1.「決算月」「対象月」「前の事業年度」の関係
持続可給付金のサイトでは、
※月間事業収入が、前年同月比50%以下となる月で任意で選択した月を【対象月】と呼びます。対象月は、2020年1月から12月までの間で、事業者が選択した月とします。
例)
- 3月決算の法人が対象月を2020年2月とした場合、前の事業年度は2018年4月から2019年3月となります。
- 12月決算の法人が対象月を2020年2月とした場合、前の事業年度は2019年1月から2019年12月となります。
と解説されていますが、わかりにくいので、各決算月ごとに(2、3、8,9、10、11、12月)パターン化しました。
決算月に2020年を付けると、やや、わかりやすくなると思います。
2.アパート経営(不動産事業収入)の人は、持続化給付金を、そもそも申請できるのか?
飲食店や旅行業に比べると、アパート経営(不動産事業収入)は新型コロナウィルスによる収入ダウンの影響は、一般的には少ないでしょう。しかし、全く影響がないわけでもありません。
この点に関し、2020年7月1日時点での、持続可給付金給付規程等を見ると、
- 個人事業主は、対象外
- 法人なら、対象
と読めます。
法人でも不動産賃貸業の場合、給付されないと考えてしまいがちですが、持続化給付金給付規程(中小法人等向け)第8条の不給付要件に不動産賃貸業は入っていません。
したがって、その他の申請要件を満たしていれば給付対象となると考えられます。
他方、個人向け持続化給付金の要項の個人事業主編を見ると、「事業所得」に対して給付とされており、つまり「不動産所得」には支給されないものと考えられます
3.建設業で、前期の帳簿上、未成工事受入金の入金を、期中は「売上」で計上していた場合の対応
ご相談内容
建設業の売上計上については、一般的な事業にはない、特殊な事情があります。それは、完成まで(→売上まで)の期間が数か月に及ぶ点です。
「完成したタイミングで請求書を発行します」から、着工後、数か月を経て完成した時に、一度に売上を計上することになります(工事完成基準)(注)
(注)これとは別に「工事進行基準」というもありますが、割愛します。
他方、工事業者は、その工事の間、材料費、人件費、経費を毎月支払わないといけないので、資金繰りが大変です。
発注元としても、工事業者が完成前に倒産なんてことになったら、工事が完成しないので困ります。そこで業界の慣習で、完成前に、工事の代金を分割して受け取っています。
この入金は、工事業者の帳簿上は、前受金=未成工事受入金a/c で処理するのが、正しい会計処理ですし、これで法人税法上も問題ないです。
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ただし、、、、中小企業の建設業者の帳簿では、期中では以上のように会計処理しないことが少なくありません。「入金があっても売上が立たないという原則的な会計処理だと、分かりにくいと感じる」という社長さんが少なくないためです。
そこで、このような会社では、前受金が入金したタイミングで売上を計上してしまいます。「分割して売上を計上する」とも、いえるかもしれません。
このままだと会計の原則的な処理と売上の金額が変わってしまいますから、決算整理で、その原則的な処理に戻し、結果的には、会計的に正しい売上を計上するので、対外的には問題がないのです。通常は。
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今回の持続化給付金の申請要項では、申請の要件(条件)に、「前年同月と比較して売上高が50%減少している」がありますが、上の「分割して売上を計上する」ような会社の、前期の帳簿の売上の金額は、期中の時点では、会計的には正しくない売上が計上されてしまっています。
(「正しくない」の意味は、工事が1件しかない単純な例であれば、売上が先行して計上されている、という意味です)
「前年同月に比して売上が50%以上減少している月」を、申請要項では「対象月」と言っています。
そして、申請要項では、前年同月との「売上」を比較するよう指示しています。これを厳密読むと、「前期も当期も、会計上の売上ベースで比較しないといけない」と読めます。
もし、文字通り「売上」で判定するのであれば、前期の帳簿を、「前受金の入金を、事実通りに、未成工事受入金a/cで計上するような、帳簿を作りかえた方がよいのでしょうか?
以上のような会社が、世の中には相当あると推察されますが、これに関連して、今回の申請要項上は、特別のことは記載されておりません。
結論
結論から申し上げますと、
>前期の帳簿を、「前受金の入金を、事実通りに、未成工事受入金a/cで計上するような、帳簿を作りかえた方がよいのでしょうか?
は不要です。前期に確定し保存している者を、そのまま使用します。
理由
建設業の売上の計上は、以下の3パターンが、実務上は存在することになると思います:
- 「前期発生・当期発生」=前期の期中と当期の期中は、売上をルール通り発生ベースで計上
- 「前期入金・当期入金」=前期の期中と当期の期中は、売上を入金ベースで計上
- 「前期入金・当期発生」=前期の期中と当期の期中は、売上を、前期は入金ベース、当期は発生ベースで計上
今回の持続化給付金の申請で、対象月を確定する際に、
1.であれば、原則通りであり、問題ないでしょう。
2.はダメでしょう。当期分を入金ベースで計上している点が✕です。このことは他の申請資料で判明してしまう可能性があり、売上を恣意的に修正していると指摘された場合、文句は言えません。
3.でも、構わないと思います。
申請に際しては、「前期の法人事業概況説明書」の提出が求められています(出典:申請要項【中小法人等向け】p16)。そこに記載された各月の売上金額が、2.に基づくものか、3.に基づくものかは、この説明書や他の申請物からは判別できません。
「3.を利用して、対象月を算出した場合」に、数字のアヤで、その対象月は 2.よりも早まるかもしれませんし、遅くなるかもしれません。
ただ、それには、操作性/恣意性は介在していません。「前年の帳簿の数字をそのまま使用した」点は同じです。
特にその法人が、「給付金の計算で、100万円を大きく上回っている」ようであれば、一層安心とも考えます。
そのような法人は、どのみち100万円を受給するのであり、であるならば、国としても、早く受け取ってもらうことは、今回の緊急給付金の趣旨から異論がないからです。
したがって、3.の法人は、結果的に対象月が早まっても、それはラッキーで済む、ということです。
特殊なケースでの対応
では、不利になる(遅くなる)場合は、どうしましょう?
1,2か月程度、遅くなる程度でしたら、3.のままがベターと思いますので、申請を若干延期して、その遅くなった対象月で申請しましょう。
問題は、以下の2つを満たすような、著しく不利になるような特殊な場合です:
- 3.のまま売上50%減少を試算したら、数字のアヤで、秋以降まで(又は、最悪、申請期間内で)50%を切らない、
- でも、2.になるように、前年の帳簿を組み替えて50%減少を試算すると、すぐに50%を切る
この場合には、3.のままでしたら、最悪、申請できないことになってしまいます。
私見ですが、このような特殊なケースであれば、相談ダイヤルに電話して、事情を説明(相談)します。
給付金の申請である趣旨からは、「前期の帳簿はそのままに、組替表とその内容を示す証跡を追加で提出する」ことで、申請は許可されると考えます。
<参考:相談ダイヤル>
持続化給付金事業 コールセンター 0120-115-570
[IP電話専用回線] 03-6831-0613
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