令和3年3月期決算の会社で、給与等の引上げを行った場合等の税額控除(中小企業等の特例)の《上乗せ要件》は該当しないで通常に適用する際に、追加の添付資料は必要か?

問題の所在

いわゆる 旧所得拡大税制、今は給与引上げ税制などといわれるが、税額控除 15%から20%という、企業にとては魅力的な、大盤振る舞いの税額控除税制であるが、税理士にとっては、

  • 節税を励行している会社には、恩恵が相対的に少ない
  • 当初は、計算が複雑怪奇で大変だった
  • 租税特別措置法に基づくもので、要は適用するのは権利なので、後で気が付いても、更生の請求の対象外

という、税理士泣かせの税額控除である。

この個別論点については、国税庁hpの よくある質問(タックスアンサー)に詳細に説明があり、そのページの末尾に中小企業庁のガイドラインへのリンクも貼ってある。
この中小企業庁のガイドラインが良くできているので、これに沿って検討し必要なものを作成すれば足りる(ただし、このガイドライン中には、別表六(二十五)の書き方は解説外である):

No.5927-2 給与等の引上げ及び設備投資等を行った場合等の税額控除(中小企業者等の特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927-2.htm

 

ここで問題となるのが、「6.申告に当たっての注意点」の(2)である。

同(2)の場合(=《上乗せ要件》を満たさない場合)には、上の「ガイドライン」では、特段の追加資料が必要であることは示唆されていない、ということは不要と示唆される。

が、このタックスアンサーの文言の、前段を、そのまま読むと、

に関する明細 並びに、 記載した書類  「~確定申告書等(控除を受ける~を含みます。)に添付する必要があります。」

とも読める。明細を「明細書」、した書類を 追加した資料 と読めば「追加資料が必要」とも解せられる。

(2) この制度の適用を受けるためには、控除の対象となる雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細並びに継続雇用者給与等支給額及び継続雇用者比較給与等支給額を記載した書類確定申告書等(控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、その修正申告書又は更正請求書を含みます。)に添付する必要があります。この場合において、控除される金額の計算の基礎となるその控除した金額は、確定申告書等に添付された書類に記載された雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額が限度とされます。

次の同(3)で《上乗せ要件》を満たす場合には、確定申告書以外に追加資料が必要であり、その概要を述べているが、この点は、上の「ガイドライン」のp9下段にも同様の記述があり、整合している。

これとの対照から、

  • 「(3)が上乗せ要件があるので、追加資料を求めていることとのバランスから考えて、(2)では当該追加資料は求められていない」と楽観的にも考えられる
  • 他方で、多額な税額控除であることに鑑みると、例えば、給与台帳くらい追加で提出してもバチは当たらないきもする。。。。。。

のいずれかか迷ってしまう。

結論

不要。

 

理由

「~確定申告書等(控除を受ける~を含みます。)に添付する必要があります。」は、別表六(二十五)それ自体を指す」とのことでした。

そうすると、

確定申告書等 は、別表六(六)のこと、となるが、、、、、

補足

最初に、この手の「特典論点」に係る、実務上のスタンスを確認すると、

  1. 適用の可否が曖昧、悩むなら、「適用して出す」
  2. 追加資料は、当初申告では漏れていても大丈夫。別表六(二十五)が漏れていたらダメだが、追加資料の法は、後で税務署から「〇〇が不足している」と連絡がきたら、ハイハイと追加提出で問題ない。

に尽きる。

1.→「適用できたのに適用しなかった」ら、えらいことになる。後で、税務署からの問い合わせや税務調査等で、適用不可だったとわかっても、利子税程度の実害で済む。

2.→「追加資料が100%でないと適用が却下になる」わけではない。だから追加資料の要否を、提出の事前にナーバスになる必要がない。