0.はじめに

従来、日本国内の法人の給与所得者である方が、1年以上の予定で海外赴任される場合には、引き続き勤務先から給与を受領していても、所得税法上、日本国内に住所を有しない者と推定され、いわゆる非居住者とされます。

以下では、納税管理人の概要を述べた後に、当事務所の標準報酬を記載しております。

1.納税管理人とは

上の非居住者で確定申告が必要となる場合には、納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を、その人の納税地を所轄する税務署長に提出する必要があります。

納税管理人を税理士が受嘱(引き受ける)場合、その業務は端的に述べると、

  • 確定申告をしなければならない場合(後述)、非居住者の確定申告書の作成又は提出
  • 税務署等からの書類等を受け取り、ご本人へ転送
  • 税金の還付金を受け取り、ご本人の希望する方法でお渡し。
  • 税金の立替払いは原則としては行わない。

です。

なお納税管理人は法人でも個人でも構いませんし、弁護士、税理士、公認会計士といった有資格者である必要もなく、一般の人でも可能です。

税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されますが、確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。

2.確定申告をしなければならない場合について

以下の所得がある場合には、そのままですと税額が過少になるため、確定申告を要します。

  1. 国内にある資産の運用又は保有により生じる所得(源泉徴収されない取引)
  2. 国内にある資産の譲渡により生じる所得
  3. 国内にある不動産等の貸付けにより受け取る対価(不動産所得)
  4. 国内における一時所得に該当する所得

3.出国の時までに納税管理人を指定しない場合のデメリット

用語の定義として、

・1月1日から出国する日までの間を、「居住者期間」

・出国した日の翌日からその年12月31日までの間を、「非居住者期間」

とすると、その出国日までに自身の納税管理人を指定したか否かで、確定申告の負担が大きく異なります。

① 出国の時までに納税管理人を指定した場合

その年の「居住者期間」と「非居住者期間」の各々の国内源泉所得すべてを合計して、翌年の2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告及び納税をすればOKです。

② 納税管理人を指定しないで出国する場合

「居住者期間」のエンド、つまり出国日までに、国内源泉所得すべてについて確定申告を完了する必要があります。(準確定申告と言います。

そして、この準確定申告の後に、改めて、上の①と同様の手続(=「居住者期間」と「非居住者期間」の各々の国内源泉所得すべてを合計額して、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告及び納税する)をする必要があります。

4.海外赴任後、毎年分の申告と納期限について

海外赴任となった年の翌年以後は、上でいう「非居住者期間」が、丸々、毎年続きますので、国内源泉所得があり、また通常、税額が発生しているでしょうから、原則として、翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告をする必要があります。

なお、この確定申告の際には、所得控除に制限が加わり、雑損控除、寄附金控除及び基礎控除だけが適用できます。(雑損控除についても、国内にある資産について生じた損失に限られます。)

5.トピックー令和3年度の税制改正

納税管理人について定めた国税通則法のうち、117条が令和3年度の税制改正で見直され、令和4年1月1日以後に適用されます。

その内容は、納税管理人制度が拡充するものであり、以下の通りです:

(1) 納税管理人を定めるべき納税者が納税管理人の届出をしなかった場合

税務当局は、その納税者に対し、60日を超えない範囲内で期限を設けて、納税管理人の届出をすべきことを求めることができます。

(この求めを受けた納税者を「特定納税者」といいます。)

(2) 特定納税者が指定期限までに納税管理人の届出をしない場合

税務当局は、その本人が個人の場合にはその親族、その本人が法人の場合には子会社等、国内に所在する関連者を「特定納税管理人」として指定できます。

① 特定納税者が個人である場合

イ その特定納税者と生計を一にする配偶者その他の親族で成年に達した者

ロ その特定納税者の国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実についてその特定納税者との間 の契約により密接な関係を有する者

ハ 電子情報処理組織を使用して行われる取引その他の取引をその特定納税者が継続的に行う場を提供する事業者

② 特定納税者が法人である場合

イ その特定納税者との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の50%以上を保有する関係その他の特殊の関係のある法人

ロ その特定納税者の役員又はその役員と生計を一にする配偶者その他の親族で成年に達した者

ハ 上記①ロ又はハに掲げる者

(注)

特定納税者及び特定納税管理人に対しては書面により通知が行なわれ、不服申立て又は訴訟を可能とする処置が講じられます。

改正前は、納税管理人の選任と届出についてのみ定められていましたが、届出しない納税者には指定日を設けて届出を求めることができるようになりました。

その指定日までに選任・届出をしない場合には、特定納税管理人(親族や関係法人など)の指定ができることになりました。

6.国税以外の地方税の扱い

個人に課せられる住民税は、毎年その賦課期日(1月1日)現在において、都道府県及び市町村に住所を有する者に対して、前年の所得をもとに課税されます。したがって、海外赴任者は、年の途中で非居住者となる可能性が高く、住民税の支払いが残っている可能性があります。

その場合は1月1日の住所地の市区町村へ「納税管理人申告書」を提出します。

国内にマイホームなどの不動産を保有したまま海外赴任される方も少なくありません。その場合には、毎年の固定資産税の納付が必要です。

1月1日に日本国内に不動産のある市区町村へ「納税管理人申告書」を提出します。

ググると、各市町村のホームページなどでフォーマットが用意されているが多数ヒットします。地方税の納税管理人の申告についてはそれらを参考にしてください。

参考:川崎市の場合

納税管理人申告書

https://www.city.kawasaki.jp/230/page/0000057305.html

 

なお、参考記事は以下:

[全文公開] 地方税における納税管理人

https://www.zeiken.co.jp/zeimutusin/article/no3648/TA00036482601.php

7.当事務所の報酬額の目安

報酬額は、受嘱期間中、顧問料の形で、毎月5,500円です。

月によっては何度も手続をしたりすることがありますが、毎月一定金額です。

なお、別途、不動産所得等の確定申告等の業務は、別途、加算されます。