固定資産(車輛、車両、自動車)の取得時の付随費用のうち、取得原価に算入するのがマストなもの(経費処理できないもの)は?(法人税)

1.問題の所在

会計理論上、固定資産(車、車輛)の取得価額は、購入代価に付随費用を加算するのが合理的です。

しかし、この付随費用の扱いについては、税理士の立場上、

・顧問先様の節税を考えると、付随費用を取得原価に含めずにその期の費用で処理することは、少額ではあるが節税になるので、対クライアント的には問題はない(→対税務署的には、問題になり得る)

・取得価額がラウンドの金額になり、わかりやすい。

・付随費用は項目が多いので、取得原価に含めるとなると、その前の関連取引を精査しないといけなくなり、手間がかかる。特に、現金出納帳と預金通帳のデータから仕訳を作成している場合には、前後の取引を見ても、それが付随費用に該当するか否かは判断しにくい。

・特に、仕訳の作成を、エクセル台帳からの自動取込処理でやっている会計事務所(当事務所)であれば、通常、個別に仕訳して費用処理で計上済のものを手修正処理しなければならないため、効率化も阻害されます。

 

以上の事情はありつつも、やはりこの点に関し、国税庁hpの法人税法上の扱いに従う必要がある:

No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5400.htm

(一部抜粋)

購入した減価償却資産の取得価額には、原則として、その資産の購入代価と

  1. その資産を事業の用に供するために直接要した費用が含まれます。
  2. また、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などその資産の購入のために要した費用も含まれます。

では、具体的には、どう処理するのか?

2.結論

固定資産の取得価額に算入することがマストなものは以下の3つです。(これ以外は、租税公課a/c、車両費a/c、保険料a/c 等の損金の科目で処理することが可能です。)

  1. 本体費用
  2. オプション機器の費用(サービスで無償のようは場合を除き)
  3. 納車費用(あれば)

より具体的には、下のブログ記事の一部抜粋:

・納車費用は、「自宅などへ新車を運んでもらう費用」なので購入のために要した費用として取得価額に算入します。

・自動車取得税 検査登録費用 車庫証明費用については、事後的なものなので、取得価額に含めるかどうかは、その会社の判断に委ねられます。(取得価額に含めずに計上した方が、税務上は有利になります。)

・カーナビ等は、車両の取得価額に含めて計上します。

 

3.理由

以下の国税庁のhpの記事で、付随費用を取得価額に算入しないものを限定列挙で許容しています。

法人税サイドからの規定なので、「全部、取得原価に算入しろと言ってる?」と身構えてしまいそうですが、実際には理屈を通していて、特に税金関係は全部外してもOKです。

参考リンク:

No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用

 

なお、納車費用まで触れている、参考ブログ2つ:

https://www.sakai-zeimu.jp/blog/archives/14236

https://ztakani.com/post-2909

 

(2つのうち上のブログ記事の一部抜粋に、筆者が根拠を追記)

・納車費用は、「自宅などへ新車を運んでもらう費用」なので購入のために要した費用として取得価額に算入します。

法人税法施行令
(減価償却資産の取得価額)
第五十四条 減価償却資産の第四十八条から第五十条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)

自動車取得税 検査登録費用 車庫証明費用については、事後的なものなので、取得価額に含めるかどうかは、その会社の判断に委ねられます。(取得価額に含めずに計上した方が、税務上は有利になります。)

法人税法 基本通達
(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)
7-3-3の2 次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。
(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(以下省略)

・カーナビ等は、車両の取得価額に含めて計上します。

耐用年数の適用等に関する取扱通達
(車両に搭載する機器)
2-5-1 車両に常時搭載する機器(例えば、ラジオ、メーター、無線通信機器、クーラー、工具、スペアータイヤ等をいう。)については、車両と一括してその耐用年数を適用する。

 

4.補足

上の税法上の扱いを解説している書籍は以下で、

「(これらは)自動車の取得に関連して支出するものですが、一種の事後的費用と考えられ、必ずしも固定資産の取得原価そのものとは言い切れない面もあります。」

とコメントされています:

出典:Q&A会社税務事例300選―平成25年3月改訂 (日本語) 単行本 – 2013/4/9