますが、負担付贈与の場合には時価により計算することとなっていますので、この路線価評価額を1.25倍した公示価格水準により贈与税を計算することとなります。
補足
以下の記事は、負担付「贈与」ではなく、負担付「売買」を、その売却価格(値決め)を相続税評価額(=路線価)にしたことの是非の判例の紹介である。
路線価売買は、負担付贈与通達に違反しない!?
https://www.fukashiro-kk.or.jp/zeimu_columns/7510
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