当事務所用)士業の個人事業主と法人成りの会社の会計 ①個人の売上は全て個人事業主の会計に計上してOK?その場合も固有費は各々で計上しても可?

問題の所在

通常の事業主は、会社を設立すると、競業避止義務上、個人事業主を廃業する。

しかし士業が会社を作る場合には、事業の核となる資格が個人に帰属するがゆえに、資格に係る売上は個人に紐つけるため個人事業主を廃業できず、個人事業と会社が併存するので、会計も別々にする。

例えば、

基本1)

個人の売上100 → 個人の経費60

の中央に、以下の赤太字の会社の会計が挿入される形になる、つまり、

応用1)

・個人の売上100 → 会社へ一括外注の発注85 → 会社の売上85 → 会社の経費60

となる。

そして、ここから発展型として、緑太字のように、

応用2)経費のうち、JICPA会費や税理士会会費などの個人に帰属する経費(固有費)を、個人の会計の中に維持する、

・個人の売上100 → 会社へ一括外注の発注85+個人の経費20 → 会社の売上85 → 会社の経費40

応用3)さらに売上のうち、税理士ボランティア業務のように個人に帰属する売上を、個人の会計の中に維持する、

・個人の売上100ー会社の売上10 → 会社へ一括外注の発注85+個人の経費20 → 会社の売上85+10 → 会社の経費40

が考えられる。

 

ここで、応用2が是認されると、

・売上データを1つの台帳を作っておき、個人はその100%、対会社への外注費(=会社の売上)はその85%と、計算がカンタンで済む。

★実際、売上データ自体、「横にクライアントを並べ、縦に毎月の売上と対応する毎月の源泉所得税を並べるマトリックス」で、意外と複雑であり、このエクセルシート上で、売上に含める対象を会社と個人で区分するのはキツイ。

なので、当事務所用に、その線引を決めておくと迷わないので、その備忘メモ。

 

結論

以下の通り:

・「 応用2)経費のうち、JICPA会費や税理士会会費などの個人に帰属する経費(固有費)を、個人の会計の中に維持する、・個人の売上100 → 会社へ一括外注の発注85+個人の経費20 → 会社の売上85 → 会社の経費40 」にする。

(要は、応用3)の売上調整はしない。費用調整まで)

・その費用調整は、以下の事業関連費の按分の分:

① 個人の自宅の減価償却費(50%) ★弥生会計AEの固定資産管理から仕訳作成をクリックして済。

② 家計の、電気代、ガス代、水道代(いずれも50%) ★家計簿から3本の年の金額を抜き出すだけ。

③ 税理士、公認会計士の年会費(いずれも100%) ★その金額で記帳しておくだけ。

④ 営業費用として、外部(=会社の従業員が不参加で自分と外部のみが参加)の交際費。★会社でも交際費はあるがそれとは別

 

理由

1)売上調整をしない根拠

・前任税理士から引き継いでいる弁理士のT先生の会計帳簿がちょうど上の応用2)であり、課税当局に受け入れられている(たぶん (^^) )

・いわゆる税理士業では会社の従業員のサポートを受けてやっているので、税理士業での売上を全額個人へ帰属させることに問題ないと解する

・CPA業で、例えば「ボランティア業務である、農水省の入札監視委委員会への参加の報酬」は「それはなんの経費もかからない会計士個人の報酬でしょ?そうならば会社へ外注費で負担させるのは非合理では?」と一見そんな気もするが、その参加の前後に業務の調整の連絡や、事前の準備を事務所等でやっているので、やはり会社の外注分は観念できると解する。

2)費用調整をする項目

・業務委託先(=外注先)の中で業務経費を計上しているので、区分するというよりも、「これはどう見ても個人の経費だなー」というものだけを抽出する。例外管理的発想。

・カウント漏れしないよう、決算伝票の1枚に固めておき、毎年、前年度の仕訳コピーで取り込む。

 

また、射程として、青色申告会のボランティアでchした、某個人士業の事例で、

平成26年

平成27年

以上からわかる知見は、

1)外部委託費の原価率と、青色申告特別控除前の当期利益額

・前者は、80%ジャスト。

・後者は上の事例では、青色申告特別控除前控除前で30万円前後のときもあり (^^)

2)家事関連費の計上金額

会社の帳簿から支出していれば、「個人:会社の比」で按分してもいいし、

個人のポケットから支出していたら、「士業:プライベートの比」で按分してもいいであろう。

3)計上しうる科目と、その場合の士業の内容の推定:

・租税公課a/c(個人の納税のうち事業税の分は満額)

・旅費交通費a/c(なお、税理士会やJICPAの役員の業務で支出する分は、交通費の名目で支給されるので計上は困難では?)

・通信費a/c(仮に、税理士会やJICPAの役員の業務で携帯電話をガンガンしていれば?)

・消耗品費a/c(仕事用(にしか使えない?)のカバン?)

・地代家賃a/c(自宅でも仕事をしていれば)

・諸会費a/c(資格の団体への会費)

・支払手数料a/c、報酬a/c(例えば、弁理士会への報告資料などの雑用を外注で依頼する等)

・会社の業務上は対価性がなくても、個人の寄附、営業費

 

補足

これらが、

① 実態に合わせてやらねばならないのか、

② 簡便化等の理由で、やや都合よく処理してもよいのか、

が問題であるが、、、、、これを突き詰めるとセグメント会計的な議論になり、理屈は原価計算の固有費の定義云々になり、もはや税法の枠を超えるし、そもそも課税当局もそんな理屈も興味もないであろう (^^)。

だから、租税回避行為的でない限り許容される、というのが答えと思う。